395 / 683
第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉
第十一幕 51 『秘策』
しおりを挟むーーーー カイト ーーーー
「はっ!!」
キィンッ!!
『せやぁっ!!』
キキンッ!!ギィンッ!!
激しい剣戟の音が鳴り響き、青白い火花が幾度となく散る。
技も、力も、能力も……そして、戦いの経験すらもまるで同じもの同士の戦いは全くの互角。
まるで鏡に映った自分自身と戦っているようなものだ。
だが、決着が付けられないわけではない。
今は丁々発止と息が合っていても、ほんの少しのズレがあれば、それが綻びとなって大きく戦局を変えることになるだろう。
頭の中にプランはある。
いや、それは賭けと言うべきものだ。
相応のリスクを負わなければ、この状況は打破することはできない。
後はいつそれを実行するかだけなのだが……タイミングを伺うだけでなく、決死の覚悟を決める必要がある。
だが、いつまでもこうしていられない。
印を解放していられる時間にも限りがある。
それは相手も同じかもしれないが、だとしてもその先の展開はやはり膠着状態が続くだけだ。
よし……!
俺はついに覚悟を決める。
先ずは相手との距離を引き剥がすべく、切り結んだ瞬間に渾身の力を込めて体当たりをかました後、後方に跳び退った。
『無駄だっ!!』
『俺』は即座に間合いを詰めながら、上段からの振り下ろしの斬撃を放ってきた!!
よしっ!今だ!!
俺はその瞬間、印のもう一つの力を開放する!!
ひときわ輝きを増した印から光の波動が放たれて、それは至近まで迫っていた『俺』にも浴びせられた!
『なっ!?』
もう半ばまで振り下ろされていた剣の軌道が僅かにブレる。
そして、『俺』の身体も一瞬の強張りを見せた。
俺はそこにハッキリと道を見た。
刹那の瞬間に見出した隙を逃さず、俺はもう一つの切り札を切った。
予備動作を極力排し、一息で踏み込む!!
ザンッ!!
そして、『俺』の脇を通り抜けざまに繰り出された流れるような斬撃が胴を薙ぎ払った!!
『がはっ!?』
完全に決まった。
血は噴き出ないが、初めてまともに入った攻撃は致命的なものだったに違いない。
その証拠に、『俺』は膝をついて起き上がってこれない。
ここに、克己の試練は決着を見るのだった。
『ふっ……まさか、あんな手を使ってくるとはな』
あんな手……と言うのは、印の力のことだろう。
俺の印の力は『解放』だ。
そして、以前リヴェティアラ様に教えてもらったことで、自分のみならず他人の力をも解放することが出来るようになった。
レーヴェラントの魔軍襲来の時は、相手と密着しなければ使えなかったその力も、修練を重ねたことで多少は離れた相手にも効果を及ぼす事が出来るようになっている。
まだまだ至近距離ではあるので、更なる精進が必要ではあるが。
俺はあの瞬間、『俺』に対してその力を使ったのだ。
本来であれば味方に使うべきそれを敵に使った理由は……
『例え能力が向上するものであっても、意図しないタイミングで使われれば身体の変化に頭が追いつかない。ましてや攻撃の最中であれば尚更だ。だが、普通はそんなこと考えつかないだろう。下手すれば相手をパワーアップさせてしまうだけの結果に終わるかもしれないのだから』
「そうだな。正に一か八かの掛けではあった。だが、上手くやれる自信はあったさ」
『そうか。我ながら大したものだ』
……こう言うのも、自画自賛になるのだろうか?
『それに、最後の一撃。あれは……』
「ああ、カティアの技だ。見様見真似だったが、中々だったろう?」
『そうだな…』
確か『閃疾歩』だったか。
千載一遇のチャンスを確実にモノにするために、回避が著しく困難なこの技を使わせてもらった。
彼女のように洗練されたものではなかっただろうが……何とか決まってくれた。
『とにかく、この勝負……お前の勝ちだ。見事だったぞ。さぁ、先に進むと良い』
その言葉を最後に、『俺』は光の粒となって消えていった。
そして試練の間の奥、入ってきた扉とは反対側の壁に新たな扉が現れた。
これで、皆と合流できるか?
俺は後ろを振り返ることもなく、扉を開けて先に進むのだった。
10
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる