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幕間
幕間28 メリエル
しおりを挟む食事を終えたあと、私の案内で向かったのはエメリナ様の大神殿……に隣接した敷地にある建物。
この場所も神殿の敷地内であり、神殿の施設の一つでもある。
表通りから路地に入ったところに入口があって、多くの人が訪れる神殿とは違って閑静な雰囲気だ。
……以前は迷わずに辿り着くのが困難だったんだけど。
というか、私が森都の案内をするようになるなんて……感慨深くて涙が出そうだよ。
門から中を覗き込むと、前庭の奥に平民の一般家庭よりはかなり大きめの家が建っているのが見えた。
「メリエルちゃん、ここは……?」
観光地……と言う訳でもなさそうな場所に、カティアが戸惑うように聞いてきた。
「ここはね……まぁ、入ってみれば分かるよ!」
そう言って、私は答えを言うのをちょっと勿体ぶってから……勝手知ったるといった感じで門を開けて中に入っていく。
「あ、ちょっとメリエル!……もう、勝手に入って良いのかしら?」
「いいんじゃない?慣れてるみたいだし。知り合いの家なんでしょう。私達も行きましょう」
ステラが困惑して中に入るのを躊躇っていると、エメリナ様が私のあとに続こうと促してくれた。
学園に入学する前は良く来ていた場所で、まだ半年くらいしか経っていないんだけど……何だか凄く久し振りに感じるよ。
記憶にある光景から変わってはいないのは、まぁ当たり前だけど。
庭に誰も居ないという事は……今はお勉強の時間かな?
お邪魔するのもちょっと気が引けたけど、次に何時来れるのか分からないし……と思って、申し訳ないけど大目に見てもらうことにした。
だけど、それでも多少は控え目に扉をノックする。
コンコン……
暫くすると、家の中から足音が聞こえ……カチャ、と鍵を外す音がしてからゆっくりと扉が開く。
「はい、どちら様でしょうか……?」
部屋の中から外を覗き込むように顔を出したのは修道女のような服を着た老齢の女性。
私も良く知ってる顔だ。
もう結構なお年なんだけど、まだまだお元気そうな様子に安心する。
「あ、院長先生!ご無沙汰してます!」
私がそう挨拶をすると、院長先生は何故か怪訝そうな顔をしている。
……あれ?
「え~と……申し訳ありません、どちら様でしたでしょうか??」
ちょっと警戒したように聞いてくる。
…………あ!?そうか!!
今の私はエメリナ様に変装の魔法をかけてもらってるんだっけ!
「ちょっと待ってね、今魔法を解くから」
そう言って事情を察してくれたエメリナ様がさっと手を振る。
すると、皆にかけられていた変装が解かれて行く……多分私も。
「!!メリエル!?」
「あ、良かった。先生、お久し振りです!」
ちゃんと覚えてくれていた事にほっとした。
「戻ってきている事は聞いてたけど、まさかこっちにまで来てくれるとは……」
「もちろん!せっかくウィラーに帰省したんだから、皆にも顔を出さないと」
まぁ、戦いの直後は忙しかったから中々時間が取れなかったけど、落ち着いたら……とは考えていた。
今回せっかく街に遊びに出かけたのだから、ついでに皆を紹介しようと思ったんだ。
エメリナ様もメリア様もカティア、ステラも、それで気を悪くするような人達じゃないし。
「それでメリエル……そちらの皆様方は?」
「今私が森都を皆に案内してるんだけど……こちら生命神エメリナ様、ウィラー初代女王のメリアドール様、イスパルのカティア王女、アダレットのステラ王女……だよ!」
院長先生が皆のことを聞いてきたので一気に紹介する。
私の紹介に合わせて皆もそれぞれ挨拶をする。
……うん。
改めて見ると凄いメンバーだね!
「…………」
あ、院長先生が硬直してる。
そして、ギギィ……と私の方に顔を向けた?
「そんな方達をお連れするのなら!!事前に連絡をしなさいっ!!!」
「あだだだっ!!?先生っ!!痛い!!痛いですっ!!」
両拳で頭を挟まれてグリグリされる!!
ひぃ~っ!?痛いっ!?
これも久し振りだよっ!!
「おお……見事な『ウメボシ』だね」
ウメボシって何っ!?カティアっ!?
っていうか、みんな見てないで私を助けてっ!!?
「皆様、お見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」
「い、いえ……ちょっと驚いたけど。それで、あなたはメリエルの知り合いみたいだけど、ここは……?」
院長先生とエメリナ様の会話が聞こえる。
私はコメカミから煙が出て突っ伏してるところだよ。
「まあ……メリエルからお聞きしてないのですね。追加で……」
「ごめんなさいっ!?」
これ以上は勘弁だよ!!
「……まぁ、これ以上は皆さんにお見苦しいところは見せられませんので止めておきます。それで、こちらの施設ですが……ここは神殿が運営している孤児院なのですよ」
「「「孤児院?」」」
「はい。そして私はここの院長をしておりますマレーヌと申します」
そう。
ここは身寄りをなくした子供たちが暮らす孤児院。
王女である私とは縁が無さそうな場所にも思えるかも知れないけど……もう何年も前から頻繁に訪れている。
私にとって大切な場所なんだ。
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