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第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉
第十一幕 69 『帰還』
しおりを挟む「さて……一通り話は聞けたし、そろそろ地上に帰りましょうか」
ダンキチとの話もこれで一旦終わり。
また何か聞きたいことが出来たら、さっき貰った鍵で直ぐに来れるようになった。
……しかし、地上ではどれくらい時間が経っているのやら。
リュートはここで10日ほど過ごしたが、地上では一日と経って無かった…と言ってたらしいが。
第5階層までにかかった時間と合わせて考えれば……日が変わってるかどうかと言ったところかな?
それでも大騒ぎになってるかも?と思うとちょっと不安が……
「では、帰りはこちらからどうぞ」
そう言ってダンキチが指し示したのは、この部屋の更に奥へと続く扉。
そこに転移装置があるらしい。
そして私達はダンキチに別れの挨拶をして、地上へと帰還することに。
「ありがとうございました。色々なことを教えてくれて……私もこの世界を護るために頑張ります」
「はい、お願いします。では、また……」
奥の小部屋は、私達のパーティーが全員入ると手狭に感じるくらいの広さだ。
部屋の中央には私の背丈と同じくらいの大きさの円筒。
表面には細かな紋様がビッシリと刻まれて、ぼんやりとした緑色の光を放っている。
これが転移装置だ。
私が手を触れると、ブン…と言う音を立てて一瞬だけ光が強くなった。
これで認証されたようだが、どうやら『鍵』は持ってるだけで良いみたいだね。
そして再び手を触れると装置が起動する。
すると、目の前にホログラム……空中に浮かび上がるディスプレイのようなものが現れた。
う~ん……ハイテク!
これを操作して転移したい階層を任意で選択できるらしい。
そして、『ダンジョン入口』と記載されてる箇所に指先で触れる。
すると転移装置の光は一際強く輝いて私達を包み込み、ふわっ…と身体が浮かび上がるような感覚がして……
「ふう……ようやく帰還できたね~」
無事にダンジョン入口のポータルまで転移することができた。
直ぐに外に出てみると……辺りはすっかり暗くなっていた。
「……どうやら深夜の1時~2時ってとこッスかね」
空を見上げて月や星の位置から大体の時間帯を推測したらしい。
「…潜った当日?」
「そこまでは分からないッスけど、ミロンの話からすればそうなんじゃないッスかね?」
まぁ、それは誰かに聞かなければ分からないか……
と、私達の声を聞きつけたらしい監視兵がやって来た。
流石にここに来たときに会った人は交代したらしく、別の人だった。
「……!!カティア様!!ご無事でしたか!!」
私の顔を見るなりそう言ってきた。
あぁ、これは騒ぎになってるかぁ~……
そりゃそうだよな~……
「お勤めご苦労さまです。ご心配をおかけしたみたいで申し訳ありませんが、この通り私達は無事です。……状況を聞かせていただいても?」
「はっ!!元々今回のカティア様のダンジョン探索は、様子見とお聞きしておりましたので夕刻にはご帰還されるものと我々にも通達がなされていました」
うん、その辺りは伝言してから出てきたね。
「ところが…日が落ちたあとしばらく経ってもご帰還されず……内部で何かトラブルがあったものと判断して、数刻前にオズマ殿が王城に報告に向かいました」
「そっか……オズマにも迷惑かけちゃったね……」
「カティア様のせいじゃありませんよ」
「うん、まぁ、不可抗力ではあったけど、それでもね………あっ!報告が上がったと言うことは……」
そう私が言いかけたとき、こちらに向かってくる集団らしき喧騒が聞こえてきた。
こんな時間にここにやってくる集団なんて、思い当たるものは一つしかない。
やがて現れたのは、リュシアンさんを筆頭にした騎士団の面々。
騎士団員の中心には父様や閣下もいる。
さらにその後ろには父さんたちエーデルワイスの一団も。
もしかしなくても私達を捜索するためにやってきたのだろう。
……一足遅かったか。
うう……こんなに大勢が動員されて……
申し訳無さすぎる……!
「カティア!!無事か!!」
直ぐに私を見つけて父様が声をかけてくる。
さて……どう説明しようか……
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