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第十二幕 転生歌姫と謎のプリンセス
第十二幕 1 『起工式』
しおりを挟む広大な駅建設予定地に大勢の人が集まる。
式典の招待客の他、近隣の住民の多くも集まり大変な賑わいを見せていた。
式典会場は柵で仕切られて、警備のため騎士団員がぐるりと囲っているが、中の様子は容易に確認できるだろう。
会場の周囲には商魂たくましく露店なんかも出ていたりして、ちょっとしたお祭り騒ぎとなっている。
「ふぇ~……随分と人が集まったものだねぇ。まだ何も出来てないのに……と言うか、皆鉄道のことは知ってるのかな?」
「どうだろ?でも、イスパルナでは大々的に実験してるし、目撃してる人も多くなってるから……噂はもうかなり広がってるとは聞いたかな」
私の疑問にレティが答える。
確かに、私達が乗車した区間だけでも多くの人の目に触れただろうし、私も街で噂は耳にしたことはあった。
「後は、年明けから大規模な宣伝を行ってるから、その効果もあったのでしょう」
私とレティの会話をリディーさんが補足してくれた。
「宣伝?そんな事してたの?」
「……承認は通っていたと思ったが?」
「だってぇ~……書類多すぎるんだもん。ど~せ問題あるやつはリディーが弾いてるでしょ?」
「はぁ……それはそうだが、最終的に責任取るのはお前だぞ」
「重要なのはちゃんと見てるよ」
右から左へ、鼻歌を歌いながら適当にサインしてるレティの様子が目に浮かんだ。
……リディーさんの苦労が思いやられるね。
「とにかく……このプロジェクトは、もう国家上層部だけでなく、一般の多くの人からも大きな期待がかかっていると言っても良いでしょう」
「責任重大だけど、それこそ望むところだね!絶対成功させるよ!」
レティは萎縮するどころか益々やる気になっているね。
流石だよ。
そして、式典の開始時刻がやってきた。
先ずは鉄道建設プロジェクトの総責任者であるレティの挨拶からだ。
……時間が近づくにつれて緊張していた様子だったけど、割としっかりとした足取りで壇上へと向かっている。
さっきまで、「うぅ……胃が痛いよぉ……」などと弱音を吐いていたが、これからこう言う場面も多くなるだろうし今から慣れておかないとね。
取り敢えず、心の中で『頑張れっ!』と応援しておく。
壇上に立ったレティは、会場を見渡してから一つ息をついて、集音拡声の魔道具を手に挨拶を始めた。
『皆様、本日はお忙しいところ、また寒空の下にもかかわらずお集まりいただきまことにありがとございます』
寒空とは言ってるけど、会場は魔導士たちが結界魔法を駆使して暖を取ってたりする。
ありがたや……
『さて、本日こうしてお集まりいただいたのは……世界初の世紀の大事業!鉄道建設がいよいよ本格的に着工となることを記念し、皆様とこの喜びを分かち合うためでございます!』
ふむ……ノッてきたね。
喋ってるうちに段々と舌も滑らかになった様子。
『構想から約10年以上……ここまで来るのに、国王陛下を始めとして多くの方にご尽力頂きました。先ずはこの場をお借りしてお礼申し上げます』
5歳の頃からずっと頑張ったんだよね。
夢に向かって諦めずに努力して、とうとう実現してしまう……本当に尊敬できると思う。
そしてレティはこれまでの苦難の道のりを、身振り手振りを交えて語りだす。
……本当にノッてきたな。
あの娘、少しオタク気質があるからなぁ……喋りだしたら止まらないところがあるよね。
暫く語っていたが、リディーさんの態とらしい咳払いでハッ、となって一旦落ち着く。
『……これから本格的な工事が始まり、順調に計画が進めば今年の秋頃には皆様を素晴らしい鉄道の旅へ誘う事が出来ましょう!』
そこで大きな拍手が巻き起こった。
建設自体は夏に終わると聞いている。
前世の感覚で言えば相当な突貫工事に聞こえるが……難所の土木工事なんかは結構な時間をかけて既に殆ど終えているらしい。
あのアレシア大河も、画期的な工法が編み出されたとのことで、全線一気に開通する目処が立ったのだとか。
『……以上をもちまして、私の挨拶の言葉とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました!!』
レティの挨拶が終わった。
万雷の拍手の中、彼女はペコリと頭を下げてから壇上を降りていく。
レティはなんと言っても超絶美少女なので観客も大盛りあがりだよ。
さんざん緊張してるとか言ってたけど、凄く立派なスピーチだったと思う。
……若干、脱線していたけど。
鉄道の方は脱線しないようにお願いします。
そして、続いては国王陛下の挨拶だ。
こちらは慣れたもので堂々とした足取りで壇上に上がる。
父様も昔は中々慣れなかったとか言ってたけど……私やレティもあんなふうに威風堂々とした感じになれるのかな?
『皆の者、今日は良く集まってくれた。レティシア嬢も申していた通り、今日は我が国の……いや、世界にとっても偉業となる一大事業の始まりを記念する日となるだろう。彼女は多くの人が力を尽くしてくれたからこそこの日を迎えられたと言った……それはその通りだと思うが、何よりも彼女の才覚があってこそだろう』
うんうん、その通りだね。
熱い想いと努力の賜物だよ。
それに、先ずはそれを成そうと思う者がいなければそもそも始まらなかったのだ。
『まさに時代の寵児、神童の為せる業。鉄道が開通した暁には、彼女の名は永久に歴史に刻まれるであろう!』
爆上げである。
見ればレティは顔を赤くして俯いてる。
恥ずかしがってるね~。
微笑ましくて大変可愛いです!!
『……とまぁ、ここであまり褒めちぎってしまうと、今度は開通式典の時に喋ることが無くなってしまうな。ともかく、今日この日が歴史的な一歩であることには違いあるまい。これから工事や営業に関わるものは忙しい日々が続くだろうが、是非とも頑張っていただきたい。そして、開通の日を迎えたときには、今日以上に盛大に祝おうではないか!!』
わぁーーーーーっっ!!!
父様の演説に呼応して、会場の内外で盛大な歓声が上がる。
そして、人々は口々にレティの名を称え……式典は今日一番の盛り上がりを見せるのであった。
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