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正月休みに帰ってきた兄を捕まえてあたしは初詣にいった。
その行く道すがら、兄に就職で悩んでいる事を話した。
兄の運転する車での移動なので時間はたくさんある。
「条件は悪くないんだったらやってみればいいんじゃないか?
ダメだったらまた考えればいい。」
「うん…。」
「それより、その就職を斡旋した男は何者なんだ?」
聞かれればあたしの恋の顛末を話すしかなかった。
「は?あいつが、か?」
兄は信じられないといった顔をする。
「そうでもないとあの人の上司と知り合うなんてありえないでしょ、一介の学生なのに。」
「…その人に会わせろよ。」
「なんで?」
「俺が、確認する。」
あたしは息を吐く。
「いつならいい?」
「早ければ早い方が。」
「明後日に会う約束してるから、一緒に行ってもいいか聞いとく。」
『いいよ。』
翌日の夜。
メールでは失礼かと思ったのと、新年の挨拶をするために電話をした。
そして兄が確認したがっていると伝えると那賀さんはあっさり言った。
『明日は2人でうちに来るといい。」
「本当にいいんですか?」
『そもそも俺たちはやましい関係じゃないからね。君のお兄さんに会うのに何も問題はない。
それに何かあったときの事を考えればきちんと話をしておいたほうがいいだろう。』
「な、何かって…?」
『あの男が何をしでかすか分からないからな。
当分は問題ないとは思うが。』
携帯は買い換えた。
念のために前の番号は見守り携帯にしているけど解約できる時期になれば解約する予定だ。
「ありがとうございます。
ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。」
翌日。
「あけましておめでとうございます。」
「おめでとうございます。
初めまして、那賀です。」
「やよいの兄で久坂董哉といいます。」
玄関先で挨拶をする。
「董哉さん、やよいさんは受験勉強をするので我々は下にあるカフェでいいですか?」
那賀さんからそう兄に切り出した。
兄は目を丸くした。
「何?あたしが遊びに来たと思ってたの?」
兄は苦笑して頷く。
「やよいさんは此処に来ても勉強と食事しかしてませんよ。
詳しいお話はまた後ほど。
コーヒーができてるから好きに飲んでいいから。」
「はい、ありがとうございます。」
あたしは1人留守番を、2人は1階にあるカフェへと行った。
ダイニングテーブルにバッグを置きキッチンに入るといつも借りる白いマグカップにお湯が入っていた。
あたしの為にカップを温めてくれていたのかと思うと少し嬉しい。
あたしはコーヒーを入れ、砂糖と牛乳を入れてダイニングテーブルに戻った。
バッグからノートと国試の過去問のプリントを取り出して解いていく。
「ただいま。」
2人が帰ってきたのは1時を過ぎた頃だった。
トイレに立つことはあったけど、時間を気にせずにいたから3時間もたっていたことに驚いた。
兄は明らかに不機嫌な顔をしている。
どんな話だったんだろう?
「ライン送ったんだけど気がつかなかった?」
「あー。
マナーモードにしてバッグに入れてソファに置きっぱなしにしていたので…。
ごめんなさい。」
「ランチを下で食べてきたから、久坂さんの分をつくるよ。」
「ありがとうございます。
何を作ってくださるんですか?」
「んー。実家からお歳暮のベーコンをもらってきたからカルボナーラはどうだろう?」
那賀さんは仕事が忙しいみたいなのにマメで、洗濯も掃除も料理もする。
「楽しみです。」
あたしはテーブルの上を片付ける。
「やよい、那賀さんとはそういうことにはなってないのか?」
居心地悪そうにソファに座る兄はあたしにそんなことを尋ねてきた。
「うん。あたしには興味なさそう。
女としての魅力がないのかなあ?」
はははっと笑いながらあたしはテーブルを拭いた。
「久坂さんはナニを言ってるのかな?」
「だって那賀さん、全然狼ではないですよぉ?」
「そりゃ一回りも年が違う子をいきなり喰ったら失礼でしょ?
それに今は受験生だし。」
こういうところもあたしが居心地がいいと感じる要因だ。
「ありがとうございます。那賀さんにはいつも感謝してます。」
「どういたしまして。」
それにしても。
さらっと喰うとか言ってしまうんだ、この人。
「まぁ安心して、董哉くん。
久坂さん喰いたくなったらまずは董哉くんの許可貰うから。」
「なんですか、それっ。」
那賀さんは笑って誤魔化した。
「できたよー。」
いただきもののベーコンの塊をつかったからベーコンが店で食べるみたいに大きい!
グリーンサラダもいっしょに出てきた。
お正月からこんなのいただけるなんて幸せだ。
「いただきます。」
手を合わせて挨拶して。
「んっ!おいひい!」
幸せだあ。
「口に合ったみたいでなにより。」
「那賀さん。
先日ご紹介して頂いた病院、就職させて下さい。」
「俺が就職させるわけじゃないから。
とりあえず向こうに話をしておくから、履歴書用意していて。」
「はい。」
「土日がいいのかな?」
「昼間なら。
金曜日なら少し遅くなっても次の日休みなので大丈夫です。」
「そう。わかった、向こうに確認してみる。」
「お手数おかけします。」
その行く道すがら、兄に就職で悩んでいる事を話した。
兄の運転する車での移動なので時間はたくさんある。
「条件は悪くないんだったらやってみればいいんじゃないか?
