396 / 670
第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉
第十一幕 52 『前へ』
しおりを挟むーーーー ルシェーラ ーーーー
「はぁーーーーっっ!!!」
『せやあーーーっっ!!!』
ガギィンッ!!!
くっ!
やりますわね!
『私』!
単独でのダンジョン踏破は思いの外順調に進み、ボス部屋に辿り着き……
そこで、まさか自分自身と戦いになるとは思いもよりませんでしたわ。
ですが、これも良い経験。
そう思い、意気込んで戦いに臨んだのですが……
全くの互角の力と技…そして戦い方も同じ相手と言うのがこれ程厄介だとは。
「ふぅ……完全に噛み合うというのは、逆にやり難いですわね」
『ふふ……また一つ経験になったでしょう?』
「ええ。本当に」
『ですが、あなたは『私』をどう乗り越えるのでしょうか?』
……自分と瓜二つの姿で挑発されるのは、中々イラッと来ますわね。
ですが……
「どう乗り越えるか……ですって?そんなの決まってます。真正面から!正々堂々と!打ち破るだけですわ!!」
『……ええ、ええ、そうでしょうとも。それでこそ『私』ですわね。見事乗り越えてみなさい!』
そして再び私達は激突する。
幾度となく繰り返されたそれは、一見してこれまでの攻防の焼き直し。
しかし、何合と打ち合ってるうちに、少しずつ均衡が崩れ始めてきました。
ガィンッ!!
『くっ……!』
『私』の一撃を弾き返し、即座に反撃した私の突きが『私』の頭を掠める。
「はぁっ!!」
ブォンッ!!
更に踏み込んで振るわれた薙ぎ払いは、惜しくもバックステップで躱された。
ですが、致命打は未だ無いものの、勢いは私にあります!
『なぜですの…?『私』はあなたと互角の力を持ってるはずなのに!!』
思った通りですわ。
何だか『私』は驚いてますけど、至極簡単な話です。
「私と互角と言いましても、それは先程までの話でしょう?」
『まさか……この短時間で成長したというのですか!?』
「あら?あなたは『私』だと言うのに、そんな事で驚くのですか?これまでだって、そうしてきたと言うのに」
『……そう、でしたわね。確かに私はいつだって高みを目指してきた。リュシアン様やカティアさんに並び立ちたい一心で』
そう。
私はいつだって、自分の実力に満足したことなどない。
だからこそ常に成長し続けてきたと言う自負があります。
それは、今この時、この場所でも同じことです!
『……私はあなたの影に過ぎない。残念ながら成長することは出来ません。ですが!ただでやられるわけにはいきませんわ!!』
「望むところです!!あなたを倒して、押し通らせてもらいますわ!!」
きっと、これが最後の攻防でしょう。
己の持てるすべての力の全てを出し切って、必ずや勝利をこの手に!!
「はぁーーーっ!!」
『はぁーーーっ!!』
お互いに最後の手札を切る。
烈帛の気合を込めて全身に『氣』を巡らせる!
そして、二人同時に間合いを詰めて、渾身の一撃を振るう!!
「せいぁーーーーーーっっっ!!!」
『てやぁーーーーっっ!!』
『氣』を纏ったハルバード同士が真正面から激突する!!
ガキィッッ!!
『くぅっ!?』
競り勝ったのは私。
『私』のハルバードは大きく弾かれ、くるくると回転しながら飛んでいった。
そして……
ザンッ!!
その勢いのまま、私のハルバードが『私』の胴を薙いだ。
決着は、つきましたわ。
『見事、ですわ。迷いなく前へ前へと進む。それこそが私の力。さぁ、先へお進みなさい』
それを最後に、『私』は光となって消えた。
「……迷い無き前進こそ我が力。そして原点。信じたもののために力を振るえるよう、精進あるのみですわ」
さあ、前へ進みましょう。
今はまだ頼りなくとも。
いつかきっと、あなたの行く先の力となってみせますわ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
323
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる