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ランチの時間です。
視察なんだか何なんだかわからない行列が去り、しばらくするとお昼になった。
あたしは休憩室のテーブルを拭きお茶の用意をした。
「失礼します。」
入ってきたのは30代後半ぐらいのショートカットの見るからに活動的な女性だった。
「こんにちは、市川です。」
その人は淡いオレンジのブラウスに紺のパンツスーツ姿だった。手を振ってあたしに駆け寄る。
「初めまして、斉藤です。」
中学生のお子さんがいるとは思えない雰囲気だ。
「いろいろ事情は久瀬にきいたわ。」
「はあ…。」
久瀬さんを呼び捨て…。
「斉藤は旧姓で久瀬はあたしの夫なの。」
「職場恋愛だったんですか?」
「そう。あたし結婚前は営業部にいて、当時営業部長の秘書だった久瀬に口説かれたの。」
「わぉ。」
凄いっ。
「ちょっと匿って。」
バタバタと足音がして入ってきたのは大樹だった。
「失礼しまーす。」
フロアに現れたのは見たことはあるけどどこの部署かわからない女子5人。
「はい?」
「アメリカ支社の広報課長さん、こちらにいらっしゃいませんか?」
大樹、追っかけられてたのか…。
「さっき来たけど副社長室に行くって言ってたよ?」
「そうですかー。」
「残念ー。」
口々に言って去っていった。
「タバコ1本吸えねぇ。」
「代わりに吸ってこようか?」
「深和が吸いたいだけだろ。しばらく我慢しろ。」
「はいはい。」
あたしは置きっ放しの弁当箱を片付ける。
「仲いいのね。」
斉藤さんがニヤニヤ笑う。
「仲がいいっていうのはこういうことを言うんですよ。」
いきなり腰を抱き寄せられてバランスを崩し、あたしは大樹の膝に座るような格好になった。
「何するのっ。」
付き合ってた頃ですらこんなことしなかったのに!
あたしは大樹の頭を持っていた弁当箱で叩いた。
「いてっ。」
腰から手が離れてあたしは立った。
斉藤さんはお腹を抱えて笑っている。
「コーヒー入れてきます。」
「ううん、あたしが入れてくるわ。」
斉藤さんが立ち上がる。
「でも。」
「足、まだ痛いんでしょ。」
そこまで知ってるのか…。
「お願いします。」
斉藤さんがいなくなってあたしは弁当箱を自分のデスクの引き出しにいれ、携帯をとって戻ってきた。
「なあ、深和?」
「市川です。」
答えると不機嫌そうな顔をする。
「2人だけの時ぐらいいだろ。」
「職場ではダメです。」
「今日、定時で上がれる?」
「うん。」
「ちょっと買い物付き合って欲しいんだけど。」
「お迎えが来るので無理です。」
「そこをなんとかっ。」
「ちょっと待って。電話したいの。」
「わかった。」
あたしは発信履歴から見つけ出した相手に電話をかける。
「こんにちは、昨日はお世話になりました、深和です。」
『こんにちわ。ちょうど電話をしようかと思ってたところだった。』
「なんだ、兄貴じゃないか。」
横でぶつぶつ不貞腐れている。
電話の向こうで笑い声がする。
「今休憩室にいるんですが、あたしの休憩時間を邪魔しに来てて困ってます。」
『あいつがこっちにいる間のお世話はよろしく頼むよ。』
「全面的には無理です。
あ、土曜日の件、相手が判明したそうです。」
『うん、警察の人から僕にも電話がきたよ。とりあえず1つはカタがついてよかった。』
「はい。とりあえずその報告をと思いまして電話しましたので。」
『電話ありがとう。ちょっとこれから出ないといけない仕事があるからごめんね。』
「お忙しいところありがとうございます。では失礼します。」
『ではまた。』
電話を切ると斉藤さんが座っていた。
コーヒーが3つテーブルにおかれている。
「彼氏の前で男に電話なのー?」
「弁護士で高橋さんのお兄さんですっ。」
揶揄われてついムキになってしまった。
「そうだ、引き継ぎの事だけど。」
「資料、こちらに纏めました。何か不足があれば教えてください。」
あたしは資料を入れたクリアホルダーを渡す。
「午前中でやったの?」
「先週から仕事の合間にやってました。いつどこにとばされるか分からなかったので。」
「あんなので市川さんの首が飛ぶような会社ならあたしとっくにやめてるわ。」
あんなの…。
「これは後で読ませてもらうわね。ありがとう。何かあれば社内メールで送るわ。」
「はい、お願いします。」
あたしは自分の名刺の裏に社内メールのアドレスを書いて渡すと斉藤さんも同じようにアドレスを書いて渡してくれた。
そして斉藤さんは庶務課に戻っていった。
「深和さんー。タバコ吸いたい。」
子供か、こいつは!
