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第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉

第十一幕 45 『海神』

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 四方八方から襲いかかってくる敵を、あるいは撃破し、あるいは躱しながら水中回廊を駆け抜けていく。


 そして、数百メートルほど走った先に再び神殿が見えてきた。

 私達は駆けてきた勢いそのままのスピードで、開いていた扉の中に駆け込んでいく!

 私達が中に入ると扉は閉まり始めるが……


「まだ追いかけて来ます!!」

 閉まりかけの扉の隙間から何匹も侵入して来た!


「任せて!」

 襲ってくる方向が特定されるなら……纏めて一網打尽にしてやる!

 私はケイトリンと入れ替わりに殿となって、神殿が見え始めてから詠唱を始めていた魔法を解き放つ!!


「[滅雷]!!」

 極太のレーザー光の如き雷撃が追いかけてきた魔物たちを飲み込む!

 殆どの魔物は雷光の中に消えていく。

 そして、僅かな討ち漏らしも手分けして残らず掃討し……これで、ようやく一息つくことが出来た。













「はぁ……はぁ……戦いながらの全力疾走は、流石に疲れたよ」

「ふぅ……ですわね。ところで、また神殿…ですか?」

「少し趣きが異るな……」

 確かに、最初の神殿は延々と細長い通路を進むだけだったのだが……今度は広々とした空間に柱が立ち並ぶ、まさしく神殿と言った様相だ。
 静謐で、どこか神聖な雰囲気すら漂っているが……

 さらに奥に進んでいくと、まるで円形闘技場のようなすり鉢場の場所に出る。
 その中央では、闘技場で言う舞台の代わりに、とりわけ巨大な柱が天井を支えていた。

 その柱には、その太く長い身体を巻き付けるように、海蛇竜シー・サーペントらしき彫刻が施されている。
 まるで今にも動きだしそうな躍動感がある……










「いやぁ……私、分かっちゃったな」

「オイラも」

「私も」

「わたしも分かったよ!」

「あれがこの階層のボス?」


 そうだろうね。
 あんなあからさまなのが、ただの彫刻な訳が無い。
 近付いたら正体(?)を現して襲いかかってくるだろう。


「さて……折角ボス戦の準備をさせてもらえるみたいだから、目一杯バフかけておきましょ。[絶唱]も」

 歌い続けてないと時間経過で効果が落ちていくのだけど…流石にこの人数じゃ支援だけに徹するのは無理だ。

「……そう言えば、[絶唱]が無くてもカティアさんがパーティーに居ると能力が向上する気がするのですが」

 ルシェーラの言葉に皆頷く。

「ああ、リリア姉さんの加護の力だね。私が味方と認識している人の能力を底上げしてくれるの」

「ああ、そうだったんですのね。助かりますわ」

 あっさり納得。
 もはやその程度では驚かないんだね……





 ともかく、ありったけの支援バフを施して戦闘準備万端にしてから、いよいよ私達は闘技場へと足を踏み入れた。

 すると、見る見るうちに彫刻の海蛇竜シー・サーペントが鮮やかな色を取り戻していく!


 美しい虹色の鱗が光を反射して煌めく。
 その神々しい輝きと、通常の海蛇龍シー・サーペントを遥かに凌駕する巨大な体躯は、大海を統べる海神と呼ぶに相応しき威容だ。

 そして、それに相応しい重々しい声が響いた。


『よくぞここまで来た、勇者たちよ。我に挑むものが現れるとは、随分久方振りの事よ……さぁ、この先に進むに相応しい力があるのか見せてみよ!』

 そんなボス戦の決り文句みたいな口上を言い放つと、こちらが何か問い掛ける暇もなく襲いかかってきた!


 ガパッ!と竜の顎を大きく開き、水流のブレスを私達に向かって放つ!


 ただの水と侮ることなかれ。
 超高圧に圧縮されたその一撃は容易く岩を穿ち、割砕くものだ。

 まともに受ければ即死級の攻撃だが、直線的なので回避はそれほど難しくはなかった。

 だが、今のは開戦を告げる、いわば挨拶代わりの攻撃だろう。



 死闘は今、始まったばかりだ。
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