548 / 670
幕間
幕間29 メリエル(2)
しおりを挟む「わ~!!メリエルお姉ちゃんだ~っ!!」
「帰ってきたの~!?」
「メリエル姉ちゃん!お土産は!?」
「こっちのおねえちゃんたちはだれ~?」
「みんな、いっぺんに言われても分かんないよ~!」
院長先生に招かれて孤児院の中に入れてもらった私たち。
すぐに『誰が来たんだろう?』と顔を出した子供たちに見つかって、大騒ぎになった。
十数人もの子供たちに取り囲まれ、わたし以外の皆は目を白黒させている。
人数は十数人ほどは居るかな?
年齢は4~5歳ほどの幼児から12~3歳程の成年少し前の子まで様々。
「ほらお前たち!お客様がお困りよ!」
収集がつかなくなって院長先生が嗜めるけど、興奮した子供たちは中々言う事を聞かない。
こうなると大変だよね~。
「いいのよいいのよ。可愛いし、元気があっていいわ!」
エメリナ様は何人かのチビっ子に囲まれてるけど、楽しそうに相手をしてくれている。
そして他の皆もそれは同じ。
良かった、みんな小さな子供を相手にするのは好きみたい。
少し落ち着いたところで皆に自己紹介をしてもらうことに。
「私はエメリナと言うのよ」
「かみさまとおなじおなまえ?」
「あら?神の名前を知っているの?」
「うん!しんでんの『みこさま』たちにおしえてもらったの!」
「ちゃんと勉強していてえらいわね~」
「えへへ~……」
得意げに話すチビっ子たちに、エメリナ様も嬉しそうに褒めてあげる。
と、年長の男の子が私に耳打ちしてきた。
(メリエル姉ちゃん、もしかして……あの人、本物の神様?)
(そうだよ。よく分かったね?)
神様と言っても、見た目は人間と変わらないし……名前が同じだからと言って神様本人だと思うのは少し意外だった。
(ほら、この間の戦争のあと神殿の方で大騒ぎしてたからさ……)
あぁ、年長ともなれば神殿のお手伝いとかも偶にしているからね。
そこで話を聞いたんだ。
エメリナ様は最初は神殿の方に招待されてたんだけど、カティアたちと一緒が良いって事で、王城の方にお部屋を用意させてもらったんだ。
神殿には後で顔を出すと仰られていたけど。
(凄え人連れてきたんだなぁ……ひょっとして、他の人達も?)
(まぁ、そうだね。メリア様は、この国の初代女王様だし)
(……は?)
「お姉ちゃんたち、みんなお姫さまなんだ~!すご~い!」
(あ、院長先生が説明したみたい。今聞いた通り、カティアとステラも王女様だよ)
(ちょ……こんなとこに連れてきて良いのかよ?)
それは今更だなぁ……
この子、私がウィラーの王女だって事を忘れてそう。
まあ、何だかんだで子どもたちには受け入れられてるので良いんじゃないかな?
「それで……メリエルは何でここに来るようになったの?」
暫く子どもたちと遊んでくれていたステラが、そんな事を聞いてきた。
他の皆も興味があるみたいで子供の相手をしながら耳を傾けてる。
「あ~、別に大した理由じゃないけど……院長先生ってね、私とお姉ちゃんの魔法の先生なんだよ」
「へえ……そうだったのね」
「先生はね……昔は神殿の巫女頭で、この国随一の魔法の使い手だったんだ」
「巫女頭……ってことは、もしかしてリナ姉さんとは知り合い?」
カティアの疑問に答えたのは、当の先生だ。
子どもの事は私達に任せて別の部屋で仕事をしてたんだけど、ちょうど終わって戻ってきたみたい。
「エメリナ様からは何回か神託を頂きました。もちろん直接お会いするのは今回が初めてですが。まさかこんな日が来ようとは、夢にも思いませんでしたよ」
「そうね。あなたに限らず、地上を去ってからは初めての事だからねぇ……」
改めてそう聞くと凄い話だよね。
今更ながら、ここに神様がいらっしゃるのが不思議に思える。
「私は十五年前の戦争をきっかけに、ここで働くようになったんです。最初にここにいた子供たちは戦争で親を亡くして……何人かはもう成人して働いてますね」
「あ、カティアは一人知ってると思うよ!」
「え?ウィラーの知り合いってそんなにいないけど……誰だろ?」
「ジリオンお兄ちゃん。武神杯で戦ったって聞いたけど」
「ジリオン……?ああ!予選で戦ったあの人か!」
私は試合見られなかったけど、お姉ちゃんがお腹を抱えて笑いながら教えてくれたよ。
3年連続で予選で優勝者に当たるというのがよっぽどツボにはまったみたい……
私達がそんな話をしていると、子供たちがもっと遊ぼうとせがんできた。
「メリエルお姉ちゃん、お庭でかくれんぼしようよ!」
「え?ダメだよ!お姉ちゃん迷子になっていなくなっちゃうよ!」
うぐ……で、でも、もう大丈夫なはずだよ!
「いいよ、やろう!お姉ちゃん、迷子にならなくなったから!」
「「「うそだ~!!」」」
ひどい!?
その後も、皆と一緒に子供たちとたっぷり遊んだ。
かくれんぼ(ちゃんと出来たよ!)したり、鬼ごっこしたり……
こっちが振り回されるくらいに子どもたちは元気いっぱいだったんだけど、流石に体力が尽きて最後はお昼寝タイムとなってお開きに。
まだ遊ぶと言ってぐずっていた子も、カティアが寝かしつけるために子守唄を歌うと直ぐにスヤスヤと寝息をたててしまった。
流石は稀代の歌姫さまだね。
「メリエル、今日は案内をしてくれてありがとうね」
エメリナ様が子供たちの寝顔を優しい笑顔で見つめながら言う。
確かに最初はエメリナ様のお願いからだったけど……
「いえ、エメリナ様。私こそお礼を言わせて欲しいです」
「?」
「今回の戦いで……私が守った人たち。皆が守ってくれた人達。そして、彼らの日々の暮らし。何の変哲もないそれが、どんなに大切なものだったのか……改めて分かりました。皆にもそれを知ってもらえて良かった」
私の言葉に、皆が無言で頷いてくれた。
その優しい眼差しに、何だか気恥ずかしくなってしまったけど……今の言葉は偽らざる本心だよ。
だけど、まだ終わったわけじゃない。
これからもウィラーの……ううん、世界の人達を守るための戦いは寧ろこれからが本番なのかもしれない。
私にはエメリナ様とメリア様から授かった戦うための力がある。
もう守られてるだけの子供じゃないんだ。
今日この日の想いがあれば、私はきっとこれからも戦える。
……そう、思った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
323
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる