【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

文字の大きさ
29 / 151
剣聖の娘、騎士登用試験を受ける……?

後宮審査会

しおりを挟む


 後宮のダンスホールに集う着飾った女性たち。
 年の頃はエステルと同じくらいの少女から、20歳手前くらいの者……うら若き乙女たちばかりだった。

 総じて皆、容姿も美しく纏う雰囲気には気品が感じられた。


(……やっぱり、私だけ何か場違いな気がする。何かチラチラ見られてるし)

 先程まで闘志を燃やしていたエステルであったが、自分とは全く異なる毛色の女性たちを前にして幾分か冷静になったようで、再び違和感を覚えた。

 そして先程エステルに対して集まった注目。
 あからさまに彼女に視線を向けている者はもういないが、今でも何度も覗うような気配は感じる。


 神経の太いエステルも流石に居心地が悪そうで、早く試験が始まってほしい……と思っていた。



 そんな彼女の祈りが通じたか、乙女たちが集まるダンスホールに新たな人物が入ってきた。
 少し神経質そうな顔をした年配の女性である。
 服装は、エステルを案内してくれたクレハと似たような格好。
 彼女と同じ王城の使用人の一人であろう。


 その女性はドレス姿の集団の前までやって来ると、一礼してから口を開いた。


「大変お待たせいたしました。本日はここ……エルネ後宮までお越し下さり、まことにありがとうございます。私はこの度の審査会で皆様をご案内させて頂きます、ドリスと申します。よろしくお願いいたします」

 丁寧な口調で挨拶をしてから、再び深く一礼する。
 そして、頭を上げて更に続ける。

「此度の審査会は、この国の行く末を決めると言っても過言ではない非常に大切なもので御座います。どうか皆様、悔いの残らぬよう……能力、美貌、教養、人柄……皆様がお持ちになる御自分ならではの魅力を存分にお示しいただければと思います」

 彼女の挨拶は、そう締め括られた。

 すると、一人の女性が手を上げる。
 エステルのものよりも鮮やかな赤いドレスを着た、金髪碧眼の美少女。
 顔立ちからして歳はエステルより上に見えるが、そう離れてはいないだろう。
 だが、その起伏に富んだ成熟した身体付きはエステルとは比べるべくもなかった。


「発言してもよろしいかしら?」

「はい、レジーナ様。もちろんでございます」

 彼女の名はレジーナと言うらしい。
 エステルにも劣らぬ美貌、落ち着いた物腰と堂々とした態度、優雅な所作から滲み出る気品、そして見る者を魅了するカリスマを兼ね備えていた。

 エステルが輝くばかりの生命力に満ち溢れた向日葵だとすれば、彼女は芳しい香りを纏う大輪の薔薇だろうか。


「私達は将来の王妃、あるいは王の血を絶やさぬための側室候補としてこの場にやってきましたが……いったい、どなたがどうやって私達を審査するのです?」
 
(……んぇ?王妃……?側室……?)

 レジーナの言葉に、引っ掛かりを覚えるエステル。
 ……ようやく気が付いたか?


(……ん~、よく分かんないや)

 しかしエステル・ブレーンは、それ以上考えることを面倒くさがって放棄する。
 流石のエステル・クオリティ。

 間違っても、彼女を王妃なんかにしてはダメだろう……


「このあと皆様には様々な課題を受けて頂いた上で総合的に判断させていただきます。ただ、具体的にどうやって、誰が……という点については、大変恐れ入りますが、私からお答えすることは出来かねます。ただ……審査中の皆様の振る舞いなども含めて、常に見られている……そう、ご理解くださいませ」

「……ええ、分かりましたわ」

 ドリスの答えに完全には納得していない様子のレジーナであるが、特にそれ以上は何も言わずに了承の意を伝えた。


「それでは皆様……早速ですが、最初の課題に入りたいと思います」

 彼女がそう言うと、ダンスホールの入り口から様々な楽器を携えた女性たちが入ってくる。
 揃いの衣装を纏ったのは王城付きの楽士隊だ。
 全員女性なのは、この場が男子禁制であるためだろう。
 彼女たちは一礼して入室すると、ホールの奥に設けられた演奏スペースに向かって楽器の準備を始める。

 その様子を見ながら、ドリスは最初の課題を告げた。

「第一の課題は『ダンス』でございます。ここは男子禁制の場ですので……男性パートは僭越ながら、私共がお相手させていただきます」


(……ダンス?……剣舞なら得意だよ!)

 違う、そうじゃない。


 いよいよ始まった後宮入りのための審査会。
 エステルは未だ騎士登用試験であると勘違いしたままであるが……果たして、彼女は見事審査を合格することが出来るのか?
 そして、無事に騎士になれるのか?


 ……その運命はいかに!?

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~

黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。 待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金! チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。 「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない! 輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる! 元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...