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第十四幕 転生歌姫と繋がる運命の輪

第十四幕 29 『確認』

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 シェラさんから話を聞いた後、私たちはそれぞれの自室へと戻った。

 なお、シェラさんは既に体調も回復し、今は客室の方で暮らしている。
 彼女は、『いつまでもご厄介になるわけには……』と言って、城下の宿に移ろうとしたのだけど、引き留めた形だ。
 エフィのところでも良かったんだけど、何かと話をすることが多いし、近くに居てもらった方がこちらとしても助かる。

 なので……今私の部屋に居るのは、私とミーティア、ミロンだけだ。
 彼女達には今のうちに確認しておきたいことがある。


「ねえ、ミーティア、ミロン」

「なぁに?ママ」

「何でしょうか?」

「あなた達、[天道律]って知ってる?」


 ウィラー聖域のリュートの話では、『黒き神の神殿』に向かうための『道』を使うための鍵は彼女達にあると言っていた。
 それを確かめたかったのだ。


「うに?」

「いえ、分からないです」

 しかし彼女達は首を傾げる。

 ……あれ?


「え、えっと……実はね……」

 予想と異なる二人の様子に戸惑いながら、私は取りあえず、ウィラーで聞いた話を二人に説明することにした。

























「と言う事なんだけど……本当に分からない?」

「うに~……分からないけど、ちょっと変身してみるの!」

 変身て……

 すると、ミーティアは光に包まれて、大きくなっていく。

 そして……

「じゃん!」

 少女モードのミーティアとなった。


「ん~……[天道律]……うん、分かるよ、お母さん」

「本当!?」

「うん。でも、私一人で使えるような魔法じゃないね。お母さんの話にあった通り、特殊な条件が必要なんだけど……それがアスティカントにあるんだね」

「リュートはそう言ってたね」

「じゃあ、ぶっつけ本番で試してみるしかないね~。あとはミロンちゃんだけど……」

 そう言って視線を上に向ける。
 相変わらず、ミロンはミーティアの頭上に陣取ってるのだ。


「う~ん……リュート様が言うなら、私もアスティカントに行けば何か分かるのかも?」

 小首をかしげて自信なさげに言うミロン。

 まぁ、彼女がアクサレナダンジョンで生み出された後の話だろうから、今はまだ分からないだけだろう。
 きっと、それもアスティカントに行けば何とかなる……はず。


「とにかく、行ってみなければ始まらないか。あとは誰が行くのかを決めないとだね」


 [天道律]でも転移できるのは十人前後らしいから……人選は慎重に決めないと。
 ルシェーラ達は、もう行く気満々だけどね。


「じゃあ、私は元に戻るね~」

 と言ってミーティアは再び光に包まれて、元の姿に戻ってしまった。
 もう自由自在なんだねぇ……

 彼女は必然的に『黒き神の神殿』に向うメンバーとなるだろう。
 心情的には、あまり危険なところには連れて行きたくないけど……今回はそうも言ってられないか。
 そもそも、下手したら私達の中で一番強いかもしれないしねぇ……


「うにゃ?どうしたの、ママ?」

 複雑な気持ちになりながらミーティアを見つめていると、彼女は不思議そうに聞いてきた。


「え~とね、ミーティアのこと頼りにしてるよ、って言おうと思ってたんだ」

「うん!頑張るの!!」


 私の言葉に、彼女は満面の笑みで嬉しそうに答えるのだった。
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