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ある日のこと、俺たちは王都に呼び出されていた。何でも、国王から直々に依頼があるらしい。


「久しぶりだな」


「お久しぶりです、陛下」


俺たちは跪いた。


「ふむ、お主がカイトか……なるほど、良い目をしている」


「ありがとうございます」


俺は褒められて少し照れた。


「今日はお前たちに頼みがあって呼んだのだ」


「何でしょうか?」


「実は我が王宮に魔族が潜り込んでいるという情報が手に入ったのだ」


「なっ!?」


俺とフィーナは驚く。まさか魔族が王宮に潜んでいるとは……


「そこで、お主たちにその魔族を見つけ出して欲しいのだ」


「分かりました。お任せください」


「うむ、期待しているぞ」


こうして、俺たちは王宮に潜む魔族を探すことになったのだった。

王宮内を探索していると、俺は妙な気配を感じ取った。


(これは……魔族の気配か?)


俺はフィーナとリザに合図を送る。二人とも頷くと、慎重に進んでいった。


「カイト様、あそこが怪しいですね」


フィーナが指差したのは一つの部屋だった。


「よし、入ってみよう」


俺たちは警戒しながら中に入った。そこには一人の男がいた。


「ふはははは! よく来たな!」


男は高笑いしている。こいつが魔族に違いないだろう。


「お前が王宮に潜んでいた魔族か?」


「いかにも、我は上級魔族のバエル。この城の人間を皆殺しにする前に、お前たちを血祭りにあげてやろう!」


「やれるものならやってみろ!」


俺は剣を抜くと、バエルに向かっていった。しかし、バエルは余裕の笑みを浮かべていた。


「人間風情が我に敵うと思っているのか?」


「試してみれば分かるさ」


俺は【縮地】を使うと、一瞬で背後に回り込む。そしてバエルの体を袈裟斬りにした。


「ふはは! そんな攻撃では我を倒すことはできん!」


バエルは攻撃を受けても平気そうだった。よく見ると、斬られた箇所が再生していく。


「カイト様! 離れてください!」


フィーナの声に反応して、俺は後ろに飛び退く。その瞬間、バエルの体から禍々しい魔力が溢れ出した。


「我の真の力を見せてやろう!」


バエルの体はみるみるうちに巨大化していく。そして、皮膚は黒く変色していった。さらに翼が生え、尻尾も生えてくる。その姿はまさに悪魔だった。


「グォオオッ!!」


バエルは咆哮を上げると、口から黒い炎を吐き出した。


「ふん!」


俺は剣に魔力を込めると、炎を切り裂いた。


「カイト様! 援護します!」


フィーナは杖を構えると、呪文を唱え始めた。リザは攻撃魔法を唱えている。


「【火炎剣】!」


「【氷結世界】!」


バエルの体は徐々に凍り付いていく。しかし、すぐに再生してしまった。どうやら魔法耐性を持っているようだ。


「グォオオッ!!」


バエルは再び咆哮を上げると、翼を羽ばたかせて飛び上がる。そして空中で静止した。


「【吹雪の槍】!」


「【火炎の渦】!」


リザとフィーナは上級魔法を同時に放った。しかし、バエルの体に触れた瞬間、魔法が掻き消されてしまう。


「無駄じゃ! 貴様らの魔法など通用せぬわ!」


「きゃあっ!?」


「あうっ!?」


二人は吹き飛ばされて壁に激突した。意識を失っているようだ。


「これで邪魔者はいなくなったな」


バエルは舌なめずりしながら近づいてくる。俺は剣を構えると、バエルに斬りかかった。


「無駄だというのが分からぬのか?」


俺の攻撃はあっさり受け止められてしまった。そのまま腕を掴まれる。


「ふんっ!」


俺は力任せに引っ張ると、バエルを投げ飛ばした。


「ぐっ!?」


バエルは空中で体勢を立て直すと、着地する。その顔は怒りに満ちていた。


「貴様……生きて帰れると思うなよ?」


バエルは翼を広げると、こちらに向かってくる。俺は剣を構えると、迎え撃つ準備をした。


「【闇槍】!」


バエルの指先から黒い槍が飛んでくる。俺はそれを剣で弾いた。そして一気に距離を詰める。


「ぬぅ……小癪な真似を……」


バエルは口から黒い炎を吐くと、俺に向かって放つ。俺はそれを避けずに体で受け止めた。


「なっ! 馬鹿な!?」


「うぉおおっ!」


俺は剣を振りかぶると、バエルの体を袈裟斬りにする。


「グォオオッ!!」


バエルは悲鳴を上げた。傷口からは大量の血が流れ出ている。


「まだだ……我は……こんなところで死ぬわけには……」


バエルは傷口を押さえながら後退していく。俺は一気に距離を詰めると、バエルの体を切り刻んだ。


「グォオオッ!!」


バエルの断末魔の叫びが響き渡る。やがてバエルは倒れた。


「はぁ……はぁ……」


俺は肩で息をしていた。さすがに上級魔族だけあって、強敵だったな。


「カイト様!」


「お兄ちゃん……!」


フィーナとリザが駆け寄ってくる。二人とも無事のようだ。俺は安心すると、その場に座り込んだ。


「お疲れ様です、カイト様」


「かっこ良かったです」


二人は笑顔で迎えてくれる。俺は二人を抱きしめると、優しく頭を撫でた。


「さあ、帰ろうか」


「はい!」


「うん……」


こうして、俺たちは王宮を後にしたのだった。
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