休憩室を片付ける。
時計は45分。今からなら余裕で行けるし化粧も直せる。
ちらっと営業で帰ってきている人がいないかみると都合のよさそうなのがいた。
「相原、ちょっとタバコ吸いに行かない?」
相原はフロアの時計に目をやり
「いいけど。」
「ここにいるデカイの連れてって。」
相原はデカイのをみると苦笑した。
あたしは相原とデカイのが出て行くのを見てから携帯とタバコを持って喫煙室に向かった。
大樹は高校の時からあまり身長は変わっていない。
しかし高校の時にぐんと伸びてあたしと別れる頃にはクラスでもかなり背が高かった。
そんな大樹は社会人になってからも身長で少し高いために目立つ。
だから喫煙室でも目立つ。
見た目が目立つし、アメリカ支社から来た日本人という意味でも目立つ。
なので喫煙室に入ってからあたしは大樹と一言も話さないまま時間が過ぎた。
あたしは篤志に迎えの時間変更依頼のメールを打ってそこを出た。
化粧を直している間に了解のメールがきて、あたしは大樹の携帯に篤志の迎えの時間を変えてもらったことをメールして仕事についた。
あたしは休憩室のテーブルを拭きお茶の用意をした。
「失礼します。」
入ってきたのは30代後半ぐらいのショートカットの見るからに活動的な女性だった。
「こんにちは、市川です。」
その人は淡いオレンジのブラウスに紺のパンツスーツ姿だった。手を振ってあたしに駆け寄る。
「初めまして、斉藤です。」
中学生のお子さんがいるとは思えない雰囲気だ。
「いろいろ事情は久瀬にきいたわ。」
「はあ…。」
久瀬さんを呼び捨て…。
「斉藤は旧姓で久瀬はあたしの夫なの。」
「職場恋愛だったんですか?」
「そう。あたし結婚前は営業部にいて、当時営業部長の秘書だった久瀬に口説かれたの。」
「わぉ。」
凄いっ。
「ちょっと匿って。」
バタバタと足音がして入ってきたのは大樹だった。
「失礼しまーす。」
フロアに現れたのは見たことはあるけどどこの部署かわからない女子5人。
「はい?」
「アメリカ支社の広報課長さん、こちらにいらっしゃいませんか?」
大樹、追っかけられてたのか…。
「さっき来たけど副社長室に行くって言ってたよ?」
「そうですかー。」
「残念ー。」
口々に言って去っていった。
「タバコ1本吸えねぇ。」
「代わりに吸ってこようか?」
「深和が吸いたいだけだろ。しばらく我慢しろ。」
「はいはい。」
あたしは置きっ放しの弁当箱を片付ける。
「仲いいのね。」
斉藤さんがニヤニヤ笑う。
「仲がいいっていうのはこういうことを言うんですよ。」
いきなり腰を抱き寄せられてバランスを崩し、あたしは大樹の膝に座るような格好になった。
「何するのっ。」
付き合ってた頃ですらこんなことしなかったのに!
