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幕間
幕間13 『テオフィルス、母と再会する』
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ーーーー テオフィルス ーーーー
何年か振りに帰ってきた故郷の地は、出ていった頃と比べて大きな変化は無かった。
ここで暮らしていた時には特に感じるものは無かったが、こうして久しぶりに帰ってくると感慨深いものがある。
きっと、故郷というのはそういう物なのだろう。
旅から旅の暮らしだったカティアにも、そう言う地はあるのだろうか?
ふと、そんな事を思った。
アクサレナでの暮らしにも大分慣れたようだし、そこが彼女にとっての新たな故郷になってくれれば良いな…とも思った。
彼女とこれ程長い間離れるのは、出会ってから初めての事だ。
別れ際の寂しそうな顔を見たとき嬉しいと思ってしまったのは、我ながら節操の無い事だ。
自分だって同じ気持ちだというのに。
故郷の地と同じく数年ぶりに再会した父王や正妃様も変わりなく安心した。
だが、母がその場に居なかったため、何かあったのかと心配したのだが…
予想の斜め上を行く話に、思わず言葉を失った。
親子程にも歳の離れた弟か妹が生まれるかもしれないなんて、想像の埒外だろう。
とにかく、ここに戻った目的の一つである、カティアとの婚約については許可を取り付けた。
色々面倒な調整はあるようだが、先ずは良かったと思う。
今日到着したばかりと言うこともあり、より詳細な話は後日と言うことになった。
自惚れでなければ…カティアは待ちわびてると思うのだが、急いてもしかたがない。
父王達への顔見せも終わったので、母が静養しているという部屋に向かう。
あの母が部屋で大人しくしていると言うのは想像もつかないのだが……流石に身重では大人しくしているしかないか、と思い直した。
部屋について、側付きのメイドに取り次いでもらい中に入る。
「失礼します。テオフィルス戻りました……って、いない?」
部屋に入れてくれたメイド以外に人がいない……彼女は何だか困ったような表情をしている。
すると突然、背後に気配を感じたので、咄嗟に前方へ跳びながら振り向きざま抜剣し身構える。
「腕は鈍っていないようね。関心関心」
そうだった。
この人はこう言う人だった…
「…静養中なんじゃないのか?母さん」
「大袈裟なのよ。ハンネスもラシェルも。安定期に入ってるんだから、むしろ適度な運動は必要よ?」
久しぶりに再会した母は以前の記憶と変わらずに若々しく、俺と並んでも姉にしか見えないかもしれない。
だが、記憶と異なるのはその腹部。
それほど目立たないようだが、確かに大きくなっている。
……やはり、少々複雑な気分だが、おめでたい話には違いない。
「……色々言いたいことはあるけど、とりあえずはおめでとう…かな?」
「ああ、ありがとう。新しい兄弟が生まれるんだから、嬉しいでしょ?」
「…まあ、そうだな。弟妹という感覚になるのかどうかは分からないけど」
どちらかと言うと息子とか娘のような感覚になりそうだぞ。
「この子を可愛がってくれるなら何でもいいよ。……お前自身、実の子供ができるのも、そう遠くない話だろうね」
「それはまだ気が早いだろ。ようやく婚約にこぎつけたばかりだってのに。それに、カティアはまだ『学園』に入学したばかりだから…」
「ははは!そんなの、二人が燃え上がってしまえば関係ないでしょ?」
「……いや。そこは計画的にだな……」
というか、母親相手に何話してるんだ…
まったく…この人らしいと言えば、そうなんだけど。
「で?どんな娘なの?朴念仁が気に入るくらいなんだから、なかなか面白そうだとは思うけど」
面白そうって何だよ。
「まあ、多分、母さんは気にいると思うよ。イスパルの王女とは言え、もともと平民として暮らしてたしな。境遇的に気が合うんじゃないか?」
「そう。会うのが楽しみね」
まあ、カティアならうちの母さんとも上手くやってくれると思う。
義弟か義妹も出来ると聞いたらさぞかし驚くだろうが…小さい子は好きみたいだし、喜んでくれるだろう。
「うちの婚約の同意が取れたら、こっちに挨拶に来てくれるんでしょ?」
「ああ、もうすぐ学園が冬の長期休暇になるから、そのタイミングで…って話をしていたな」
「そうすると、ちょうどこの子が生まれるかどうかってところか…せっかく義娘が来るんだから、会わせてやりたいね…」
「無理はするなよ」
「分かってるよ。でも、生まれたら少し動きたいところね。あんた、冒険者として結構活動してたんでしょ?その、カティアって娘もなかなかのものらしいじゃない。一度、私も連れてきなさい」
「無理するなって言ってるそばから…産後そんなにすぐ動けないだろ」
「大丈夫。そんなにヤワじゃなよ」
確かに、かつてはAランク冒険者として名を馳せた強者だが…
「ブランクが長すぎるだろ」
「そんなことないよ。お前が城から出ていったあと、ちょくちょく活動してたからね!」
「…少しは自重しろよ」
「何言ってるの。私を城に縛り付けるなんて出来やしないって。ハンネスも理解してくれてるわ」
それは諦めてるだけだと思うぞ。
下手に縛り付けたら、また出て行きかねないから。
「て言うか、生まれたばかりの子をほっとけないだろ」
「ふふ…ラシェルが随分この子が生まれてくるのを楽しみにしてるからね。喜んで預かってくれるよ」
…ああ、駄目だなこれは。
もう何を言っても聞かない。
昔からそうだった。
カティアには悪いが、こっちに来たときにはお願いするか…
彼女なら喜んで付き合ってくれそうだが。
何年か振りに帰ってきた故郷の地は、出ていった頃と比べて大きな変化は無かった。
ここで暮らしていた時には特に感じるものは無かったが、こうして久しぶりに帰ってくると感慨深いものがある。
きっと、故郷というのはそういう物なのだろう。
旅から旅の暮らしだったカティアにも、そう言う地はあるのだろうか?
