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第八幕 転生歌姫と母娘の絆

第八幕 16 『人外の戦い』

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「ということで…そちらのお嬢さんを解放してもらいますよ」

「…まあ、彼女についてはが外れたから別にいいですけど」

 いや、良いんかいっ!?
 ありがたいけどさ…


「ちょ、ちょい待ち『調律師』よ。はいそーですかって渡すわけにはいかんでしょ…」

「ん?そうなのですか?私としてはもう興味がないのですが」

「あ~もう…これだから研究者タイプは扱いにくい……と、とにかく!彼女を取り戻したくば僕らを倒すのだな!」

「『奇術師』殿。私は黒神教に無くてはならない人材なので撤退させてもらいます」

「ええ~………それ自分で言う~?いや、その通りなんだけどさ。もっと、こう……盛り上がろうよ!!」

「よく分かりませんが失礼します。ああ、彼女は残していくので…戦闘頑張ってください」

「聞けよ…」

 何だろう?
 緊迫した場面のはずなのに、このゆる~い感じは…
 誰もが唖然としてツッコめずにいる。


「待ちなさい『調律師』。このまま見逃すと思いますか。あなたさえいなければ黒神教は大幅に弱体化するのです」

 そうだよ。
 『異界の魂』を集める役割なんて奴は見逃せないよ。


「いえ、逃げます。全力疾走で」

 な、なんて清々しい。
 いやいやいや…


「ミーティア、『奇術師』殿を支援して、私が逃げる時間を稼ぎなさい。ではごきげんよう」

 そう言って自分は宣言通り逃げの姿勢を…って、速っ!?

 ぴゅーっ!と、脱兎のごとく奥に走っていって、あっという間に見えなくなってしまった…


「あっ!?ま、待ちなさいっ!!」


「おっと、『堕天使』…君の相手はこの僕だよ。それに、如何な君とて僕たち二人を相手にするのは厳しかっただろう?『調律師』が逃げてくれて、むしろ助かったんじゃないかい?」

「…そうかも知れませんが、今度はあなたが不利な状況になりましたよ?」

「いやいや、僕もテキトーに時間稼ぎしたらお暇させてもらうよ。拠点を一つ失うのは勿体ないけど…まあ、問題ないさ。それじゃあ~、ミーティアちゃんもそいつらのお相手をヨロシクぅ!」

「……」

 『奇術師』とやらに指示されたミーティアは無言だが、それで私達を敵と見做したのか戦闘態勢を取った。

「ミーティアっ!!ママだよ!!分からないの!?」

「はははっ!無駄だよ。『調律師』の異能はそう簡単には解けないよ」


「カティア!!落ち着けっ!!先ずはどうにかして無力化するんだっ!!」

「無力化って言ったって…」

「来るぞっ!!」


 まだ心構えも十分に出来ていないところに、ミーティアが双剣を手に襲いかかってきた…!

 くっ…どうしたらいいの!?


 ガインッ!!

「しっかりしろ、カティア!!今はとにかく…どうにかして取り押さえるんだ!!」

「多少怪我をさせるのは覚悟しろ!!今までのミーティアと同じだと思ったら、逆にやられるぞ!!」


 できるのか…?
 私に…?
 たとえ救うためでも、ミーティアを傷つけるなんて…!!







ーーーー シェラ VS 『奇術師』 ーーーー


「さて、僕たちも始めるかい?」

「そうですね。『調律師』に逃げられたのは痛手ですが…せめてあなたはここで倒しておきましょう」

「あれぇ?何だか僕、侮られてる感じ?確かにキミは魔族の中でも屈指の実力者だろうけどさぁ…僕にもプライドってのがあるんだよねぇ……っと!!」

 そう言いながら、『奇術師』が腕を一振りすると…どこからともなく無数のダガーが現れて、猛烈なスピードでシェラに襲い掛かった!!

「先ずは小手調べ…[無限軌道]!」

 シェラは無数に迫りくるダガーを造作もなく躱していく。
 だが、シェラが避けたはずのダガーは、ふっ…とその姿を消し…再びシェラを狙う位置に現れて、勢いを減じることなく襲いかかる。

「…なるほど。短距離転移を延々と繰り返して切れ間なく攻撃する…と言う事ですか」

「その通り。まあ、つまらない小手先の技だけど、なかなか面白いでしょう?」

 『奇術師』はそう言うが、全方位からの止むことのない攻撃は並大抵の事では防ぎ切れるものではないだろう。
 こともなげに回避しているシェラが異常なのだ。

「…[黒牢]」

 シェラが呟くように魔法の引き金を引くと、黒い『穴』…そうとしか表現のしようがないモノが現れた。
 そして、無数に飛来するダガーがその穴に吸い込まれていく。


「流石だねぇ…じゃあ、これはどうかな?」

 指をパチンッと鳴らす。
 すると今度は、シェラを中心としたドーム状にごく小さな金属片のような物がばら撒かれる。
 それは磨きこまれた鏡面のように光を反射する。

「それ![無限包閃華]!」

 『奇術師』が再び指を鳴らすと、色とりどりの光が小金属片に乱反射しながらシェラに襲いかかる!


「[幽幻転生]」

 だが、シェラは刹那の間に新たな魔法を行使して…彼女を襲った光線の攻撃は、まるで幻のようにすり抜けていく。

「神代級の魔法をいともまぁ簡単に…」

「手品はもう終わりですか?…じゃあ私も行きますよ。[滅天火]」

 シェラが魔法を発動すると、青白く輝く巨大な火球が『奇術師』の頭上に現れて、彼を飲み込もうと落ちてくる。

「おっと!!」

 だが、彼は瞬時に短距離転移の魔法でこれを躱す。

「[滅雷]」

 それを読んでいたシェラが、『奇術師』の転移先に向かって、今度は極太のレーザー光線の如き雷撃魔法を放つ。

「なんの![輪転回帰]!」

 『奇術師』もその攻撃は読んでいたようで、転移直後に結界魔法を展開して雷撃を完全に防いだ。


「…なかなか面倒ですね」

「あはははっ!まあ、そう言わずにもう少し付き合ってよ」



 人外の力を持つ二人の戦いはまだ続く。


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