【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

文字の大きさ
116 / 151
剣聖と聖女の帰還

剣聖、王と剣を交える

しおりを挟む



 エドナは自室を出て人目を忍びながら後宮の外を目指す。
 ジスタルが囚われているという地下牢の場所は見当もつかないが、とにかく城内の怪しい場所を片っ端から探るつもりだ。
 もちろん彼女とて、そうそう上手く事が運ぶとは思っておらず、場合によっては荒事も覚悟しているのだが……


 彼女の目的はあっさりと果たされることになる。
 それも、完全に予想外の方向で。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




「じ、ジスタル!?それに……王様も?な、何をやってるの?」


 後宮の建物の前にある庭園に何やら人集りが出来ていて、木立の陰からその様子を見ようとしていたエドナ。
 王以外の男性は立ち入ることが出来ないと聞いていたはずなのに、どう見ても騎士らしき男たちが多数集まっているのを不審に思い、よくよく目を凝らしてみると……
 その中心には、これから救出しようと考えていた、その当の本人が何故かバルド王と対峙しているではないか。
 全く予想していなかった光景に、彼女は隠れていたことも忘れて思わず叫び声を上げてしまうのだった。

 騎士たちが一斉に彼女の方を振り向くが、ジスタルもバルドもお互いに視線を外さない。
 いや、むしろエドナの声が引き金となって……


 ガィンッ!!!


 一瞬で間合いを詰めた二人が交錯し、激しく剣を打ち合わせる音が響き渡る。
 そして、それが戦闘開始の合図となり、凄まじい剣戟の応酬が始まった。




「ちょっとあんた!!いったい何がどうなってるの!?」

 エドナは観客ギャラリーと化している騎士の集団に近づくと、自分と歳が近そうな少年……ディラックの首根っこを捕まえて問いただす。


「う、うわ!?あ、アンタこそなんなんだ!?」

 突如現れた少女に詰め寄られ、その剣幕に彼は慌てふためく。


「私はジスタルの友人よ!!それよりも、なんでアイツが王様と戦ってるの!?っていうか何で誰も止めないの!?騎士でしょ、アンタたち!!」

「力強っ!?お、落ち着けって!!あれは別に本気で……いや、本気は本気だろうけど……手合わせだよ!!て・あ・わ・せっ!!バルド陛下からも手出し無用って言われてんだよ!!」

 一見して華奢な少女とは思えぬほどの馬鹿力で揺さぶられながら、ディラックは何とかそう返した。
 それで少しは冷静に……なった訳でも無いが、エドナは呆れたように呟く。


「何よ、それ……」

「多くの言葉を重ねるより、互いに剣を交えたほうが分かりあえることもある……そういうこった」

 ウンウン……と頷きながらしたり顔でディラックは言った。
 しかしエドナは……


「……何よそれ、意味がわからないわ」

 と、やはり白け顔で再び同じセリフをボソリと呟くのである。

 それには周りの騎士たちも『そうだよなぁ……』と、彼女の言葉に同意するのだった。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 エドナが呆れ果てている一方で、ジスタルとバルドの『手合わせ』と称した戦いは熾烈を極めていた。

 一応は刃引きした剣を使っているものの、達人が振るうそれはまともに当たれば致命傷となりかねない。
 しかし、やはり達人同士の戦いであるなら、そうやすやすと攻撃が当たるものでもない。
 ある意味、お互いの剣の腕を信頼しているからこそ成り立つものなのだろう。


「流石ですね陛下!ブランクが長い割には鈍ってないじゃないですか!!」

「お前こそ、『剣聖』の呼び名は伊達じゃないようだな……!」

 言葉を交わすその間も目まぐるしく立ち位置が入れ替わり、剣を振るう腕も止まらない。
 そして、まるで世捨て人のような雰囲気であったバルドは、今や別人のように覇気がみなぎっていた。



 バルドのすくい上げるような鋭い一撃を、ジスタルは文字通りの紙一重で躱しながらカウンターの突きを放つ。
 バルドはそれを柄頭で打ち払い更なる連撃に繋げようとするが、ジスタルは僅かに後退して間合いを外す。

 接近と離脱を繰り返しながら流星のような斬撃が入り乱れる。
 かと思えば、ひとたび刃が交われば鍔迫り合いとなる。
 技と技、力と力の激突は互角のものだ。

 手合わせと言うにはあまりにも高度な戦いに、周りの騎士たちは息をするのも忘れて見入ってしまうのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「す……げぇ……。師匠が凄えのは知ってたけど、陛下が同じくらい強いなんて知らなかったぜ。それに、二人とも剣筋が似てるような……」

 ますますヒートアップする二人の手合わせに、ディラックは感動した様子で呟きを漏らす。
 それを聞きつけた先輩騎士の一人が、彼に新たな事実を告げる。

「そうか、お前は騎士団に入ったばかりだから知らないか。陛下とジスタルの剣の師は同じ……つまり兄弟弟子の間柄なんだぞ」

「そうなんスか!?はぁ……やっぱ師匠は凄い人だったんだな……」

 自称剣聖の弟子は、ますます感激した様子だ。

 そしてそんな会話を聞いていたエドナは、その事自体はあまり興味がない様子だったが、二人の戦いを見て別の感想を抱いていた。

「ふぅん……そうなんだ。それにしても、二人とも何だか楽しそうよね……。ジスタルはともかく、王様は意外だわ」

 姉の部屋で初めて会った時は、その虚無を宿した瞳に恐怖を覚えたものだが、今のバルド王はまるで別人だ……と彼女は感じていた。


しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~

黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。 待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金! チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。 「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない! 輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる! 元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

処理中です...