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後日談1 サマーバケーション

サマーバケーション(3)

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 準備体操を終え、さっそく海に入る。

 このビーチは入江になっていて波がとても穏やかで、海水の透明度の高さがより際立っている。
 丘の上から見た時は、かなり遠くの方のある程度の深さがあると思われるところでも砂地の海底まで見通せたほど。
 色とりどりの魚たちが泳いでるのもハッキリと確認できた。


 テオと一緒に腰くらいの深さのところまで進んでから、すい~……と泳ぎ始める。
 顔を海水につけて覗き込むと、ちょっと目がしみるけど……美しい水中の光景が目の前に広がった。


「ぷはぁっ!!……凄いキレイだよ!」

「あぁ……海というのはこんなにも美しいんだな」

「あ、そっか。レーヴェラントには海がないんだっけ」

 テオの出身地であるレーヴェラント王国は内陸の国だから。
 イスパルに来たあともレジャーに行く余裕も無かっただろうしね。


「湖で泳いだことはあるんだけどな。そっちはそっちで素晴らしい場所なんだが」

「へぇ~……湖もいいよね~」

 静かな湖畔でゆっくりするのも悪くないかも。
 でも、仲の良い人と楽しく過ごすことができれば、どんな場所でも良い思い出になるだろうね。

 もちろん、それがこんな素晴らしいリゾート地なら、なお言うこと無し……だ。



 そうやって暫くは泳いだり、水をバシャバシャとかけあって戯れたりして思い思いに楽しむ。

 波が穏やかだから泳ぎやすい。
 太陽の光と、優しく吹き抜ける海風を浴びながらプカプカと漂ってるだけでも気持ちが良い。
 水に潜って可愛らしい魚たちと戯れるのも楽しい。


 暫くしてから一息入れ、遠くの景色を眺めていると……少し沖合に変わった形の岩が見えた。
 真ん中に海水による侵食で出来たと思しき大穴が空いていて、門のような形をしていた。

 以前、王都ダンジョンの深層……大海原の階層で見た岩と似ている。
 あの時は先に進むための重要な目印となっていたんだけど……まさか、ね。


「どうした?」

「ほら、あの岩……ダンジョンで見たやつにそっくりじゃない?」

「……あれか。確かに似てるな」

「でしょ。……ねぇ、テオ。あそこまで競争してみない?」

 ちょっと気になった私はそんな提案をしてみた。
 ただ泳いで行くだけだと面白くないから、競争してみよう……と。


「あそこまでか?そこそこ距離がありそうだが……まあ深くはなさそうだから大丈夫か。よし、勝負しようか」

 彼は慎重派だから少し考える様子を見せたけど、乗ってきてくれた。


「えへへ~……負けないよ!私、泳ぎには自信があるからね!」

 【俺】が修めていた古流武術では、古式泳法の技もあるんだ。
 着衣や鎧を着た状態で泳いだりとかね。
 ……まあ、普通にクロールとかの方が速いんだけど。



「あら、面白そうですわね。私も参戦致しますわ!」

「なになに?勝負?もちろん私もやるわよ!」

 と、話を聞きつけたルシェーラとシフィルも参加を表明した。
 この娘たち、勝負事の話は聞き逃さないよね……


「私はパス。勝負にならないもん」

「「「「同じく」」」」

 レティとメリエルちゃん、アリシアさん、ユーグ、リディーさんは不参加、と。


「ステラさん、見ててください!俺っちはやりますよ!」

「う、うん……頑張ってね」

 フリードはステラにアピールするつもりか。
 ふっ……そう簡単にはやらせないよ?

 っていうかこの二人、なかなか良い感じじゃないか。


「騎士団の訓練では水泳も取り入れてますからね。我々としては負けられないところですよ、二人とも」

「ええ……望むところです!負けないよ、オズマ!」

「こっちこそ」

 リュシアンさん、ケイトリン、オズマの騎士団組は参加。
 騎士団の訓練では、軽鎧を身に着けた状態で泳ぐ訓練があるそうな。
 【俺】の古式泳法と似たようなものか。


 そして。

「私も参加します。……泳ぎは得意です」

 フローラさんがいつものように遠慮がちに、だけどハッキリと言う。
 ここは彼女の地元だから泳ぎが得意というのも納得できるね。
 彼女が自信があるというのは珍しいし、相当な泳力がありそうだよ。


 こうして、私、テオ、ルシェーラ、シフィル、フリード、リュシアンさん、ケイトリン、オズマ、フローラさんの……総勢9名による水泳レースが開催されることに。

 この海岸から岩門までの距離は、目測でおよそ500メートル以上はあるだろうか?
 なかなかの距離だけど、みんな自信はあるみたいだし、遠浅だから心配はないだろう。


 みんな、スタートラインに横並びに並ぶ。


「んじゃ、合図は私がやるよ。みんな、準備はいいかな?」

 レティがスタートの合図を買って出てくれた。
 そして……


「いくよ~!みんな、位置について、よ~い……スタートぉっ!!」


 レティの合図とともに、私達は一斉にスタートした!
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