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第十二幕 転生歌姫と謎のプリンセス
第十二幕 2 『爆弾』
しおりを挟む起工式は滞りなく終わった。
前世みたいにツルハシを一振り……なんてことは無かったが、神殿関係者が国の守護神であるディザール様や、技巧神であるオーディマ様に祈りを捧げるなどの神事が行われた。
そして式典の後は、会場をそのままに立食パーティーが催される。
貴族邸の庭園でならともかく、こんな風に野外でのパーティーは中々無いと思う。
係の人達が素早く会場のセッティングをして、料理や飲み物が次々と運び込まれ……あっと言う間に準備が整った。
見事な手際の良さだ。
そして、準備が終わったところでパーティーの始まりだ。
先ずは国王陛下の乾杯の挨拶……式典でもスピーチしてるので、手短に行ったあとは自由に歓談となる。
美味しそうな料理の数々に早速目を奪われたミーティアは、テオを連れて行ってしまった。
残された私は父様母様とともに、他の招待客からの挨拶を受ける。
主役のレティも早々に招待客に囲まれていた。
鉄道についてより詳しい話を聞きたい人たち……もいるだろうけど、多くは若い男性(身なりからして貴族の子息っぽい)であった。
中々モテるじゃないの。
「あらあら……リディーさんがやきもきしてますわね」
「あ、ルシェーラ。……そお?いつも通りな感じどけど……」
遠目だけど、レティの横に控えた彼は、いつもと変わらぬ態度で招待客の相手をしているように見えるけど。
「ふふ……まだまだ甘いですわ。よく見れば視線が度々レティシアさんの方に向いてます。ソワソワ落ち着きがない感じですわ」
「……目、いいね」
目の付け所…ではなく、視力的な意味で。
私にはちょっと遠くて視線がどこ向いてるかまでは分からないよ……
「あの様子ですと、まだ告白は出来てないみたいですわね」
「みたいだね」
「あら?何の話かしら?」
私とルシェーラが話をしていると、奥様がやって来た。
娘が楽しそうに話しているのが気になったらしい。
と言うか、たぶん恋バナしてるのを察知してきたのだと思う。
母娘揃って、その手の話は大好きみたいだから……
なお、閣下も後ろにくっついてきたのだが、その手の話に口を出す気はないだろう。
そしてルシェーラが事の経緯を説明すると、奥様はそれはそれは嬉しそうな顔をした。
「あらあらまぁまぁ……レティシアちゃんにもそんな良い人がいたのねぇ……しかも、そんな子供の頃からの付き合いだなんて。もう運命ね!」
めっちゃ嬉しそう。
ブレーゼン家とモーリス家は付き合いも長いみたいだから、レティの事も自分の娘みたいな感じなのかも。
「あら?……ふふ、これはライバル出現じゃない?」
「「え?」」
奥様がそんな事を言うので、改めてレティの方を見てみると……一人の男性と、何だかいい雰囲気で談笑していた。
と言うか、あの人は……
「あれって、もしかしてヨルバルトさん?」
「……ですわね。ご招待されてたのですね」
「ああ、リッフェル領の……つい最近、ご領主になられたのよね」
そう、前領主のマクガイア様が引退され、彼が新領主になったことは聞いていた。
マクガイア様はまだ引退するようなお年ではないのだけど……先の事件のあと、ある程度事後の整理をしてから責任を取った形だ。
事によればより厳しい沙汰が下る可能性もあったのだが、裏で黒神教が手を引いていた事を鑑みて、前領主の引退と一部領地の没収で済んだみたい。
「嬢ちゃんが口添えしてやったんだろ?」
「私は大したことはしてませんよ。諸悪の根源は黒神教だったのは事実ですし、元々リッフェル領は善政を敷いてたって事ですし。でも、領民の命や財産が失われた責任は領主として取らなければいけない……まぁ、情状酌量の余地はあるって事で、落とし所としては妥当なんじゃないですか?」
犠牲となった人が許せるかと言えば、それは難しいのかもしれないけど……
でも、ヨルバルトさんなら、きっと良い領主になれると思うんだ。
と、私達の視線に気がついたのか、当のヨルバルトさんがこちらに向かってくる。
レティはまた別の招待客に捕まったみたいだね。
……リディーさん、頑張ってね。
「皆様、お久し振りです」
「お久し振りです、ヨルバルトさん。領主への就任おめでとうございます」
「ありがとうございます。……カティア様のご尽力のおかげで取り潰しにならずに済みました。本当にありがとうございました」
「いえ、私は事実を証言しただけですよ。それに、取り潰しは避けられましたが、領地までは……」
「とんでもない、家が存続できただけでも僥倖というものです」
まぁ、そうなのだろうけど、没収されたのは温泉リゾートであるフィラーレだと言う話だから、税収面ではかなりの痛手なんじゃなかろうか。
そのフィラーレは、現在は王国直轄となっている。
そして……今後鉄道プロジェクトが成功すれば、レティには爵位が与えられるという話がでており、その領地の候補に挙がってたりする。
「そう言えば、レティとは何の話をしてたんですか?」
「あぁ、鉄道について色々とお話を聞かせていただいてたのです。イスパルナから西への延伸の予定は無いか、とか」
「ほぅ……確かレティのやつぁ、二期線としてブレゼンタムまでは延伸したいとか言ってたな」
ふむ…閣下としては気になる話だよね。
「ええ。ただ、先ずは王都~イスパルナ間が成功しないことには始まらない、と」
「そりゃあそうだろうな」
「リッフェル領としては王都まで鉄道で繋がるのは大歓迎なので、是非とも成功してもらいたいですね」
「まぁそれは大丈夫だろ。ありゃあ凄え発明だからなぁ」
余程のことがない限り、成功間違いなしは私もそう思う。
なんせこれまでの交通事情を一変させるものなのだから。
しかし、どうやらレティとの話はあくまでもビジネスライクだったようだ。
そう、思ったのだが……
「あとはそうですね……婚約、結婚を前提に、お付き合いしませんか、と」
……思わぬ爆弾が落とされたのだった。
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