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ある日のこと、領主館の前に一台の馬車が止まる。そこから降りてきたのは俺の兄であるルーファス・フォン・コーネリアだった。彼は俺を見つけると声をかけてくる。


「久しぶりだな」


「何の用だ? 家族の縁は切ったはずだが?」


「……そのことだが、父上がお前を連れ戻すように頼まれた」


「何だって?」


「父上がアーガスでのお前の活躍を耳にしてな、ぜひ戻ってきて欲しいそうだ」


なんという手のひら返しだ。俺が追放された時も全く心配しなかったくせに……


「嫌だと言ったら?」


「力ずくでも連れていくまでだ」


馬車から屈強な男たちが降りてくる。彼らは武器を持っていた。


「ふん、力ずくで連れて行くだと? 面白いじゃないか……」


俺は剣を抜くと構える。それを見た男たちは一斉に襲いかかってきた。

まずは一人目の男が斬りかかってくる。しかしその動きは非常に遅かったので簡単に避けることができた。次に二人目が攻撃してきたがこれも躱せる程度だった。最後の男は斧を持っているようだが動きが非常に遅く隙だらけだったのでそのままカウンターで倒した。あっという間に三人を倒した俺を見てルーファスは驚いた表情を浮かべる。


「お前……強くなったな……」


「当たり前だ、昔の俺と一緒にするなよ?」


「……ならば俺と勝負しろ!」


「いいだろう……受けて立つ!」


こうして俺とルーファスの決闘が始まった。

領主館の前で俺とルーファスは睨み合う。周りには野次馬が集まり、どっちが勝つか賭け事までしていた。


「行くぞ!」


ルーファスはそう言って斬りかかってきた。その動きは非常に速く無駄がない。流石は騎士団長といったところか……だが俺には通用しない! キンッという音と共に俺の剣が奴の剣を弾く。そしてそのままルーファスの首元に剣を突きつけた。


「俺の勝ちだな」


「……どうやらそのようだな……」


ルーファスは悔しそうにしながらも、どこか満足そうな顔をしているように見えた。


「だが父上はどんなことをしてもお前を連れ戻すつもりだぞ?」


「あのクソ親父に伝えておいてくれ。俺を連れ戻したかったら、自分の足で来いってな!」


「……了解した」


そう言い残してルーファスは去って行った。面倒なことになったな……まあそのうち諦めるだろう……そんなことを思いながら俺は領主館へと戻ったのであった。
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