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12月6日
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あたしは少しだけ早めに出勤した。
浅香さんは泊まったのでテーブルにおにぎりを作っておいた。
浅香さんの今日のシフトは準夜勤なので家の鍵は病院で受け渡しになる。
「おはようございます。」
担当の患者さんを確認する。
「篠崎さん。」
師長に呼ばれる。
「はい?」
カルテを渡された。
「昨日入院した鶴見さん、受けもってくれる?」
「はい?」
通常であれば入院初日に担当した人の受け持ちになるはずだ。
「まだ藤田先生はムンテラしてないけど恐らくオペに入るから。最近外科の患者さん担当していないでしょう?」
あたしが働く病棟は内科の患者さんがほとんどで、外科の患者さんは少ない。
新人看護師がベテランと外科の患者さんを受け持つことが多いのであたしのような中堅と言われる看護師は中々外科の患者さんを受け持つことが少ないのだ。
「はぁ。」
「それにイケメンだからあまり若い子にはね。」
「わかりました。」
あたしが嫌だといってもどうしようもないのだろう。
「ムンテラ、いつするんでしょうか?」
あたしは師長に確認しながらカルテに目を通す。
「今日のうちにしたいそうよ。」
残業確定だな。
「わかりました。」
血液検査の結果が入っている。
CEAが高い。
採血は2週間前でオーダーは至急。
採血した時には何か勘付いてたってことだ。
ちなみにCEAとは腫瘍マーカーの1つで消化器系に腫瘍がある時に高いと言われる。
もちろん高いからといって必ずしも腫瘍があるとは限らない。
詳しく検査してみないとわからないのだ。
とりあえず申し送り前に顔を拝みに行こう。
「おはようございます。」
ドアをノックして返事を聞いてドアをあける。
殺風景な病院の個室だ。
体を起こして病衣を着て本を読んでいたのは確かに母親から送られた写真の男性だった。
「お、はよう、ございます。」
あたしは、にこりと笑った。
「看護師の篠崎です。今日から鶴見さんの担当になりました。よろしくお願いしますね。」
「あ、は、はい。」
「カーテンあけますね。
鶴見さんは女性が苦手ですか?」
「え、あ、いや。」
「あ、朝ご飯きちんと食べられたんですね。
病院食は味気ないでしょう?」
「いや、戦闘糧食に比べれば…。」
よし!言質とった!
「戦闘糧食ってお仕事は自衛官?」
「は、はあ。」
「大変なお仕事ですよね?尊敬しちゃいます。」
「あ、あの、篠崎さんっ。」
「…はい。」
「自分とお付き合いしていただけませんかっ。」
「えっと…仰っている意味がっ…。あっ、すみません、また後できますからお話はその時にっ。」
申し送りの時間が迫っていてあたしは慌てて病室を去った。
バイタルをとり、その時にも何か話をしたそうにしていたが、後で体を拭きにきますからその時に、と言い残しあたしはその部屋を出た。
ナースステーションに戻るとオペ上がりの藤田先生がいた。
「篠崎さん、ちょっと。」
声をかけられてナースステーションの奥の処置室に入る。
眉間にしわを寄せて難しそうな顔をしているから仕事モードだ。
オンオフきちんと切り替えられるところは尊敬できるところだ。
「鶴見さんの担当だってな。」
「はい、そうです。」
「ムンテラ、今日の18時から。悪いがよろしく頼む。こっちは俺と川島先生と篠崎さん。向こうは鶴見さんとその上司だそうだ。」
18時。
早い時間にお腹に入れておかないとな。
「終わったら川島と飲みに行く話をしてるんだが一緒に来ないか?」
「川島先生がご一緒なら行きます。」
「用心深いな、美雪は。」
ふと藤田の表情が緩んだ。
「当たり前ですよ。恨まれたくないですから。お話は以上でよろしいですか?」
「あぁ。」
「では失礼します。」
時計を見ればもう11時だ。
最後になってしまった鶴見さんの部屋に熱いおしぼりを持っていく。
「お待たせしました。」
「ありがとうございます。」
「背中、拭きましょうか?」
「あ、いや、それ、はっ。」
「そうですか。では後でおしぼり取りにきますね。」
「いや、そのっ、待ってください。」
「でも、男性の着替えを覗く趣味はないので…。」
「…背中、拭いてください。」
「わあ。」
藤田の背中はそんなに見たことはないが、如何にも国を守ってますって感じの背中だ。
広くてしっかり筋肉と傷の残った背中。
「篠崎さん。」
「はい?」
「あなたの写真を見て一目惚れしました。
俺と付き合ってもらえませんか?」
「……。」
あたしは黙々と背中を拭く。
「篠崎、さん?」
「鶴見さんのお気持ちはわかりました。
私は、いい人だなとは思いましたけど、申し訳ないんですが一目惚れまではいかなくて。」
「いいんですよ。そのお返事いただけただけで。」
「え?」
「しばらく入院することになりそうなので長期戦でいきます。」
母よ、どんな写真を渡したんだ?
