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第十四幕 転生歌姫と繋がる運命の輪

第十四幕 3 『花妖精』

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 ウィラー大森林の『聖域』へとやって来た私たち。
 そこは巨大な『王樹』を中心とした楽園のような場所であった。


 私とテオはキョロキョロと周りの景色を見ながら、メリアさんの後についていく。

 向かう先は王樹の根本。
 よく見ると幹に絡みつくように螺旋階段が設けてある。
 それを登った先には……樹の中腹ほどにテラスのような歩廊が幹の周囲にぐるりと巡らされ、大きな扉が付いていた。
 木でできた巨大な塔とか城とか言うべき威容だ。



「どう?凄いでしょう?」

「……はい、驚きました」

「本当に……こんな光景が現実に存在するなんて」

 先程から私とテオは驚いてばかりで殆ど言葉が出て来ない。

 ウィラーの初代女王であるメリアさんは、今も尚この大森林の女王として君臨してるのかもしれない。


 そんなふうに、ひとしきり幻想的で圧倒的な光景に目を奪われていると、向かう先の方から何か・・がワラワラとやって来るのが目に入った。
 そして段々と騒がしい声も聞こえてくる。





『女王さま、お帰り?』

『お帰りだ~!』

『誰かいる?』

『ニンゲン!!』

『ニンゲン?何でここに来れる?』

『お客様だよ!女王様のお客様だ~!!』


 その正体は、カラフルな衣装を身に纏った小人達。
 身長は精々が私の膝くらいまでだろうか。
 小さく愛らしい姿の彼ら彼女らは大騒ぎしながらやって来て、興味津々といった様子で私達を取り囲む。
 大体、三十人くらいはいるかな?


「この子たちは?」

「花妖精の子たちよ。ここで一緒に暮らしてるのよ。可愛いでしょう」

「ええ……とても。お持ち帰りしたい」

『きゃ~!さらわれる~!きゃはは~!』

 しゃがんで、近くにいた女の子を抱き上げながら言うと、ジタバタしながらノリノリでそんな事を言う。
 可愛い。
 花妖精というだけあって、ふんわりと花の香が鼻孔をくすぐった。

 ふと隣を見ると……戸惑うテオによじ登ろうとしている何人かの男の子たち。
 なかなかやんちゃな子たちも居るみたいだ。


「あらあら、随分気に入られたみたいね……っと、来たわね」

 微笑ましそうに花妖精と戯れる私達を見ていたメリアさんが、何かに気がついて後ろを振り向いた。
 そちらの方に目をやると、また誰かがやって来るところだった。



「お帰りなさいませ、メリア様。お客様も、ようこそお越しくださいました」

 そう言って私達に挨拶をしたのは、銀の髪に青い瞳を持つエルフの青年(?)。
 エルフ族のご多分に漏れず、彼も非常に整った容姿をしている。
 見た目は人間にすれば二十代半ばといったところだが、エルフ族の年齢は外見からは判断し難いので実年齢は定かではない。


「彼は時々エルフの集落から来てくれて、私の身の回りの世話をしてくれてるの。名は……」

「お初にお目にかかります。私はエルジュ一族の首長の長男でシェロと申します」

「あ、ご丁寧にどうも。私はカティアと申します。よろしくお願いします」

「テオフィルスです。メリア様には大変お世話になりました」

 そう挨拶を交わす。
 その間も私達は花妖精達に纏わりつかれている。

 ……しかし、それよりも一つ気になることが。


「エルジュ……一族?」

「代々、この王樹を神木と崇め護ることを使命とするエルフの一族です。……なにか気になる事がお有りで?」

「あ、いえ……私の友人の家名も『エルジュ』と言うので。その人もエルフ族なんですけど、何か繋がりがあるのかな……と思いまして」

 シフィルの事だ。
 彼女はここから遠く離れたアダレットの公爵令嬢なんだけど……同じエルフだし、無関係とは思えなかった。


「あぁ……300年ほど前に我が一族を出て行った者たちがおりましたので、おそらくはその関係かもしれません」

「300年前……大戦のとき?」

「はい。大森林に魔の手が及ぶのを防ぐべく、我が一族からも戦士たちが戦いに身を投じたのですが……その中の何名かは大戦の終結後に、そのまま外の世界へと旅立って行ったのです。それでも故郷の地を忘れまいと『エルジュ』を名乗ったのでしょう」

「そう、だったんですね。そんな繋がりが……」

 また一つ、人の縁の繋がりを見た。
 これも運命と言うものの一つなのだろうか。



「さぁ、ここで立ち話も何だから……中に入りましょう。ほらチビちゃんたち、そろそろ二人から降りなさいな」

『は~い!』

『お客さま、ごゆっくり~』

『またね~』

 メリアさんに言われて、私やテオの肩や背中、頭に乗っかっていた子たちが地面に降りる。
 そして、足元に纏わりついていた子たちと一緒になって、一斉にさぁーっと散らばっていった。

 妖精だからなのか全然重たくはなかったのだけど、微かな重みがなくなって少し寂しいと思うのだった。

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