あたしは大樹の頭を持っていた弁当箱で叩いた。
「いてっ。」
腰から手が離れてあたしは立った。
斉藤さんはお腹を抱えて笑っている。
「コーヒー入れてきます。」
「ううん、あたしが入れてくるわ。」
斉藤さんが立ち上がる。
「でも。」
「足、まだ痛いんでしょ。」
そこまで知ってるのか…。
「お願いします。」
斉藤さんがいなくなってあたしは弁当箱を自分のデスクの引き出しにいれ、携帯をとって戻ってきた。
「なあ、深和?」
「市川です。」
答えると不機嫌そうな顔をする。
「2人だけの時ぐらいいだろ。」
「職場ではダメです。」
「今日、定時で上がれる?」
「うん。」
「ちょっと買い物付き合って欲しいんだけど。」
「お迎えが来るので無理です。」
「そこをなんとかっ。」
「ちょっと待って。電話したいの。」
「わかった。」
あたしは発信履歴から見つけ出した相手に電話をかける。
「こんにちは、昨日はお世話になりました、深和です。」
『こんにちわ。ちょうど電話をしようかと思ってたところだった。』
「なんだ、兄貴じゃないか。」
横でぶつぶつ不貞腐れている。
電話の向こうで笑い声がする。
「今休憩室にいるんですが、あたしの休憩時間を邪魔しに来てて困ってます。」
『あいつがこっちにいる間のお世話はよろしく頼むよ。』
「全面的には無理です。
あ、土曜日の件、相手が判明したそうです。」
『うん、警察の人から僕にも電話がきたよ。とりあえず1つはカタがついてよかった。』
「はい。とりあえずその報告をと思いまして電話しましたので。」
『電話ありがとう。ちょっとこれから出ないといけない仕事があるからごめんね。』
「お忙しいところありがとうございます。では失礼します。」
『ではまた。』
電話を切ると斉藤さんが座っていた。
コーヒーが3つテーブルにおかれている。
「彼氏の前で男に電話なのー?」
「弁護士で高橋さんのお兄さんですっ。」
揶揄われてついムキになってしまった。
「そうだ、引き継ぎの事だけど。」
「資料、こちらに纏めました。何か不足があれば教えてください。」
あたしは資料を入れたクリアホルダーを渡す。
「午前中でやったの?」
「先週から仕事の合間にやってました。いつどこにとばされるか分からなかったので。」
「あんなので市川さんの首が飛ぶような会社ならあたしとっくにやめてるわ。」
あんなの…。
「これは後で読ませてもらうわね。ありがとう。何かあれば社内メールで送るわ。」
「はい、お願いします。」
あたしは自分の名刺の裏に社内メールのアドレスを書いて渡すと斉藤さんも同じようにアドレスを書いて渡してくれた。
そして斉藤さんは庶務課に戻っていった。
「深和さんー。タバコ吸いたい。」
子供か、こいつは!
休憩室を片付ける。
時計は45分。今からなら余裕で行けるし化粧も直せる。
ちらっと営業で帰ってきている人がいないかみると都合のよさそうなのがいた。
「相原、ちょっとタバコ吸いに行かない?」
相原はフロアの時計に目をやり
「いいけど。」
「ここにいるデカイの連れてって。」
相原はデカイのをみると苦笑した。
あたしは相原とデカイのが出て行くのを見てから携帯とタバコを持って喫煙室に向かった。
大樹は高校の時からあまり身長は変わっていない。
しかし高校の時にぐんと伸びてあたしと別れる頃にはクラスでもかなり背が高かった。
そんな大樹は社会人になってからも身長で少し高いために目立つ。
だから喫煙室でも目立つ。
見た目が目立つし、アメリカ支社から来た日本人という意味でも目立つ。
なので喫煙室に入ってからあたしは大樹と一言も話さないまま時間が過ぎた。
あたしは篤志に迎えの時間変更依頼のメールを打ってそこを出た。
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