【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
277 / 683
幕間

幕間12 『レーヴェラントの人々』

しおりを挟む
 時は遡り、カイトがカティアと一時離れ故郷のレーヴェラントに向った頃。


 およそ数年ぶりに帰城したカイト…こと、テオフィルスは旅装を解く間もなく父である国王と謁見することに。

 用意されたのは謁見の間ではなく、人払いを済ませた応接室。
 久しぶりに対面するのは父王ハンネスと正妃ラシェル、他は数人の国家重鎮のみ。
 一緒に帰城した兄アルノルトも同席してくれている。



「久しいな、テオフィルスよ。よくぞ戻った。…しばらく見ぬうちに、良い顔つきになったものだ。アルノルトも特使の務め、ご苦労だったな」

「ご無沙汰しております、父上。長らくの不在、誠に申し訳ありません」

「よいよい。事情が事情ゆえ仕方あるまい。ブレーゼン侯爵からラシェルを通じて変わりない事は聞いていたからな、それほど心配はしてなかったが…随分精力的に活動していたみたいではないか。流石はフェレーネの息子よな」

 暗殺者の脅威を逃れるために出奔したと言うのに、伸び伸びと冒険者活動をやっていたことに引け目を感じて少し返答に詰まる。

「あら、その仰りよう…あなただって、奔放に冒険者やっていたではないですか。そうでなければ、彼女を見初めることだってなかったでしょうに」

 ラシェルがそう言うと、ハンネスは気まずそうに目を逸らした。



「……そうだ、母はどうしたのです?不在なのですか?」

 本来であれば、彼の実母であるフェレーネもこの場にいるはずである。

「フェレーネは今自室で静養中よ。後で顔を見せてあげなさい」

「!どこか悪くされてるのですか!?」

「いえ、そうではなくて………あなた、アルノルトから聞いてないの?」

「驚かせようと思いまして」

 しれっとそう答えるアルノルト。
 普段は真面目で物腰の柔らかい感じだが、案外良い性格をしているようだ。

 どうやら深刻な様子ではないのでホッとするテオフィルスだったが、では一体何があると言うのだろうか…と、かえって気になる様子。

「喜べ、テオ。お前に弟か妹が出来るぞ」

「……………はい?」

 アルノルトから言われた事の意味が分からなかった彼は、思わず間の抜けた声で聞き返してしまう。

 フェレーネがテオフィルスを産んだのは今の彼と同じくらいの年頃だったはずなので、まだ出産可能な年齢ではあるのだが…

「いや、前々からもう一人くらい子が欲しいと、フェレーネは言っていたのだがな。長年実現しなかったので、もう殆ど諦めていたのだが。どう言う訳かここに来て…な?」

 歯切れ悪く答えるハンネス王。
 彼自身も老け込むにはまだまだ早いので、それ自体は別におかしくはない。
 ただ、『年甲斐もなく』…と思われるのが少々気恥ずかしいのであった。


「そ、そうですか…それは、おめでとうございます…?」

 思ってもみなかった報告に、やや混乱しながらも祝福の言葉を返す。
 実際、新たな家族が増えるのは喜ばしいことだと彼は思う。

「う、うむ。まぁ、もしこれからそなたらにも子が授かれば、兄弟のような関係になるであろうな…」

 叔父叔母と言うよりは、年齢差的にそちらの方がしっくりくるのかもしれない。

「そう、それですよ。今回テオが帰って来たのは…イスパルの姫と婚約する話を進めるためなのでしょう?」

 事前に報せはしていたので、当然彼らも大筋の話は理解している。
 今回の帰国の大きな目的の一つである。
 他にも色々あるが、ちょうどその流れになったので、その話をすることに。

「はい、イスパル王ユリウス陛下からは既に許可を頂いております」

「うむ。私も特に反対する理由はないな。ただ、王族同士の婚姻ともなれば、各方面の調整は必要だ。まぁ、それも事務的な話だから問題はなかろう。数日のうちには返答出来るだろう」

「あ、ありがとうございます」

 特に反対される事はないだろうとは思ってはいたが、改めてそう言われると、ほっとするのだった。




「良かったわね、テオ。それで、私の義娘になるのはどう言う娘なのかしら?噂は色々聞いてるけど…何だか凄い娘みたいよね」

「(どの噂を聞いてるのかは分からないが、何だかとんでもないイメージになってそうだな…)そうですね…もともとは平民として育ったので、誰にも分け隔てなく接する優しくて気さくな人ですよ。その一方で、最近では王族としての自覚も備わってきて…そのカリスマには皆惹きつけられます」

「正に王族に相応しい娘さんって感じなのかしらね。それに、平民として生きてきた…というのは、あなたの境遇とも似ているし、そういうところが気が合うのかしら?」

「そう…ですね。私には勿体ないくらいですけど」

「またあなたはそうやって…自分を卑下するのは悪い癖よ。何で、あのいつも自信満々なフェレーネの息子がそうなのかしらね…」


 あの母親を見てたから自分は謙虚に生きようと思ったのだが…そう、テオフィルスは思ったのだが、それを口にする事はなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...