カウントダウン

梨花

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12月5日

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月曜日。
世間は平日だがあたしは休みである。
天気がいいのでカーテンを洗った。

昼に携帯がなったので見てみると1年後輩の浅香さんからのラインだ。
【藤田先生を上回るイケメンが個室入院しました!】
ぽっとほおを染めるウサギのキャラクターのスタンプつきだ。
【但し病名不明。】
あたしはため息をつく。
【病名もある意味個人情報デス。】
あたしは返信しておいた。
【晩御飯食べに行きませんかー?】
【食べにおいでー。鍋にしよう。】
【キムチ鍋希望デス。仕事終わったら連絡します。】
あたしは重い腰を上げて買い物に行くことにした。


キムチ鍋の素から肉、野菜をカゴに入れる。
「すごい荷物ですね。」
冷凍うどんをカゴに入れていると背後から声をかけられた。

「川島先生。」
「今夜は鍋パーティーですか?」
「浅香さんのご希望でキムチ鍋です。」
「身体が温まりそうですね。」
「そうですね。先生は…明けですか?」
「はい、先ほど午前診から解放されました。」
2時をまわっている。
月曜日の外来は大変だ。
「今日、救急があったんですか?」
牛乳をカゴに入れながらあたしは言ってみた。
「浅香さんから聞きましたか?」
「イケメンとだけ。」
川島先生は小さく笑った。
「確かにあいつはイケメンですね。
僕や藤田の高校の同級生です。
藤田はあいつが入院したって嫌な顔してますよ。」
「…それはそれは。」
くすくすとあたしは笑った。
「篠崎さん、藤田と付き合ってるんですよね?」
「はい?
誰がそんなこと言ってました?」
「あれ?違うんですか?この間の土曜日に誘ったら篠崎さんと約束があるからって断られたんですよね。」
「はぁ?ふざけんな、藤田め。人を呼び出しておいてっ。」
「し、篠崎さん、落ち着いて…。」
はっ!川島先生がいたんだった。
「すみません…。」


川島先生と別れて帰宅する。
野菜を切ってジッパー付きの袋に入れて冷蔵庫に入れる。肉も同じように。
6時前にラインが入る。
【着替え終わりました~。今から突撃します!(^-^)/】
【待ってます(*^_^*)】
鍋に水を入れキムチ鍋の素を入れる。湧いてきたら肉野菜投入!
病院からここまでは歩いて15分。
玄関のチャイムがなる。
「はーい。」
玄関を開けると浅香さんと。
「背後にいるの、何。」
「篠崎ちゃん、酷い。」
藤田が、いた。
「先輩とのライン、見つかっちゃって、勝手についてこられました。」
「帰って下さい。」
「鍋なんだろ?1人分ぐらい…。」
「買い物に行ったら川島先生にお会いしました。
誰にも話さないと言った約束、お忘れではありませんよね?」
「美雪…。」
「では。」
鉄の扉を閉め、鍵をかけてチェーンもかけてやった。
これだけすればあたしの気持ちの欠片ぐらいはわかるだろうか。
ふうと息を吐き、あたしは部屋に戻った。

「良かったんですか?追い返してしまって。」
「へーきよ、あんな男。
それよりイケメン患者、どうなの?」
「なんか検診で引っかかったとかで精密検査なんですけど、藤田先生とも川島先生とも違うイケメンです。」
藤田はいわゆるチャラ男系。
少し染めた髪を緩いパーマをあてて、人当たりの良さそうな顔をしている。
川島先生は真面目で優しい感じ。ほっとさせる雰囲気は年配に人気だ。
「そうですね~、鶴見さんは塾の数学の先生って感じかなあ。」
鶴見?
「その患者さん、鶴見さんていうの。」
「はい、自衛官て言ってました。」
偶然?
聞いてみる価値はあるか。
お見合いのことバレるけど別に困ることではない。
「こんな感じの人?」
母からきた手紙の中身を出して浅香さんに見せる。
「え?先輩、完全にこの人ですよ。この写真どうしたんですか?」
「あたしのお見合い相手。」
「先輩お見合いするんですか?」
「うん、年明けに。」
「藤田先生は?」
「え?」
ちょっと待て。
「あたしと藤田先生はどういう関係だと思ってる?」
「友達以上恋人未満?うーん、恋人以上友達未満?あれ?どっちにしろお互いにもう一歩踏み込めない、みたいな感じ?」
あたしはため息をつく。
それは間違ってはいない認識だ。
あたしは他人から見られる時に恋人とは見られないように努力してきた。
それは藤田ととる距離もだ。
深入りしすぎないように、月に数回しか体を重ねないように。
わざと少しだけ都合のよくて、都合の悪い日を選んで会ってきた。
「藤田先生はただの飲み友達よ。」
体を重ねるだけの。
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