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翌日、教室に入ると既に来ていたカイル殿下に声をかけられた。


「おはよう、フィーナ」


「おはようございます、カイル殿下」


挨拶を交わすと私は自分の席に座った。すると彼は隣に座ってきた。


「昨日は楽しかったよ、ありがとう」


「こちらこそありがとうございました」


私たちはお互いにお礼を言った後、微笑んだ。そしてその日の授業が始まったのだが……


(どうしよう……)


私は悩んでいた。昨日からずっと胸が苦しいのだ。原因は分かっている。それは間違いなくカイル殿下のことだ。彼のことを考えると胸がドキドキして苦しくなってしまうのだ。


「フィーナ?」


名前を呼ばれてハッと我に返った。目の前にはカイル殿下がいた。どうやら考え事をしているうちにぼんやりしていたらしい。


「大丈夫かい? 体調が悪いなら医務室に行った方が……」


「大丈夫です! お気遣いいただきありがとうございます!」


私は慌てて返事をした。するとカイル殿下は不思議そうな顔をしたがそれ以上は何も言ってこなかったのでホッとした。


(そうだ、授業に集中しなきゃ……)


私は自分に言い聞かせるように心の中で呟いた後、教科書を開いた。


「フィーナ様、今日の放課後空いていますか?」


昼休みにマリアが話しかけてきた。私は少し考えた後、返事をした。


「ええ、特に予定はありませんけど……」


「では、一緒に図書館に行きませんか? お勧めの本があるんです」


「分かりました、ご一緒しましょう」


私が返事をすると彼女は嬉しそうに微笑んだ。そして私たちは食堂へと向かった。その後、昼食を食べ終えると図書館へ向かった。中に入ると沢山の本棚があり圧倒されたが、マリアは迷うことなく目的の場所にたどり着いた。そして一冊の本を取り出すと私に見せてくれた。


「この小説が最近話題になっているんですよ」


それは恋愛小説だった。どうやら貴族令嬢と平民の男性の恋物語らしい。私は興味深そうにその本を手に取った。パラパラとページをめくっていくうちにどんどん引き込まれていく感じがした。


(カイル殿下もこういう小説を読むのかしら……)


ふとそう思った瞬間、顔が熱くなるのを感じた。慌てて首を横に振る。いけない、何を考えているんだろう。


「どうかしましたか?」


私の様子がおかしいことに気づいたのか、マリアが尋ねてきた。私は慌てて首を振った。


「な、なんでもないですよ」


「そうですか……」


彼女は少し不思議そうな顔をした後、話題を変えてくれたので助かった。その後も私たちは本を読んだり感想を言い合ったりした後、帰路についたのだった。

その日の夜、私はベッドに寝転がりながら小説の続きを読んでいた。主人公の女性は男性に恋をしているのだがなかなか想いを伝えられずに悩んでいた。ある日、思い切って男性に告白することを決めた彼女は勇気を出して想いを告げるのだが……


「待って……!」


私は思わず叫んでしまった。このままでは小説の展開がまずい方向に進んでしまう気がしたからだ。しかし、既に手遅れだったようで主人公は男性から拒絶されてしまった。そして彼女は涙を流しながらその場を去るのだった。


(可哀想……)


私は切ない気持ちになりながらページをめくった。するとまた新たな展開があった。なんとその男性は実は主人公のことを好きだったのだ。主人公は驚きながらも喜び、二人は幸せになるのだった。


「よかった……」


私は安堵のため息をついた。そして再び読み始めたのだが、途中で目が疲れてしまったので本を閉じた。時計を見ると既に夜中の2時になっていた。そろそろ寝ないと明日に響いてしまうだろう。だがなかなか寝付けなかった私は仕方なく続きを読むことにした。今度は登場人物の恋愛事情や心情描写を中心に読んでいくことにしたのだが……


(カイル殿下もこういう本を読むのかしら……)


私はまたもやカイル殿下のことを考えていたことに気づきハッとした。


(だめよ……何を考えているの……!)


私は慌てて頭を振ったが、なかなか消えてくれなかった。それどころかどんどん意識してしまい、胸がドキドキしてくるのを感じた。


「はぁ……」


私はため息をつくと本を閉じて机に置いた。これ以上読んでいても意味がないような気がしたからだ。それよりも眠気が出てきたので早く寝ることにしようと思った時、ふとある考えが頭に浮かんだ。


(カイル殿下のことを考えながら読めば少しは小説に入り込めるかも……)


そう思った途端、再び鼓動が激しくなった気がしたが気にしないことにした。そうして私は頭の中でカイル殿下のことを考えながら再び本を読み始めたのだった。
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