【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
678 / 683
後日談3 学園祭狂詩曲〈ラプソディー〉

モンスター・メイズ

しおりを挟む

「……やり過ぎだよ、メリエルちゃん」

 その光景を前にして、カティアは呆然と呟きを漏らした。
 レティシア、カイト、リディーも驚きのあまり声も出ない様子。

 今、彼らが目にしているのは……鬱蒼と木々が生い茂る森。
 耳を澄ますまでもなく何かの生物の鳴き声が聞こえてくる。


 一体なぜ、彼らがこんな状況に置かれているのかと言えば……少しだけ時は遡る。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 1年2組の教室の前までやって来たカティアたち。
 ここで行われているアトラクション『モンスター・メイズ』であるが、噂が噂を呼んだのかかなりの待ち行列となっている。
 そして、カティアも見覚えのある1年2組の生徒の何人かが、呼び込みと列の整理、注意事項の説明などを行っていた。


「前代未聞!驚天動地!稀代の天才魔導師の本気が生み出した、世紀のアトラクション『モンスター・メイズ』はこちらです!!これは体験しなきゃ損ですよ!」

「最後尾の方の入場までの待ち時間は約3~40分程となってます!通行の妨げにならないよう、壁に沿ってお並びください!」


 教室に2つある扉のうち、後方側が入口で前方側が出口となっているようだ。
 入口から2組の教室の壁に沿ってつづら折りの行列が出来ている。
 プラカードを持った男子生徒が最後尾を案内していたので、カティアたちはそこに並ぶ。
 すると、その男子生徒も隣のクラスのカティアやレティシアの事はよく知ってるので、嬉しそうに声をかけてきた。

「あ、カティアさん、レティシアさん!いらっしゃい!」

「こんにちは。凄い人気だね~」

「おかげさまで!期待してくださいね!」

 一言二言話しただけですぐに別の人がカティアたちの後ろに並ぼうとしたので、案内係の男子生徒との会話はそこまで。

 出口から人が出てくるたびに入場を案内していて、長い行列である割には進みは速いようだ。
 案内係が言っていた通り、およそ30後にはカティアたちが入場する番となった。


「はい、それではご入場ください。中にも案内係がおりますので、よく説明を聞いて下さい。……頑張ってね!」

 入口で案内していた女子生徒も当然知り合いなので、最後は素の口調になって一行を激励してくれた。


「じゃあ入ろうか」

「うん!」

「果たして中はどうなってるのか……」

「神代魔法の御業、楽しみですね」


 そうして一行は、1年2組の教室に足を踏み入れた。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「あ、みなさん!『モンスター・メイズ』にようこそいらっしゃいました」

 カティアたちが教室に入ってすぐ、友人のフローラが声をかけてきた。
 外の案内係たちは普通に制服姿だったが、彼女は冒険者がするような格好をしている。


「フローラさんお疲れ様~。いや、しかし……何か凄いね……」

 カティアはフローラに挨拶を返してから、周囲を見渡して感嘆の声を上げる。

 今カティアたちがいるのは、煉瓦造りの壁に囲まれた場所で、ちょうど元の教室と同じくらいの広さに見えた。
 しかし、本来は窓がある先には細い通路が続いている。
 壁の高さは数メートルほどだが、さらに上を見上げても天井は確認できず、霞んで見えるほどだった。


「空間魔法って聞いてたけど……ここって今どれくらいの広さになってるの?」

「え~と、正確な数値は分かりませんけど……王都の数街区ほどはあるって聞きました」

「え……そんなに?」

「「「……」」」

 フローラの言葉に、思わず絶句する面々。
 そして彼女は説明を続ける。


「この中は大きく分けて3つのエリアに分かれてます。ここは最初の『ダンジョンエリア』ですね。最終エリアにある出口から脱出するか、どこかにいる大ボスを打倒するとクリアとなりますが、制限時間……この部屋を出てから1時間が経過すると強制退場となります」

「1時間……結構シビアなんだな」

 王都の数街区程度の広さとのこと。
 普通の街歩きであれば十分な時間だろうが、迷路探索ともなればカイトの言う通りかなり厳しいかもしれない。


「迷路自体はそこまで複雑ではないので……今のところ、脱出成功率は3割ほどでしょうか」

「そうなんだ、じゃあ頑張ろっか。……それよりも『大ボス』って?」

「はい。この中にはモンスターが徘徊しておりまして、皆さんを見つけると襲ってきます。攻撃を3回受けてしまうと強制退場となってしまうので、見つからないように隠れてやり過ごすか、逃げるか……あるいは打倒する必要があります。あ、モンスターたちは幻影魔法で生み出されたもので危険はありませんのでご安心ください」

「ふむふむ」

「そして、『大ボス』とは……このモンスターたちを統べる王なのです。ちなみに……大ボスを倒してクリアすると、ちょっとした景品がありますよ。今のところ達成した人はいませんけど」

「なるほど。それにしても……前にメリエルちゃんから聞いた話よりもかなり凝ってる感じだね……。というか、メリエルちゃんの魔法だけで実現できるものなの?レティできる?」

「ムリ。リディーは?」

「レティが無理なら、俺など話にならない」

 以前聞いた話でも、かなり大掛かりな企画だとカティアたちは思ったものだが……彼女たちが事前にイメージしていたものを遥かに超えている。
 そもそも、この空間を創るだけでも莫大な魔力が必要だと思えるし、学園祭期間中ずっと維持し続けるのも非常に困難だろう。


「確かにメリエルさんの魔法だけでは無理だったみたいなんですけど……神代遺物アーティファクトも併用してるらしいです。リーゼ先生の協力もかなりあったとか」

「アーティファクト?」

「なんでも、ウィラー王国の秘術に使われていたものだとか」

「……それって」

「……大森林結果の?まさかな……」

 カティアとカイトは顔を見合わせる。

 実際のところその二人の想像は正しい。
 ウィラーの秘術、大森林結界にはダンジョン・コアを模した神代遺物アーティファクトが使われていたのだが……使用者はシギルの継承者に限られるので、現在はメリエルが所持しているのである。

 まさか学園祭のためにそんなものまで持ち出すとは……二人の想像のはるか斜め上だろう。


「ま、まあいいや。ルールは分かったから、先に進もう」

「はい。それでは行きましょうか」

 カティアが気を取り直して先に進もうとすると、フローラも同行すると言う。

「あれ?フローラさんも一緒に来るの?」

「はい、グループ事に案内係が付く事になってるんです。緊急時の避難誘導などのためですね」

「ああ、なるほど。じゃあ、頑張って行こう!」

「お~!」


 カティアたち一行は迷宮へと踏み出した。

 ここから先、学園祭のアトラクションとは思えない数々の仕掛けが立ちはだかり、彼女たちはメリエルの本気やりすぎを思い知ることになるだろう。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...