ふと、そんな事を思った。
アクサレナでの暮らしにも大分慣れたようだし、そこが彼女にとっての新たな故郷になってくれれば良いな…とも思った。
彼女とこれ程長い間離れるのは、出会ってから初めての事だ。
別れ際の寂しそうな顔を見たとき嬉しいと思ってしまったのは、我ながら節操の無い事だ。
自分だって同じ気持ちだというのに。
故郷の地と同じく数年ぶりに再会した父王や正妃様も変わりなく安心した。
だが、母がその場に居なかったため、何かあったのかと心配したのだが…
予想の斜め上を行く話に、思わず言葉を失った。
親子程にも歳の離れた弟か妹が生まれるかもしれないなんて、想像の埒外だろう。
とにかく、ここに戻った目的の一つである、カティアとの婚約については許可を取り付けた。
色々面倒な調整はあるようだが、先ずは良かったと思う。
今日到着したばかりと言うこともあり、より詳細な話は後日と言うことになった。
自惚れでなければ…カティアは待ちわびてると思うのだが、急いてもしかたがない。
父王達への顔見せも終わったので、母が静養しているという部屋に向かう。
あの母が部屋で大人しくしていると言うのは想像もつかないのだが……流石に身重では大人しくしているしかないか、と思い直した。
部屋について、側付きのメイドに取り次いでもらい中に入る。
「失礼します。テオフィルス戻りました……って、いない?」
部屋に入れてくれたメイド以外に人がいない……彼女は何だか困ったような表情をしている。
すると突然、背後に気配を感じたので、咄嗟に前方へ跳びながら振り向きざま抜剣し身構える。
「腕は鈍っていないようね。関心関心」
そうだった。
この人はこう言う人だった…
「…静養中なんじゃないのか?母さん」
「大袈裟なのよ。ハンネスもラシェルも。安定期に入ってるんだから、むしろ適度な運動は必要よ?」
久しぶりに再会した母は以前の記憶と変わらずに若々しく、俺と並んでも姉にしか見えないかもしれない。
だが、記憶と異なるのはその腹部。
それほど目立たないようだが、確かに大きくなっている。
……やはり、少々複雑な気分だが、おめでたい話には違いない。
「……色々言いたいことはあるけど、とりあえずはおめでとう…かな?」
「ああ、ありがとう。新しい兄弟が生まれるんだから、嬉しいでしょ?」
「…まあ、そうだな。弟妹という感覚になるのかどうかは分からないけど」
どちらかと言うと息子とか娘のような感覚になりそうだぞ。
「この子を可愛がってくれるなら何でもいいよ。……お前自身、実の子供ができるのも、そう遠くない話だろうね」
「それはまだ気が早いだろ。ようやく婚約にこぎつけたばかりだってのに。それに、カティアはまだ『学園』に入学したばかりだから…」
「ははは!そんなの、二人が燃え上がってしまえば関係ないでしょ?」
「……いや。そこは計画的にだな……」
というか、母親相手に何話してるんだ…
まったく…この人らしいと言えば、そうなんだけど。
「で?どんな娘なの?朴念仁が気に入るくらいなんだから、なかなか面白そうだとは思うけど」
面白そうって何だよ。
「まあ、多分、母さんは気にいると思うよ。イスパルの王女とは言え、もともと平民として暮らしてたしな。境遇的に気が合うんじゃないか?」
「そう。会うのが楽しみね」
まあ、カティアならうちの母さんとも上手くやってくれると思う。
義弟か義妹も出来ると聞いたらさぞかし驚くだろうが…小さい子は好きみたいだし、喜んでくれるだろう。
「うちの婚約の同意が取れたら、こっちに挨拶に来てくれるんでしょ?」
「ああ、もうすぐ学園が冬の長期休暇になるから、そのタイミングで…って話をしていたな」
「そうすると、ちょうどこの子が生まれるかどうかってところか…せっかく義娘が来るんだから、会わせてやりたいね…」
「無理はするなよ」
「分かってるよ。でも、生まれたら少し動きたいところね。あんた、冒険者として結構活動してたんでしょ?その、カティアって娘もなかなかのものらしいじゃない。一度、私も連れてきなさい」
「無理するなって言ってるそばから…産後そんなにすぐ動けないだろ」
「大丈夫。そんなにヤワじゃなよ」
確かに、かつてはAランク冒険者として名を馳せた強者だが…
「ブランクが長すぎるだろ」
「そんなことないよ。お前が城から出ていったあと、ちょくちょく活動してたからね!」
「…少しは自重しろよ」
「何言ってるの。私を城に縛り付けるなんて出来やしないって。ハンネスも理解してくれてるわ」
それは諦めてるだけだと思うぞ。
下手に縛り付けたら、また出て行きかねないから。
「て言うか、生まれたばかりの子をほっとけないだろ」
「ふふ…ラシェルが随分この子が生まれてくるのを楽しみにしてるからね。喜んで預かってくれるよ」
…ああ、駄目だなこれは。
もう何を言っても聞かない。
昔からそうだった。
カティアには悪いが、こっちに来たときにはお願いするか…
彼女なら喜んで付き合ってくれそうだが。
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