483 / 683
第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り
第十三幕 6 『お見舞いの終わり』
しおりを挟む「すみませんね、何だか暗くなってしまう話をして……」
暗い雰囲気を払拭するように、殊更明るくシェラさんが言う。
少し無理してる気もするけど、彼女の気遣いを無にするわけにもいかないので、私も笑顔で答える。
「いえ、シェラさんの話を聞けて良かったです。でも……こちらこそすみませんでした。まだ目が覚めたばかりなのに……」
あまり無理させちゃ駄目だよね……
だけど、シェラさんは頭を振って言う。
「私も誰かに話を聞いてもらえて、少しスッキリしました。やはり溜め込むのは良くないですね。昔、リディアにも良く言われました」
「そうだよ!何かあったら遠慮なく私達に相談してね!」
「メリエルさんの言うとおりですわ。私達も、シェラさんの事は頼りに思ってますし。ねぇ、皆さん?」
「心強いよね~」
「シェラお姉ちゃん、すごく強いもんね!」
「ふふ……ありがとう」
もう暗い雰囲気はどこかに吹き飛び、皆笑顔を浮かべて暖かな空気がその場を満たす。
そして、その後は……他愛のない話をして、大いに盛り上がる。
ガールズトークに花を咲かせる私達を、シェラさんがまるで姉のように、優しい眼差しで見守るのが印象的だった。
「ご歓談中失礼いたします。カティア様、陛下とテオフィルス様がお見えです」
暫く盛り上がっていると、マリーシャから来客を告げられた。
「父様とテオ?分かった、居間にお通しして」
「畏まりました」
私の部屋に父様が来るのは珍しい。
普段家族が一緒に過ごすのは、家族共用のリビングやダイニングとなる。
クラーナは良く遊びに来るけど。
テオも真面目だから……婚前の女性の部屋に入るのは遠慮してるみたい。
婚約者同士なんだから気にしなくても……と思わなくもない。
今回は父様が一緒だから彼的にはオッケーなんだろう。
多分、シェラさんが目を覚ましたと聞いて様子を見に来たのかな?
テオは最近父様の仕事の補佐みたいなことをやってるので一緒なんだと思う。
「カティア、友人が来てるところすまぬな。丁度公務に空き時間が出来てな。シェラ殿が目を覚まされた、と聞いたので様子を確認しようと思ったのだ」
私の部屋の居間に通された父様とテオ。
やっぱりシェラさんの事だったね。
「それで……彼女はもう大丈夫そうなのか?」
テオが聞いてくる。
彼もシェラさんにはかなりの恩義を感じていたし、ずっと気にしていた。
そして、それは父様も同じ。
「うん。まだ本調子じゃないみたいだけど。調律師の異能に侵食されたのと魔力枯渇が重なって……だって。あと数日もあれば元に戻るって言ってたよ」
「そうか、良かった……」
それを聞いて、二人とも安心して胸を撫で下ろす。
と、そこへエフィが寝室からやって来た。
「ユリウス陛下、お邪魔しております」
「おお、エフィメラ皇女。よく遊びに来てくれた。まさかそなたが学園に来ることになろうとはな。カティアと仲良くしてやってくれ」
「はい。私も学友が出来て嬉しいです」
にこやかに挨拶を交わす二人。
父様には、グラナの皇女であるエフィの事について思うところはないのか…それとなく聞いたんだけど、特に気にしてる風ではなかった。
まぁ、父様は私怨で動くような人ではないし、そもそも先の大戦時はエフィはまだ赤ん坊だ。
「さて……シェラ殿が目を覚ましたのならば……会談の調整を進めるとしようか」
「シェラさんにも話をして了承は得ました」
「うむ。数日で体調は戻る……とは言っていたが、国外の調整もあるからもう少し時間はかかる……決まったら改めて連絡しよう。エフィメラ皇女もそれで宜しいか?」
「はい、私はいつでも大丈夫です。色々とお手数おかけして申し訳ありません」
「いや、長らく欲していた伝手がようやく出来たのだ。こちらこそ頼りにさせてもらいたい。会談の日まではこれまで同様、内々で情報交換させてもらえればと思う」
「はい」
そのあとも、事務的な話を二~三してから父様とテオは部屋を出ていった。
そして、そろそろ日も傾いてきたのでお見舞いの方も終了。
皆を城門まで見送っていくのだった。
10
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる