【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
530 / 683
第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り

第十三幕 53 『森都防衛戦7 戦鬼』

しおりを挟む

 ……どうやら、一筋縄ではいかない相手がやって来たみたいだね。

 激しい戦いが繰り広げられている戦地にあって、ゆっくりとした足取りで現れた人物。
 赤髪黒目で立派な口髭を蓄えた壮年過ぎくらいの男性だ。
 全身鎧に、自身の身の丈ほどはある大剣を携える。
 鍛えられた大柄な身体は見るからに歴戦の叩き上げと言った感じで……その雰囲気から察するに、おそらく敵方の将か、それに近い人物かもしれない。

 彼の登場によって、誰もが……魔物ですらも戦いの手を止めた。

「ブレイグ将軍!!」

 グラナ兵士が声を上げる。
 そこには喜色が見え、かなり信頼されている事が分かった。

 ブレイグ将軍と呼ばれた男は視線を巡らせて、戦場の様子を観察する。


 私が参戦して以降は反転攻勢となった。
 周囲には多くの死傷者が倒れているが、その殆どはグラナ兵や魔物である。


「……なるほど。たかが小娘とは思えぬ力を持っているようだな」

「あなたがグラナの将軍?」

「いかにも。俺はグラナ帝国……この作戦における司令官だ」

 ……ちょっと間があったのは何だろう?


「私はイスパル王国第一王女、カティア=イスパル。古からの盟約により……いえ、大切な友人の祖国を守るため馳せ参じました」

「そうか……やはり貴殿が英雄王ユリウスの娘か」

 おや?
 何か、直接面識があるかのように聞こえるね。


「父様を知ってるの?」

「あぁ……15年前に何度も戦った相手だ。あれ程の武人と出会ったのは、あの時だけだな」

 懐かしそうに笑みすら浮かべて言うブレイグ将軍。

 ……なんだか、ここが戦場だと言うのを忘れてしまいそうになるくらい穏やかな会話だね。


「投降してもらえませんか?兵の殆どはまだ生きています。手当が早ければ助かる者もいるでしょう」

「ふっ……侵略者に対して、随分と甘いことを言いよるわ」

「……我々の敵はグラナ帝国ではなく、黒神教と考えてますから」

 この人は多分、グラナ帝国の中でもかなり地位のある軍人のように思える。
 そんな人が、何でこんなところまで来てるのかは分からないけど……彼が皇帝に近しい立場なら、何とか説得できないだろうか?


「なぜ、そんな風に考える?お前たちから見れば黒神教も我がグラナ帝国の一部だろうに」

 う~ん……
 エフィの事、言っても良いのかな?

 調律師には知られたから、少なくとも黒神教には伝わってると思うのだけど。

 私が迷っていると……


「何れにせよ、引くことも投降することも出来ぬ。それに……お前は勘違いしている」


 ゾクッ!!

 突如としてブレイグ将軍の雰囲気が一変し、私の背筋を冷たいものが伝う。


「俺が、お前たち神の眷族さえ倒してしまえば!!我らの行く手を阻むものはいなくなる!!」

 ブレイグ将軍の身体から紅い闘気が噴き上がる!!

 まさか、あれは……!!?


「うぉーーーっっっ!!![鬼神降臨]!!」


 やっぱり!!
 うちの父さんや父様と同じスキルだ!!


 マズい!
 アレには生半可な力じゃ対抗できない!!

 そう判断した私は、常駐化していたシギルを即座に発動させる!!
 そして、鮮烈な青の光が私の身体を包み込む!

 リヴェラは薙刀形態へ!

 急ぎ臨戦態勢をとったろころで……


 ドンッッ!!

「でりゃあーーーっっ!!!」


 爆発的に加速したブレイグ将軍が襲いかかってきた!!
 全身鎧を纏っているのに、それを全く感じさせない猛烈なスピードだ!!

 大きく両手で振りかぶった大剣が、私を地面ごと叩き斬るとばかりに振り下ろされる!!



 ガァンッッッ!!!


「ぐっ……!!!」


 間一髪で大剣を受け止めるが……重いっっ!!

 まともに力で対抗しようとしても勝負にならないと判断した私は、薙刀の柄を滑らせるように大剣を反らしながら、ブレイグ将軍の死角に回り込む。


「はぁっ!!」


 ガンッ!!


 がら空きとなった脇腹に蹴りを叩き込むが……
 まるで大きな金属の塊を蹴ったかのような感触で、びくともしない!

 私は無理にそのまま攻撃はせず、蹴りの反動で一旦距離を取ることにした。



「あれを受け止めるとは……英雄王の娘と言うのは伊達ではないようだな。面白い!!再びこれほどの武人と相見えるとは……なかなかどうして、今回の任務も、捨てたものではない!!」


 喜色すら浮かべながら、ブレイグ将軍は言う。


 ……いやぁ、ここに来て父さんや父様クラスの相手と戦うのはキツイなぁ。

 でも……そんな場合じゃないのは分かってるけど、多分私も似たような顔をしてるかも。


 彼ほどの強者が認めてくれたんだ。

 武人同士、正々堂々と戦って……そして、勝つよ!!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...