カウントダウン

梨花

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12月18日

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タクシーの中で日付けが変わった。
「藤田先生は、あの人とは仲が良くないんですか?」
あたしはその人の名前は敢えて言わなかった。
「良くないも何も、あの人は俺の事認めてないからね。」
認めてない?
あたしが首をかしげると藤田は苦笑いして話し出した。
「俺の家は普通の家庭で、小学校から大学まで公立だった。
俺の父親は工業高校を出て建築会社で働いている人で、俺が大学に入る頃にようやく課長になったくらいの人だ。
母も高校を卒業して入った会社で父と知り合って、転勤の多い父についていく為に退職してっていうよくある普通の家庭で育った。
ただ俺が人より少し頭が良かったから親は無理して俺を塾に通わせてくれた。
俺もそれを知っていたから期待に応えるべく勉強を頑張った。
そして何も考えないで受けた国立大学の医学部に合格してしまった。
入学金や授業料は兎も角、それ以外の教科書代や教材費にビックリした。
それでも親は文句一つ言わずに行かせてくれた。
流石に申し訳なくて、奨学金を受けたんだけど当時奨学金を受けながら通ってる奴は少なくてからかわれたこともあった。
それに比べてあの人は生まれながらに医者の、それも有名スポーツ選手が行く整形外科の院長の息子で、小学校から私立にいってた人だ。
あの人の周りにはあの人の威光に縋る人が集まってた。」
「砂糖にむらがる蟻みたいでしょうね。」
あたしが言うと藤田は乾いた笑いを零す。
「そうかもな。
あの人は誰とも群れない俺に興味を持ったみたいで、何度か同級生を通じて食事に誘われたことがあったけど全て断った。
そうしたら急に俺に対して同級生がよそよそしくなった。」
「今時の小学生ならもっと陰湿でしょうね。」
「コメントはいらないな。」
また苦笑いだ。
「だって話きいてたら、あたしメロスになって走り出しそうになります。」
「わかったわかった…。

でそんな時に川島先生と喜多原先生と知り合った。
あの2人がいたから俺は大学を卒業して国家試験に合格できたといっても過言じゃない。」
「お二人は藤田先生にとっては恩人なんですね。」
「うん。
だからね、美雪。」
「はい?」
「もう少しだけ俺の話きいて欲しい。」
「…どこであのお二人が恩人なのと、藤田先生の話を聞くのが繋がるんですか?」
「この間、美雪と話をしてから俺は美雪に話しかけるきっかけを掴めないでいた。
喜多原先生が美雪を着飾ってくれて、川島先生が機会をつくってくれた。
だから。」
今日だけ、だ。
いつも見せてくれない藤田の顔が見られたから。
「わかりました。」
「泊まる用意してきてくれる?」
「…はい。」
何を用意したらいいか考えているうちにあたしのアパートに着いた。
急いで部屋に戻る。
あたしはクラッチバッグの中身を通勤用のバッグに移し替える。
小ぶりのボストンバッグに着替えをとりあえず3日分とパジャマと化粧品と。
荷物を抱えてドレスのまま出てみると藤田がいた。
黙って藤田はあたしのボストンバッグを手にした。
あたしも黙ってされるままになる。

タクシーに戻り、藤田のマンションに着くまであたしたちは黙ったままだった。
あたしのアパートまでの道のりとは全然違っていて。
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