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第十二幕 転生歌姫と謎のプリンセス
第十二幕 12 『対抗戦第一回戦〜進行中』
しおりを挟む勝利したルシェーラは武舞台の上で大きな歓声に応える。
笑顔で手を降る様子は中々様になっているね。
敗れたドロテア先輩は悔しそうではあるが……全力を出し切ったからであろう、どこか晴れやかな表情にも見えた。
そして、ルシェーラに歩み寄って握手を求める。
「完敗だわ。あなた本当に強いのね。予想はしていたけど……切り札まで切ってもどうにもならなかったのだから」
「いえ、そこまで余裕があったわけではありませんわ。先輩こそ強かったです。正々堂々と……まさに騎士に相応しい戦いぶりと思いましたわ」
「それはあなたも、ね」
お互いの健闘を称え、握手を交わす。
うん、清々しくて良いね~。
と、思ったのだが……
「リュシアン様の婚約者と聞いたから、どんな人だろう……って思ってたんだけど。あなたなら納得よね」
「リュシアン様をご存知なんですか?」
「いえ。面識があるわけじゃなくて……ほら、騎士を目指す女子にとっては憧れの存在だから、ね」
おお……やはりモテモテですな、リュシアンさん。
公爵家の嫡男で、若くして騎士団の実質的なトップ、そして腕も立つとあれば当然だとは思うけど。
婚約者がいても……と思う女の人は多いのかもしれない。
一応、イスパルは一夫一婦制ではあるんだけど、貴族や富裕層なんかは妾を囲ってる人もそれなりにいるからねぇ……
リュシアンさんはそんな事しないと思うけど。
まぁ、そんな背景があるから、ルシェーラはケイトリンに嫉妬してたりするね。
……ていうか、今も『ぷく~っ』てなってる。
ツンツンしたい。
「あ、誤解しないで!私は純粋に騎士として尊敬してるってだけだから……。でも、中には……ね」
「分かりました。一人残らず血の海に沈めて身の程を教えて差し上げますわ!!」
こらこら。
血の海に沈めたらアカンがな。
先輩が青褪めてドン引きしてるよ。
そんなだと、『嫉妬の権化』と呼ばれるようになるよ?
ともかく、これで第一回戦第一試合は終了。
大きな歓声と拍手を浴びながら二人は武舞台を降りるのであった。
続いては、男子の第一回戦第一試合となる。
男女交互に試合を行っていくみたい。
そして、対戦するのは……
「1年2組!!勝つぞーーっ!!それ、ガ・エ・ル!ガ・エ・ル!!」
……そう、ガエル君の登場である。
しかし、メリエルちゃんは……応援団長なのかな?
ちびっ子がハチマキして学ランみたいなのを着て、可愛らしく掛け声を上げてる。
非常に微笑ましい姿に、会場中がほっこりしてる。
本人は非常に真剣なんだけど。
しかし、立派な応援旗まで振り回して、かなり本格的だ。
2組も中々結束力が高いね。
ガエル君の対戦相手は2年生らしいのだが、ドロテア先輩程には実績がある人ではないみたい。
下馬評的にもガエル君勝利の予想との事。
そして試合開始となるのだが……
下馬評通り力の差は歴然としており、あっという間に決着が付いてしまった。
勝ったのはもちろんガエル君だ。
彼もルシェーラ程ではないだろうけど、入学時から比べれば相当力を付けている。
以前の私のアドバイスを意識してか、よく相手の動きを見て考えながら戦っているように見えた。
そして第一回戦の試合は順調に消化され……ヤツの出番がやって来た。
「よっしゃあっ!!やっと俺っちの番だぜ!!ルシェーラちゃんに続くからな!!女子のみんな、応援ヨロシクぅ!!」
女子だけかよ。
「フリード、調子に乗るのは良いけど油断しないでよね。アンタの相手、去年の準優勝者なんだから」
そう。
何の因果か、ルシェーラと同じようにフリードの対戦相手も初っ端から強敵なのである。
全く……二人とも羨ましい限りだね!
「へへっ……もちろん油断はしないけど……勝つのは俺っちだぜ!!」
ふむ……どうやら気合十分な様子。
慢心はダメだけど……言動とは裏腹にコイツは意外と真面目だからね。
その辺の心配はないだろう。
そうは言っても相手は3年生の昨年準優勝者。
ドロテア先輩と同じく、騎士志望のアーキスと言う先輩だ。
苦戦は避けられないだろう。
「……頑張ってね、フリード君。応援してるわ」
「!!ステラさん……。おぉっ!!やる気が漲るぜ!!任せてください!!必ずや勝利をあなたに捧げます!!」
おお……ステラの応援で、更にやる気が溢れてるよ。
瞳に炎すら見えそうだ。
でも、気合が入るのは良いのだけど空回りしないようにね……
応援ありがとうございます!
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