もう恋なんてしたくないと思ってた

梨花

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「都内はだめ?」
「場所にもよるかもしれませんけど…。
実家から通えませんよね?」
「あー。まぁそうだねぇ。
住むところは探してくれるような事言ってたけど。
行ってみるだけでもどう?」
行ってみるだけならいいだろうか。
「じゃあ、行ってみます。」


12月24日。
土曜日。
「土曜日もやってるんですか?」
学生にとってはお休み。
「土曜日と祝日は午前だけ開けてるらしいよ。」
電車を何度か乗り換えて連れてこられたのは綺麗なオフィスビル。
地下は駐車場のようだ。
「うはあ。」
高い。
高いぞ~、このビル。
「おのぼりさんじゃないからね。」
「あ、はい。」
職場見学です。
エントランスを入ってエレベーターホールにむかう。
エレベーターがたくさんある。
エレベーターによって向かうフロアが違うようだ。
「久坂さん、こっち。」
10階までしか行かないエレベーターの4階で降りる。
ビルは55階まであって11ー26階はミドルフロア、26階以上はアッパーフロアと呼ばれているそうだ。
4階はクリニックフロア。
1番広いのは内科。そして歯科。眼下に外科、泌尿器科や婦人科の医院が入っている。
「こんにちは。氷坂先生と約束させていただいている那賀です。」
那賀さんは受付の人に声をかけた。
「那賀様ですね。
おかけになって少々お待ちください。」
「はい。」
あたしたちはコートを脱いでソファに腰を下ろす。
「那賀さん。」
診察室から出てきたのはスーツ姿の女性。
あたしより少し上、だろうか?
「やあ、高遠さん。」
那賀さんが立ったのであたしも立ち上がる。
「彼女がこの間話していた3月卒業予定の人なんだけど。」
「久坂やよいと申します。」
あたしは頭をさげる。
「初めまして。
高遠麻衣です。
当院の雑用係です。」
ただの雑用係ではなさそうだ。
「少しお話して中の見学をしましょうか。
那賀さんはどうされます?」
那賀さんは唇に指を当て少し考えてから答える。
「高遠さんのお仕事見学させてもらおうかな。」
「かしこまりました。どうぞ中へ。」
那賀さんがあたしの背中を押し、高遠さん、あたし、那賀さんの順で診察室に入る。
ミーティングルームとドアに書かれた部屋に案内された。
「そちらにかけてお待ちください。資料を持って来ますね。」
しばらくして高遠さんはペットボトルのミニサイズのお茶とパンフレットを持ってきた。
「こちらが一応求人案内になります。」
病院名、住所、電話番号、給料などなどが書かれたプリント。
「お、高給取りだな。」
「那賀さんも資格取りますか?」
「男でもなれるのか?」
「今勤務している衛生士さんが通ってらした学校は男性もいたそうですよ。
人数は少なくてハーレムだったそうです。」
「考えるかなあ。」
「ここに勤務となると氷坂にこき使われますがそれでもよろしければ。」
「…やめとく。」
くすりと高遠さんは笑った。
そんなこの病院の給料は25万~。
「給料に関しては総支給額になるので、ここから住民税、所得税、雇用保険、社会保険、厚生年金などが引かれて大体21万ぐらいになります。
あと、試用期間を2カ月設けているのでその間はもう少し下がります。」
「はい。」
「那賀さんから聞いているのだけど、ご実家からは離れたくはないのかしら?」
「いえ…。
住むところを考えるといろいろ先立つものが必要なので、ちょっと躊躇してしまって。」
「あぁ。
いろいろ買い揃えないといけないし、敷金礼金がいるものね。」
「ええ、そうなんです。」
「誰かと一緒に住む話は考えたことは?」
「シェアハウスはちょっと…。
通う学校の同級生でもそういうところに住んでいる人がいて、住人同士のトラブルがって聞くので。」
「そう。
じゃあその話はまた後にしましょう。
お仕事の話をしますね。
診療補助業務と歯科衛生士業務がメインになります。
研修後にはインプラントなどの外科補助もあります。
現在、パートで2人勤務していますので就職したら初めのうちはその人について衛生士業務を、空いた時間は診療補助をしてもらうような形になると思います。」
「はい。」
「それでは院内を案内しますね。」
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