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ある日のこと、小屋に人が訪ねてきた。


「久しぶりだな、アーク」


燃える炎のような赤い髪の女が抱き着いてくる。


「な、なんですか! あなたは!」


「俺はダリア! 竜人国の王女だ! よろしくな!」


ダリアはそういうとルシアに挨拶をした。彼女は戸惑いながらも返事をする。


「こ、こちらこそ……」


「それで、何の用だ?」


俺は尋ねるとダリアは答えた。


「実はお前たちに頼みがあって来たんだ」


「頼み?」


俺は首を傾げた。彼女がわざわざ頼みにくるとは余程のことなのだろうか……? するとダリアは真剣な表情で話し始めた。


「最近、竜人国とエルフの国の国境付近で魔獣が現れるようになったんだ……」


魔獣というのは普通の動物とは異なる存在だ。基本的に魔力を帯びた生物のことを指しており、中には強力なものも存在しているという……しかし竜人国やエルフの国には強力な結界が張られているため滅多に現れることはないはずだ。


「それは本当なのか?」


「ああ、本当だ。それで俺たち竜人国は独自に魔獣の調査を進めていたんだが……その中にとんでもないことが分かったんだ」


「とんでもないこと?」


ダリアは重々しい口調で言う。


「実は魔獣の正体は何者かによって生み出された生物だったことが判明した……」


俺は驚きのあまり言葉を失う。そんなことがありえるのか……?


「それで俺たちは対策を練るためにお前たちに協力を頼もうと思ったんだ! 力を貸してくれるか?」


ダリアが尋ねてくる。俺は少し考え込んだ後、頷いた。


「分かった、協力しよう」


「おお、ありがとうな! アーク!」


ダリアは嬉しそうに笑うと俺の手を握ってきた……彼女の手は小さく滑らかで温かかった……。そして俺たちは竜人国へと向かうことにしたのだった……。





竜人国へとたどり着いた俺たちを待っていたのは壮観な光景だった。巨大な城壁がそびえ立ち、その向こうには石造りの町並みが広がっている……整然とした街並みには様々な種族の人々がいた。ドワーフやエルフ、そして獣人族といった多様な人種が暮らしているようだ。


「すげぇ……」


俺は思わず呟いた……これほどまでに多様性に富んだ国を見たのは初めてのことだったからだ。


「ようこそ!竜人国に!」


ダリアが胸を張って言う。すると彼女の部下らしき女性が駆け寄ってきた。


「ダリア様! お戻りになられたのですね!」


「おお、お前たち! 出迎えご苦労!」


ダリアは嬉しそうに笑う。どうやら彼女は慕われているようだ。


「ところで、その人たちは……?」


女性がこちらを見て言う。俺は名を名乗ると簡単に説明した……すると女性は納得したように頷くと言った。


「なるほど……私はこの国の兵士長を務めているイレーヌと申します」


「よろしく、イレーヌ」


俺は手を差し出すと握手を交わした。彼女も快く応じてくれる。


「あなた方が魔獣を退治してくれるのですね? 頼りにしております!」


イレーヌは期待に満ちた眼差しを向けてくる。俺は大きく頷いた。


「任せてくれ……絶対に魔獣を退治してみせるよ」


俺たちは竜人国の案内のもと、魔獣が出現したという場所に向かうことにした……どうやらその場所に行けば何か分かるかもしれないらしい。しばらく歩くと目的の場所へとたどり着いたようだ……そこには鬱蒼とした森が広がっているだけだったが、よく観察すると妙な気配があることに気づくことができた。


「あそこですね……」


ダリアが指差す方向には大きな岩山があった。その麓に魔獣は生息しているらしい。


「よし、行こう……」


俺たちはその岩山を目指して歩き始めた……すると突然、ルシアが大声を上げる。


「危ない!」


その言葉と共に巨大な爪のようなものが振り下ろされてきた! それはルシアの魔法によって防がれたものの、その衝撃で地面にクレーターができて土煙が巻き起こる……そして姿を現したのは大きな熊のような生物だった……!


「こいつが魔獣か……!」


俺は剣を抜くと構える。すると魔獣は咆哮を上げた!それと同時にイレーヌが叫ぶ!


「来ます!」


魔獣が飛びかかってくる……俺はそれを正面から受け止めた!凄まじい衝撃と共に足が地面にめり込んでいく……だが、なんとか耐えきることができた……! そのまま剣を振り下ろすと魔獣の体に傷をつけることに成功した。しかし致命傷にはならなかったようで、怒り狂ったように暴れ回る……!そして今度は体当たりを仕掛けてきた!咄嵯に防御するが吹き飛ばされてしまう……地面に叩きつけられてしまった。そこへ追撃の爪が振り下ろされる……!


「させません!」


イレーヌの放った魔法が直撃する……魔獣は怯んだ様子を見せた。すかさず追撃を与えると魔獣は大きく吠える……そして逃げるように森の奥に姿を消したのだった。


「ふぅ……」


俺は安堵の息をつくと立ち上がった。ダリアが言う。


「大丈夫か!? アーク!怪我はないか?」


「ああ、なんとかね……」


俺は苦笑いをしながら答える。するとルシアも駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか!?」


心配そうに顔を覗き込んでくる彼女に俺は微笑んだ。


「大丈夫だよ、ありがとう」


俺がそう言うと彼女は安心したように微笑む……そして俺たちは再び目的地へと歩き始めたのだった……。
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