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後日談3 学園祭狂詩曲〈ラプソディー〉
学園祭開催
しおりを挟む学園祭本番の前日、国立劇場にて。
現在、エーデルワイス歌劇団は休演期間中であるが、別の劇団による公演期間となっている。
エーデルワイス歌劇団が拠点を王都に移して以来、ここは半ば彼らの専用劇場といった雰囲気だったが……あくまでも王国の所有である。
以前は、ハコが立派な割には集客に苦慮していたのだが、昨今の観劇ブームもあってここ最近はエーデルワイス以外の公演でも連日活況を呈していた。
今はちょうど本日の公演が終わったところで、多くの観客たちが笑顔で感想を語り合いながら退場するところ。
そのまま帰宅の途につく者たちと、売店で土産を買おうとする者たちが入り乱れ、エントランスホールは大変な混雑となっていた。
特に人集りが出来ているのは、やはりエーデルワイス歌劇団のグッズショップだ。
人気役者の関連グッズやプログラムなどが所狭しと並べられ、人々はそれらを手に取りながらどれを買おうかと悩んでいる。
その中でも特に人気のある歌姫カティアや看板女優に関するものは特設コーナーとなっていて、その混雑ぶりはかなりのもの。
エーデルワイスの公演日であればそれは更に殺人的なものになるので、今日はまだマシな方ではある。
なお、一番の売れ行きを見せてるのはトレーディングカードだ。
製造・販売はモーリス商会。
1パック10枚で銀貨10枚(カティアの前世換算で約1万円)なので、かなり高額なように感じられるが……カードは写像魔道具の印画プレートなので、原価を考えればむしろ割安なくらいだ。
カードは数十種類以上とコレクション性もあって、高額であってもすぐに売り切れる人気商品となっている。
特にレアリティの高いものは相当な高額で取引されるとか。
……会長が自ら激写したカティアの秘蔵写真、URのそれが金貨10枚(前世換算100万円)で取引されてることを、カティアは知ってるのだろうか?
さて、そんな賑わいを見せる売店の隅の方に何かの小冊子が置かれていた。
「あ……これ、ご自由にどうぞだって。何かのパンフレットかしら……?」
「ああ、これ高等学園の学園祭のよ。確か、明日からじゃなかったかしら。ほら、カティア様が学園にご在籍だから、ここにも置いてるんじゃない?」
「へぇ……」
女性たちが小冊子……アクサレナ高等学園学園祭パンフレットを手にとってから、比較的空いてる場所に移動して中身を確認する。
「ふ~ん……楽しそうだね。明日は予定がないから遊びに行く?」
「そうね……あ!?ねぇ、これ見て!!」
そう言って彼女が指し示したのはパンフレットの最後のページ、見開きいっぱい使っての告知だ。
「アクサレナ学園演劇部・合唱部合同発表企画……?」
「ほら、ここ!!『協力:エーデルワイス歌劇団』だって!」
「あ、本当だ!!それに……キャストの中にカティア様がいらっしゃるわ!」
それを見つけた彼女たちは、最初は『暇だからちょっと遊びに行くか……』程度だったところ、『絶対に見に行かなくては!』と、俄然興味が湧くのだった。
そして、そんな彼女たちの声が伝播したのか、学園祭のパンフレットは瞬く間に無くなってしまう。
こういった光景は国立劇場だけでなく、パンフレットが置かれた商会やレストランなど、王都内の随所で見られるのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
いよいよアクサレナ高等学園の学園祭本番の日がやって来た。
学園生以外は入ることができない学園も、この日は広く一般にも解放され、広大な敷地を持つ学園が常にないほどの賑わいを見せていた。
「会長、今年はもの凄い人出ですね……入場規制も考えないとじゃないですか?」
学園正門で来場者の様子を見ていた生徒会役員の一人が、会長……ルシェーラの兄であるアルフレドに確認する。
「そうだね……ずっとこの調子なら、そうせざるを得ないか。まあ、事前に予想しておいてよかったよ。警備面の不安も、リュシアン様に相談したら騎士団員を派遣して下さったし」
「ですね。やっぱりこれだけ人が来てる原因は……」
「間違いなくカティア様だね。パンフレットで告知するのは最後まで悩んだけど……どのみち噂になるのは避けられなかっただろう」
かなりの苦労が伺える会話だが、彼らの表情はとても嬉しそうだ。
生徒会としては、自分の代の学園祭が盛り上がるのは喜ぶべきことなのだろう。
「お兄様、お疲れ様です」
「アル、お疲れ様。大盛況だね」
そうアルフレドに声をかけてきたのは、妹のルシェーラと先程話に出たリュシアンだ。
「あ、リュシアン様、ようこそお越しくださいました。警備の件はありがとうございました」
「ああ、気にしないで。カティア様がご在籍されてる以上は私たちの仕事だからね。あとは個人的に、私も学園OBとして協力したいという気持ちもある」
アルフレドがお礼を言うと、リュシアンはにこやかにそう応えた。
彼の言う通り、カティアが在籍する学園が一般開放されるとあれば、その警備は王国騎士団としても考えなくてはならない。
なのでアルフレドに先に相談を受けてなければ、リュシアンから調整の話がされていただろう。
「それにしても……ここまでの混雑は記憶にないな……」
「流石はカティアさんと言う事ですわ」
リュシアンが自分が学園生だった時と比較して改めて驚きを示すと、ルシェーラは当然とばかりに言う。
「本当に。ところでルシェーラ、君は自分の仕事は大丈夫なのかい?」
「ええ、今日の私の当番はもう少しあとですわ。ですからその間はリュシアン様をご案内しようかと」
「そうか。ではリュシアン様、ゆっくりと楽しんでいって下さい」
「うん、そうさせてもらうよ。君も大変だろうけど、頑張ってね」
ルシェーラとリュシアンはアルフレドに別れを告げて人混みの中に消えていった。
こうして、学生たちの祭典は大盛況をもってついに始まるのだった。
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