【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

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剣聖と聖女の帰還

真の聖女

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 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 エルネアの後宮でついにリアーナと再会したエドナ。
 しばらくぶりに見た姉の姿は、特に変わったところもなく、彼女は安堵の様子を見せる。


 そして、予想外の妹の訪問を受けたリアーナは……


「どうして……なんで、こんなところまで来ちゃったの?あなたには手を出さないって……約束したはずなのに……」

 驚き、悲しみ、怒り……様々な感情が混ざったような表情を浮かべながら、彼女は呟いた。

 それを聞いたエドナは、やはり自分のために姉は犠牲になったのだと確信し、怒りを覚えた。
 それは大神官ミゲルに対してだけでなく、姉に対してもだ。


「姉さん。私のために姉さんが犠牲になるなんて……そんなこと、私が喜ぶとでも思ったの?私たち……これまでずっと一緒に生きてきたじゃない。それは、これからも同じだと思ってた。姉さんは違うの?」

「エドナ……もちろん私も同じ気持よ。たった二人だけの家族なんだから……。でも、だからって何もあなたまで……」

「私は横暴な権力者の言いなりになる気なんてないわ。ここに来たのだって、姉さんと一緒にここから出るためなんだから!」

 抑えていた激情を解き放って彼女は叫ぶ。
 あくまでもエドナは……ただ真っ直ぐに自分の意志を貫こうとする。
 そして、かつて自身が道を誤った事を自覚し後悔ているからこそ、彼女は人一倍『正しく』あろうとするのだ。


「エドナ……」

 リアーナは妹の眩しさから目を背けるように俯く。


「姉さん、二人でここを出ましょう。例え誰かが邪魔をしてきても……私が姉さんを守るわ!」

 力強く宣言する妹の言葉に、姉は再び顔を上げて……今度は真っ直ぐ目を見つめる。
 その瞳は迷いの色もなく、決然としたものだった。


「私は、ここに残るわ」

「えっ!?な、なんで……?」

 予想外の姉の言葉に驚愕の声を上げたあと、エドナは呆然となる。
 リアーナの表情を見る限り、二人だけでここから脱出することなんて出来ない……などと諦めているわけではなさそうに見える。
 であるからこそ、エドナは訳が分からなくなった。


「……あの方を、放っておけないわ」

「あの方って…………バルド陛下のこと?」

 続く姉の言葉にエドナは取り敢えず落ち着きを取り戻し、聞き返す。
 この後宮で「あの方」と呼ばれる人物など、後宮の主である国王しか考えられない。
 そしてそれは正しかったらしく、リアーナは頷いてさらに続けた。


「バルド様は大きな悲しみに囚われるあまり、自分自身を見失ってしまった。深い愛情の持ち主だからこそ、大切な者を喪った悲しみも深く……心を壊してしまったのよ」

「……それと、ここに女の人たちを集めていることに何か関係があるの?いったい王様に何があったというの?」

 いくら同情に足る事情があろうとも、本人の意志を無視し尊厳を踏みにじることは許されない。
 そう、エドナは思うが……


 リアーナは再び目を伏せて、悲しそうに言う。

「バルド陛下は……以前は、唯一人の女性を愛していた。だけど、その方は……正妃様は……」


 やや口籠りながらも、彼女は語り始めた。





 かつてバルド王には、由緒正しき貴族家から輿入れした王妃がいた。
 政略結婚であったものの二人は互いに愛を育み、その仲睦まじい様子から王国の将来は安泰であると社交界でも囁かれていた。

 しかし。

 二人の幸せな時間はそう長くは続かず、運命の歯車は狂い出す。


 二人には王族の当然の責務として、世継ぎをもうける事が期待されていたのだが……
 婚礼の儀から数年が経っても王妃は懐妊の兆しもなく、世継ぎを願う周囲の声は日ごと大きくなっていった。
 王妃はその重圧に少しずつ精神を蝕まれ、ついには……自ら命を絶ってしまう。

 バルド王は大いに嘆き悲しんだが、彼が王妃の死を悼む間もなく、別の女性を後釜に据えようとする動きが活発になる。

 そして、貴族たちの様々な思惑が絡み合った結果。
 『王の責務』を果たすという名目で後宮に女性たちが集められるようになったのだが……それで結局、子供を授かることができなかった要因はバルドの方にあることが分かったのだ。



「自分のせいで愛する女性を死に追いやった。そう考えて自責の念に囚われた陛下は、いつしか王妃様と同じように心を病んで……世継ぎを残すという執着心だけが残った」

 リアーナは、話をそう締めくくった。

 彼女は後宮に連れられてきてから、そのような話を……バルド王に同情的な年嵩の使用人から聞かされたのだった。


「そんなことが…………でも、王様は可哀想だと思うけど、だからって好き勝手にしていいわけじゃないわ」

 姉から事の経緯を聞いても、エドナはぶれる事はなかった。
 当の本人に会ってないから、というのもあるだろう。


「私も、そう思うわ。でも……私は、陛下の心を救ってあげたい……私なんかに何かができるわけじゃないと思うけど、それでも……寄り添って心を尽くせば、きっと……」

 その言葉を聞いたエドナは……
 姉こそは、エル・ノイア神殿の教義を体現した真の聖女であるのだと感じた。
 たとえ能力的に自分の方が優れているのだとしても、その心根、慈愛と献身の精神はとても及ぶものではない……と。


 しかし、その姉にしてみれば。
 妹こそ、何者にも屈しない芯の強さと太陽の如き輝きで人々の心を照らす、女神エル・ノイアのような真の聖女である……と、言うことだろう。

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