ダメだったらまた考えればいい。」
「うん…。」
「それより、その就職を斡旋した男は何者なんだ?」
聞かれればあたしの恋の顛末を話すしかなかった。
「は?あいつが、か?」
兄は信じられないといった顔をする。
「そうでもないとあの人の上司と知り合うなんてありえないでしょ、一介の学生なのに。」
「…その人に会わせろよ。」
「なんで?」
「俺が、確認する。」
あたしは息を吐く。
「いつならいい?」
「早ければ早い方が。」
「明後日に会う約束してるから、一緒に行ってもいいか聞いとく。」
『いいよ。』
翌日の夜。
メールでは失礼かと思ったのと、新年の挨拶をするために電話をした。
そして兄が確認したがっていると伝えると那賀さんはあっさり言った。
『明日は2人でうちに来るといい。」
「本当にいいんですか?」
『そもそも俺たちはやましい関係じゃないからね。君のお兄さんに会うのに何も問題はない。
それに何かあったときの事を考えればきちんと話をしておいたほうがいいだろう。』
「な、何かって…?」
『あの男が何をしでかすか分からないからな。
当分は問題ないとは思うが。』
携帯は買い換えた。
念のために前の番号は見守り携帯にしているけど解約できる時期になれば解約する予定だ。
「ありがとうございます。
ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。」
翌日。
「あけましておめでとうございます。」
「おめでとうございます。
初めまして、那賀です。」
「やよいの兄で久坂董哉といいます。」
玄関先で挨拶をする。
「董哉さん、やよいさんは受験勉強をするので我々は下にあるカフェでいいですか?」
那賀さんからそう兄に切り出した。
兄は目を丸くした。
「何?あたしが遊びに来たと思ってたの?」
兄は苦笑して頷く。
「やよいさんは此処に来ても勉強と食事しかしてませんよ。
詳しいお話はまた後ほど。
コーヒーができてるから好きに飲んでいいから。」
「はい、ありがとうございます。」
あたしは1人留守番を、2人は1階にあるカフェへと行った。
ダイニングテーブルにバッグを置きキッチンに入るといつも借りる白いマグカップにお湯が入っていた。
あたしの為にカップを温めてくれていたのかと思うと少し嬉しい。
あたしはコーヒーを入れ、砂糖と牛乳を入れてダイニングテーブルに戻った。
バッグからノートと国試の過去問のプリントを取り出して解いていく。
「ただいま。」
2人が帰ってきたのは1時を過ぎた頃だった。
トイレに立つことはあったけど、時間を気にせずにいたから3時間もたっていたことに驚いた。
兄は明らかに不機嫌な顔をしている。
どんな話だったんだろう?
「ライン送ったんだけど気がつかなかった?」
「あー。
マナーモードにしてバッグに入れてソファに置きっぱなしにしていたので…。
ごめんなさい。」
「ランチを下で食べてきたから、久坂さんの分をつくるよ。」
「ありがとうございます。
何を作ってくださるんですか?」
「んー。実家からお歳暮のベーコンをもらってきたからカルボナーラはどうだろう?」
那賀さんは仕事が忙しいみたいなのにマメで、洗濯も掃除も料理もする。
「楽しみです。」
あたしはテーブルの上を片付ける。
「やよい、那賀さんとはそういうことにはなってないのか?」
居心地悪そうにソファに座る兄はあたしにそんなことを尋ねてきた。
「うん。あたしには興味なさそう。
女としての魅力がないのかなあ?」
はははっと笑いながらあたしはテーブルを拭いた。
「久坂さんはナニを言ってるのかな?」
「だって那賀さん、全然狼ではないですよぉ?」
「そりゃ一回りも年が違う子をいきなり喰ったら失礼でしょ?
それに今は受験生だし。」
こういうところもあたしが居心地がいいと感じる要因だ。
「ありがとうございます。那賀さんにはいつも感謝してます。」
「どういたしまして。」
それにしても。
さらっと喰うとか言ってしまうんだ、この人。
「まぁ安心して、董哉くん。
久坂さん喰いたくなったらまずは董哉くんの許可貰うから。」
「なんですか、それっ。」
那賀さんは笑って誤魔化した。
「できたよー。」
いただきもののベーコンの塊をつかったからベーコンが店で食べるみたいに大きい!
グリーンサラダもいっしょに出てきた。
お正月からこんなのいただけるなんて幸せだ。
「いただきます。」
手を合わせて挨拶して。
「んっ!おいひい!」
幸せだあ。
「口に合ったみたいでなにより。」
「那賀さん。
先日ご紹介して頂いた病院、就職させて下さい。」
「俺が就職させるわけじゃないから。
とりあえず向こうに話をしておくから、履歴書用意していて。」
「はい。」
「土日がいいのかな?」
「昼間なら。
金曜日なら少し遅くなっても次の日休みなので大丈夫です。」
「そう。わかった、向こうに確認してみる。」
「お手数おかけします。」
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