浅香さんは泊まったのでテーブルにおにぎりを作っておいた。
浅香さんの今日のシフトは準夜勤なので家の鍵は病院で受け渡しになる。
「おはようございます。」
担当の患者さんを確認する。
「篠崎さん。」
師長に呼ばれる。
「はい?」
カルテを渡された。
「昨日入院した鶴見さん、受けもってくれる?」
「はい?」
通常であれば入院初日に担当した人の受け持ちになるはずだ。
「まだ藤田先生はムンテラしてないけど恐らくオペに入るから。最近外科の患者さん担当していないでしょう?」
あたしが働く病棟は内科の患者さんがほとんどで、外科の患者さんは少ない。
新人看護師がベテランと外科の患者さんを受け持つことが多いのであたしのような中堅と言われる看護師は中々外科の患者さんを受け持つことが少ないのだ。
「はぁ。」
「それにイケメンだからあまり若い子にはね。」
「わかりました。」
あたしが嫌だといってもどうしようもないのだろう。
「ムンテラ、いつするんでしょうか?」
あたしは師長に確認しながらカルテに目を通す。
「今日のうちにしたいそうよ。」
残業確定だな。
「わかりました。」
血液検査の結果が入っている。
CEAが高い。
採血は2週間前でオーダーは至急。
採血した時には何か勘付いてたってことだ。
ちなみにCEAとは腫瘍マーカーの1つで消化器系に腫瘍がある時に高いと言われる。
もちろん高いからといって必ずしも腫瘍があるとは限らない。
詳しく検査してみないとわからないのだ。
とりあえず申し送り前に顔を拝みに行こう。
「おはようございます。」
ドアをノックして返事を聞いてドアをあける。
殺風景な病院の個室だ。
体を起こして病衣を着て本を読んでいたのは確かに母親から送られた写真の男性だった。
「お、はよう、ございます。」
あたしは、にこりと笑った。
「看護師の篠崎です。今日から鶴見さんの担当になりました。よろしくお願いしますね。」
「あ、は、はい。」
「カーテンあけますね。
鶴見さんは女性が苦手ですか?」
「え、あ、いや。」
「あ、朝ご飯きちんと食べられたんですね。
病院食は味気ないでしょう?」
「いや、戦闘糧食に比べれば…。」
よし!言質とった!
「戦闘糧食ってお仕事は自衛官?」
「は、はあ。」
「大変なお仕事ですよね?尊敬しちゃいます。」
「あ、あの、篠崎さんっ。」
「…はい。」
「自分とお付き合いしていただけませんかっ。」
「えっと…仰っている意味がっ…。あっ、すみません、また後できますからお話はその時にっ。」
申し送りの時間が迫っていてあたしは慌てて病室を去った。
バイタルをとり、その時にも何か話をしたそうにしていたが、後で体を拭きにきますからその時に、と言い残しあたしはその部屋を出た。
ナースステーションに戻るとオペ上がりの藤田先生がいた。
「篠崎さん、ちょっと。」
声をかけられてナースステーションの奥の処置室に入る。
眉間にしわを寄せて難しそうな顔をしているから仕事モードだ。
オンオフきちんと切り替えられるところは尊敬できるところだ。
「鶴見さんの担当だってな。」
「はい、そうです。」
「ムンテラ、今日の18時から。悪いがよろしく頼む。こっちは俺と川島先生と篠崎さん。向こうは鶴見さんとその上司だそうだ。」
18時。
早い時間にお腹に入れておかないとな。
「終わったら川島と飲みに行く話をしてるんだが一緒に来ないか?」
「川島先生がご一緒なら行きます。」
「用心深いな、美雪は。」
ふと藤田の表情が緩んだ。
「当たり前ですよ。恨まれたくないですから。お話は以上でよろしいですか?」
「あぁ。」
「では失礼します。」
時計を見ればもう11時だ。
最後になってしまった鶴見さんの部屋に熱いおしぼりを持っていく。
「お待たせしました。」
「ありがとうございます。」
「背中、拭きましょうか?」
「あ、いや、それ、はっ。」
「そうですか。では後でおしぼり取りにきますね。」
「いや、そのっ、待ってください。」
「でも、男性の着替えを覗く趣味はないので…。」
「…背中、拭いてください。」
「わあ。」
藤田の背中はそんなに見たことはないが、如何にも国を守ってますって感じの背中だ。
広くてしっかり筋肉と傷の残った背中。
「篠崎さん。」
「はい?」
「あなたの写真を見て一目惚れしました。
俺と付き合ってもらえませんか?」
「……。」
あたしは黙々と背中を拭く。
「篠崎、さん?」
「鶴見さんのお気持ちはわかりました。
私は、いい人だなとは思いましたけど、申し訳ないんですが一目惚れまではいかなくて。」
「いいんですよ。そのお返事いただけただけで。」
「え?」
「しばらく入院することになりそうなので長期戦でいきます。」
母よ、どんな写真を渡したんだ?
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