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翌日、俺たちは授業を受けた後、午後からダンジョンに潜ることになった。


「初心者向けのダンジョンと言えど、油断は禁物です」


ダンジョンの中は迷路のようになっており、道が入り組んでいた。俺たちは慎重に進んでいくと、モンスターと遭遇する。それはゴブリンの群れだった。俺は剣を構えて戦闘態勢に入るが、エレナがそれを止めるように俺の腕にしがみつく。


「待って! ここは私たちに任せて!」


エレナは杖を構えると詠唱を始める。すると巨大な魔法陣が出現し、その中から炎の龍が現れた。


「《煉獄龍の咆哮》!!」


炎の龍はゴブリンたちに向かって飛んでいくと、大爆発を引き起こす。爆風によってゴブリンたちは吹き飛び、全滅した。


「やったね!」


エレナは嬉しそうに微笑む。俺はそんな彼女を頼もしいと思った。

その後も俺たちはダンジョンの中を進んでいき、遂に最深部まで到達した。そこには巨大な扉があった。おそらくこの先にボスがいると思われる。


「いくよ、デウスくん!」


エレナが扉を開けると、中には身の丈五メートルを超す巨大なゴーレムがいた。


「こいつはゴーレムか!? 初めて見るタイプだな……」


俺が驚いていると、エレナは杖を構えて呪文を唱え始めた。すると彼女の周りに幾つもの魔法陣が出現し、その中から炎や風など様々な魔法が飛び出す。それらはゴーレムに命中したが、傷一つつかなかった。


「こいつは俺がやる」


俺は地面を蹴って、真正面からゴーレムに躍りかかった。そのあまりの速さに、ゴーレムはまったく反応できなかった。


ズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


俺の拳がゴーレムの胴体にめり込んだ瞬間、凄まじい衝撃が伝わってきた。俺はそのまま力任せに押し込むと、ゴーレムはバラバラに砕け散った。


「「「し、瞬殺した~~~~っ!?」」」


エレナとソフィア先生は驚きのあまり叫んだ。


「ちょっとやり過ぎちゃったかな……?」


俺は反省しながらも、ボスモンスターを倒したことに満足感を覚えていたのであった。


「さあて、次はどんなボスかな?」


俺たちは上機嫌に次のダンジョンに向かった。


「グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」


目の前に現れたモンスターは獅子の頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ怪物だった。


「キマイラロード……っ! 普通ならAランク冒険者数人がかりでようやく倒せる魔物よ! どうしてこんなところに……」


エレナは震えながら言う。するとキマイラロードは俺に向かって突進してきた。まともに喰らえば、鎧を着こんだ大男ですら数十メートルは吹き飛ばされる強烈な突進だ。しかし、俺にはその程度の突進など止まっているようにしか見えなかった。


「よっと」


俺はキマイラロードの巨体を指一本で受け止める。


「「「と、止めたあああああああっ!?」」」


「~~~~~~ッ!?」


焦燥を露わにするキマイラロードは、俺から逃れようと暴れ出す。


「逃がさないよ!」


俺はキマイラロードの尻尾を摑むと、ジャイアントスイングの要領で振り回した。そして壁へと叩きつけると、追い打ちをかけるように拳を何度も叩き込む。巨大な獅子の顔は跡形もなく粉砕されてしまい、残っていた山羊の頭も完全に潰れてしまったのだった。


「これでよしっと……」


俺は動かなくなったキマイラロードを見下ろして満足そうに呟く。


「わ、我々が、数十人がかりでも苦戦するキマイラロードが……こんなに簡単に倒されるなんて……」


ソフィア先生は呆然として言った。


「デウスくん、やっぱり凄いね!」


エレナは目を輝かせて言う。俺は少し照れくさくなって頭をかいた。


「何あれ?」


キマイラロードを倒すと、部屋に宝箱が出現した。


「これはダンジョンのボスを倒したご褒美です。中には貴重なアイテムが入っていることがありますよ」


ソフィア先生の説明を聞きながら、俺は宝箱を開ける。中には黄金の指輪が入っていた。


「これはソロモンの指輪ですね! あらゆる魔物を従えることができる素晴らしいアイテムです!」


「それは凄いね!」


俺たちは歓喜する。その後、俺たちはダンジョンを後にしたのであった。
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