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第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り
第十三幕 51 『森都防衛戦5』
しおりを挟むーーーー 森都北部の森 ーーーー
森都モリ=ノーイエの北側の森の中、グラナ軍の本陣が設営されていた。
とは言っても……殆どの兵は森都攻略のため進軍しており、この場に残っているのはブレイグ将軍と僅かな手勢のみ。
本来の彼の気性であれば、自ら前線に赴いて指揮をとるところだが……
「将軍……森都は陥とせるでしょうか?」
副官が、思わず…と言った風に質問する。
普段であればそんな事を言う男ではない。
「……陥とせるか?ではなく、そうせねばならん。こちらの戦力には限りがあるが……だからこそ様々な準備をしてきたのだ。多少のイレギュラーくらいでしくじる訳にはいかぬ」
「……はっ!申し訳ありませんでした!」
「うむ……」
ブレイグはそう言ったものの、得体のしれない漠然とした不安を抱えていた。
未だ本陣に留まって慎重に情勢を見ているのも、それが理由だ。
将として、兵の前でそんな事は言えるものではないのだが……彼の副官も同じような感覚を持っているからこそ、先の質問だったのだろう。
『薬師』の助力もあり、迷いの森を何とか抜け出した彼らはついに森都攻略戦を開始した。
当然ウィラー王国軍も厳重な警戒態勢を取っていたが……森林地帯に潜んでいたグラナ軍が一気に攻め込むと、もともと大した防御力を持たない北門は思いの外呆気なく突破される事に。
以後、戦場の中心は森都北街区へと移って今に至る。
今回の作戦では、電撃的に森都を攻略し……その後はグラナのカルヴァード侵攻のための足掛かりとするための占領地とする。
そのため、街の機能は極力破壊しないようにブレイグは兵たちに通達していた。
街を破壊し尽くしてしまえば、自分の首を絞めるだけだから。
(……全く。少数精鋭と言えば聞こえは良いが……異国の地で碌な補給も期待できず、現地調達で凌いで戦わねばならんとは。今のところ戦況が順調なのが救いだが、綱渡りには違いあるまい)
もともとブレイグ将軍は今回の作戦には反対していた。
更に言えば、彼ほどの地位の者がこのような作戦に就くのは異例の事だ。
もちろん、指揮能力という点では申し分ないが……
(体のいい厄介払いなのだろう。あの『薬師』も助言役とか称してるが……監視なのだろうな)
内心でそう嘆き、思わずため息をつきそうになるが、ぐっと堪える。
「……そう言えば、『薬師』殿の姿が見えぬな?」
戦端を開いてから暫くは本陣に居たはずだが、暫く姿を見ていないことに気付く。
(……まぁ、迷いの森を抜けるのには役立ったが、戦闘が始まってしまえばもう関係ないか)
ブレイグはそれきり、『薬師』の事は頭の隅に追いやった。
……いや、正確に言えば。
考えてる暇が無くなったのだ。
その報告がもたらされたのは、森都の北街区が戦場となって暫く経った時の事だった。
「何?押し返されてる……だと?」
「はっ!!それが、驚くべきことに……印持ちの王族が数名、ウィラー軍に加勢し始めたとの事で……」
「何だとっ!?そんな馬鹿な!!いくらなんでも早すぎる!!」
(あの迷いの森は、おそらく何らかの防衛手段だったのだろうから、あの時点で我々を察知したのだろうが……他国に知らせて援軍を要請する時間など無かったはずだ!!)
ブレイグには分からなかったが……今回のグラナ侵攻についてカティア達が即座に察知できたのは、メリエルが印を継承したからだ。
それが無ければ、森都陥落は時間の問題だっただろう。
「如何に強力な力を持とうとも、たった数人で何が出来るものか!!俺も出るぞ!!!」
「はっ!!」
そしてブレイグは自ら前線に向かうことを決断する。
例え気が乗らない作戦だとしても……
祖国と皇帝に忠誠を誓った身として……そして、軍を預かる者として勝利は絶対である。
ここで退くことはあり得ない。
「忌々しき神の眷族どもめ……この俺が蹴散らしてくれるわ!!!」
戦鬼と呼ばれた歴戦の強者が、カティア達の前に立ち塞がろうとしていた……!
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