【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
553 / 683
第十四幕 転生歌姫と繋がる運命の輪

第十四幕 3 『花妖精』

しおりを挟む

 ウィラー大森林の『聖域』へとやって来た私たち。
 そこは巨大な『王樹』を中心とした楽園のような場所であった。


 私とテオはキョロキョロと周りの景色を見ながら、メリアさんの後についていく。

 向かう先は王樹の根本。
 よく見ると幹に絡みつくように螺旋階段が設けてある。
 それを登った先には……樹の中腹ほどにテラスのような歩廊が幹の周囲にぐるりと巡らされ、大きな扉が付いていた。
 木でできた巨大な塔とか城とか言うべき威容だ。



「どう?凄いでしょう?」

「……はい、驚きました」

「本当に……こんな光景が現実に存在するなんて」

 先程から私とテオは驚いてばかりで殆ど言葉が出て来ない。

 ウィラーの初代女王であるメリアさんは、今も尚この大森林の女王として君臨してるのかもしれない。


 そんなふうに、ひとしきり幻想的で圧倒的な光景に目を奪われていると、向かう先の方から何か・・がワラワラとやって来るのが目に入った。
 そして段々と騒がしい声も聞こえてくる。





『女王さま、お帰り?』

『お帰りだ~!』

『誰かいる?』

『ニンゲン!!』

『ニンゲン?何でここに来れる?』

『お客様だよ!女王様のお客様だ~!!』


 その正体は、カラフルな衣装を身に纏った小人達。
 身長は精々が私の膝くらいまでだろうか。
 小さく愛らしい姿の彼ら彼女らは大騒ぎしながらやって来て、興味津々といった様子で私達を取り囲む。
 大体、三十人くらいはいるかな?


「この子たちは?」

「花妖精の子たちよ。ここで一緒に暮らしてるのよ。可愛いでしょう」

「ええ……とても。お持ち帰りしたい」

『きゃ~!さらわれる~!きゃはは~!』

 しゃがんで、近くにいた女の子を抱き上げながら言うと、ジタバタしながらノリノリでそんな事を言う。
 可愛い。
 花妖精というだけあって、ふんわりと花の香が鼻孔をくすぐった。

 ふと隣を見ると……戸惑うテオによじ登ろうとしている何人かの男の子たち。
 なかなかやんちゃな子たちも居るみたいだ。


「あらあら、随分気に入られたみたいね……っと、来たわね」

 微笑ましそうに花妖精と戯れる私達を見ていたメリアさんが、何かに気がついて後ろを振り向いた。
 そちらの方に目をやると、また誰かがやって来るところだった。



「お帰りなさいませ、メリア様。お客様も、ようこそお越しくださいました」

 そう言って私達に挨拶をしたのは、銀の髪に青い瞳を持つエルフの青年(?)。
 エルフ族のご多分に漏れず、彼も非常に整った容姿をしている。
 見た目は人間にすれば二十代半ばといったところだが、エルフ族の年齢は外見からは判断し難いので実年齢は定かではない。


「彼は時々エルフの集落から来てくれて、私の身の回りの世話をしてくれてるの。名は……」

「お初にお目にかかります。私はエルジュ一族の首長の長男でシェロと申します」

「あ、ご丁寧にどうも。私はカティアと申します。よろしくお願いします」

「テオフィルスです。メリア様には大変お世話になりました」

 そう挨拶を交わす。
 その間も私達は花妖精達に纏わりつかれている。

 ……しかし、それよりも一つ気になることが。


「エルジュ……一族?」

「代々、この王樹を神木と崇め護ることを使命とするエルフの一族です。……なにか気になる事がお有りで?」

「あ、いえ……私の友人の家名も『エルジュ』と言うので。その人もエルフ族なんですけど、何か繋がりがあるのかな……と思いまして」

 シフィルの事だ。
 彼女はここから遠く離れたアダレットの公爵令嬢なんだけど……同じエルフだし、無関係とは思えなかった。


「あぁ……300年ほど前に我が一族を出て行った者たちがおりましたので、おそらくはその関係かもしれません」

「300年前……大戦のとき?」

「はい。大森林に魔の手が及ぶのを防ぐべく、我が一族からも戦士たちが戦いに身を投じたのですが……その中の何名かは大戦の終結後に、そのまま外の世界へと旅立って行ったのです。それでも故郷の地を忘れまいと『エルジュ』を名乗ったのでしょう」

「そう、だったんですね。そんな繋がりが……」

 また一つ、人の縁の繋がりを見た。
 これも運命と言うものの一つなのだろうか。



「さぁ、ここで立ち話も何だから……中に入りましょう。ほらチビちゃんたち、そろそろ二人から降りなさいな」

『は~い!』

『お客さま、ごゆっくり~』

『またね~』

 メリアさんに言われて、私やテオの肩や背中、頭に乗っかっていた子たちが地面に降りる。
 そして、足元に纏わりついていた子たちと一緒になって、一斉にさぁーっと散らばっていった。

 妖精だからなのか全然重たくはなかったのだけど、微かな重みがなくなって少し寂しいと思うのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...