【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

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第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉

第十一幕 55 『研究者』

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ーーーー リーゼ ーーーー


 後衛職の私には、単独での探索は少々厳しいと思いましたが……幸いにも魔法が有効な相手ばかりだったので何とか凌ぐことができました。

 そして、目の前にはボス部屋と思しき大きな扉。
 少し休憩も取って魔力は十分あります。

 いよいよ覚悟を決めて扉を開けると、そこには……




















「……これは一体どう言う術式なのでしょうか?」

 目の前には、私と全く同じ姿をした人間(?)が立っている。
 この部屋に入ったとき、中央の魔法陣から現れたのです。


『本当に……とても興味深いです。出来ることなら調べてみたいですね』

「ふむ……思考というか、嗜好も同じみたいですね。なら、能力も同じという事ですかね」

 これは試練と言うことですし、そう考えるのが自然かと思います。

『ええ、それはその通りです。姿かたちから思考から能力まで、そっくりそのままコピーしてるのです。……本当に、どう言う術式なのか気になりますね。少しだけ……』

「あ、私にも見せてください」

『ええ、どうぞどうぞ』












ーー少々お待ち下さいーー














『なるほど、ここが魔素を集約して、ここに流すんですね』

「ここで更に増幅させて……こっちは何でしょうか?ギルドにある、ステータスチェックの魔道具に似たようなものが使われていたような……」

『あぁ、確かに。だったら多分……部屋に入ってきた者の情報を読み取るのでは?』

「そうですね、その推測は正しいと思いますね。すると、読み取った情報を元にコピーを構成するのはこの部分でしょうか」

『物凄い記述密度の濃さ……この場で解析するのは無理そうですね』

「どの道、私にはまだ理解できない術式だらけですけどね。……あら?これは……」


















ーーもう少しお待ち下さい……ーー

















 ふむ……殆どは理解できない術式ばかりですけど、何となく全体の構成は見えますね。

 部屋に誰か入ってくる事がトリガ。
 直ぐに侵入者の情報をスキャンし、コピーを生み出すために必要な魔素を集約・増幅。
 コピー生成。
 おそらく、試練として機能させるためにコピーに対する指令の刷り込み。

 こんなところでしょうか。


 それにしても……
 同じ思考を持つ人がいると議論も推論もしやすいですね。
 反対意見が無いと、独りよがりになる危険性もありそうですけど。


『中々に有意義でした』

「私も。メモも取れましたし」

 マッピング用に用意した紙を大分使ってしまいましたが。
 まぁ、あと残り2階層らしいので大丈夫でしょう。
 きっと。


 それにしても……やはりカティアさんについてきたのは正解でしたね。
 この異界とも言えるダンジョンそのものも興味ありますし、こんな面白い魔法陣も見れました。

 以前グレイル先生が言った通りでした。
 感謝しないとですね。




『さて、知的好奇心が満たされたところで……私の本来の役目を果たすことにしましょうか』

「あ、そうでしたね。すっかり忘れてました」


 そして、今更ながらお互いに距離を取って対峙する。

 相手が私自身なら、この距離からの魔法の撃ち合いになる。



 そして、互いに詠唱を開始します。




『……[灼天]!!』

 ぽんっ!


 およそ上級魔法に似つかわしく無いコミカルな音がしました。

 本来であれば猛烈な火炎が襲いかかって来るはずなのですが、現れたのは拳大の炎。
 それもすぐに弾けて消えてしまいました。


 ふむ……そういう影響が生じるのですね。
 心の中のメモに記しておきます。


『な、なぜ……』


 コピーの『私』は、何が起きたのか分からずに呆然としています。

 戦闘中にぼーっとするのは感心しませんね。
 『私』としたことが……それは減点ですよ?


「[地走雷]!!」

 私が準備していた魔法を発動させると、地を這う雷撃が一瞬で『私』に到達し彼女を絡め取った!

 バチバチバチィッッ!!


『きゃあーーーっっ!!』


 雷撃に全身を貫かれ悲鳴を上げる『私』。

 どうやら魔法耐性も著しく減退している様子。
 牽制のつもりだった一撃で、相当なダメージを与えたようです。
 地面に倒れた私は起き上がってこれません。


 勝負はたった一撃で決着がついてしまいました。

















『一体これは……どういうことでしょうか?』

 仰向けで倒れる『私』から、そんな問が発せられます。
 私が何かをしたのだと確信している口振り……まぁ実際その通りなんですが。

「あなたと魔法陣の確認をしてる時に……こっそり記述を追加したのですよ。魔術回路を短絡するように。どういう影響が生じるのかは分かりませんでしたけど」


 『私』が熱中してる間に、こっそり銀砂を溶かしたインクで書き足したのです。
 発動中の魔法陣に果たして効果があるのか……結果何が起きるのか?何も起きないのか?それすら分かりませんでしたけど。

 ただ、ここを短絡すれば弱体化出来るかも……と言う部分を狙ってはいました。
 結果は見事正解だったようです。

 もし、書き換え防護の術式でも施されていたら、こうは行きませんでしたね。


『はぁ……我ながら大胆なことをしますね……学究の徒にあるまじき行為だと思うのですが』

「それ以前に、生きてここを切り抜けなければなりませんから」

 生き延びなければ研究どころではありませんからね。

 それに、あの人に……



『なるほど。自分自身の意外性を垣間見た思いです。……知恵も策もまた力。見事に試練を突破したと言えましょう。さぁ、先に進んでください』

「ええ。……一緒に議論できて楽しかったですよ」

 私のその言葉に、最後に微笑んで『私』は光の中に消えた。



 ……少し時間がかかってしまいましたね。
 早く皆さんと合流しましょう。

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