【完結】拗ねていたら素直になるタイミングを完全に見失ったが、まあいっか

ムキムキゴリラ

文字の大きさ
7 / 40

7. 光陰矢の如し

しおりを挟む
 それからすぐにドクターが到着して、ソフィアの治療を行った。皇太子も急いで駆けつけた。
「どうかな?」
「殿下、申し上げます。的確な応急処置のため、最悪の事態は免れました。今は落ち着いておられますが、予断は許されません」
「そうか、わかった。ドクター、これは何があったと思う?」
「確実なことはわかりませんが、呪いをお受けになられた可能性があります」
 呪いは魔法を使える人が行う犯罪の中で、最もポピュラーなものの一つだ。
「ドクター、このことはまだ内密にね。何かあったら連絡させるよ。いいね、サーシャ」
「はい。かしこまりました」
「では、私はこれで失礼いたします」
 ドクターは丁寧な動作で立ち去った。
「最近何か変わったことは?」
「特にはありません」
「心当たりは?」
「わかりません。お仕事のことかもしれませんが……」
「ここにいないことが多いからね。サーシャ狙いかもしれない」
 ラインハルトは何とか心を落ち着かせようとした。
「はぁ、ちょっと二人にしてもらっていい?何かあったらすぐ呼ぶから」
「かしこまりました。失礼いたします」
 サーシャは気丈そうにしている。ラインハルトはしっかりしているなと感心した。
 ラインハルトはソフィアが寝ているベッドに近づいた。
「ソフィア……」
「私はだいじょうぶだから、泣くな」
 ソフィアはうっすら目を開けた。
「泣いてない」
「そうか」
「起きてたんですね」
「だから、大丈夫だ」
 何が大丈夫なのかわからなかった。ソフィアの顔は真っ青になっている。
「ずっとここにいたい」
「仕事があるだろう」
「ここでするから」
「いやすぎる」
「じゃあ、朝まではここに居る」
「しかし」
「居るから」
「……そう」
 ソフィアはラインハルトが時折頑固になると知っていたため、頑固ムーブだなコレと諦めた。
「手握ってもいい?」
「つぶすかもしれないよ」
 私はくるみもメロンも潰せると嘯いた。ラインハルトは本当かな?と笑った。そして、学生時代はりんごを潰せると言っていたことを思い出した。ラインハルトにとってあまりいい思い出ではない。
「ソフィア、潰れませんよ。私はあなたより大きくなったんだ」
 だからなに?それ関係ある?とソフィアは不審そうな顔をした。
「えーと、その、もう少し頼ってほしい。私も成長したんです」
「……そうか、そうだね」
 5年、否、ソフィアが卒業してからあまり会っていないため、その期間を入れると、8年間にもなる。その間、ソフィアはラインハルトに会う機会が激減していた。大きくなっているのも変わったところがあるのも当たり前かとソフィアは納得した。
「手を握ってもらっても?」
「はい」
 ラインハルトは快く右手を出した。
「おやすみ」
 ソフィアはおやすみ三秒というようにすぐ眠ってしまった。起きているのが辛かったのだろう。
 それから、ソフィアは丸三日寝込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

メイド令嬢は毎日磨いていた石像(救国の英雄)に求婚されていますが、粗大ゴミの回収は明日です

有沢楓花
恋愛
エセル・エヴァット男爵令嬢は、二つの意味で名が知られている。 ひとつめは、金遣いの荒い実家から追い出された可哀想な令嬢として。ふたつめは、何でも綺麗にしてしまう凄腕メイドとして。 高給を求めるエセルの次の職場は、郊外にある老伯爵の汚屋敷。 モノに溢れる家の終活を手伝って欲しいとの依頼だが――彼の偉大な魔法使いのご先祖様が残した、屋敷のガラクタは一筋縄ではいかないものばかり。 高価な絵画は勝手に話し出し、鎧はくすぐったがって身よじるし……ご先祖様の石像は、エセルに求婚までしてくるのだ。 「毎日磨いてくれてありがとう。結婚してほしい」 「石像と結婚できません。それに伯爵は、あなたを魔法資源局の粗大ゴミに申し込み済みです」 そんな時、エセルを後妻に貰いにきた、という男たちが現れて連れ去ろうとし……。 ――かつての救国の英雄は、埃まみれでひとりぼっちなのでした。 この作品は他サイトにも掲載しています。

【完結】追放された私、宮廷楽師になったら最強騎士に溺愛されました

er
恋愛
両親を亡くし、叔父に引き取られたクレアは、義妹ペトラに全てを奪われ虐げられていた。 宮廷楽師選考会への出場も拒まれ、老商人との結婚を強要される。 絶望の中、クレアは母から受け継いだ「音花の恵み」——音楽を物質化する力——を使い、家を飛び出す。 近衛騎士団隊長アーロンに助けられ、彼の助けもあり選考会に参加。首席合格を果たし、叔父と義妹を見返す。クレアは王室専属楽師として、アーロンと共に新たな人生を歩み始める。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

ある日、私は聖女召喚で呼び出され悪魔と間違われた。〜引き取ってくれた冷血無慈悲公爵にペットとして可愛がられる〜

楠ノ木雫
恋愛
 気が付いた時には見知らぬ場所にいた。周りには複数の女性達。そう、私達は《聖女》としてここに呼び出されたのだ。だけど、そこでいきなり私を悪魔だと剣を向ける者達がいて。殺されはしなかったけれど、聖女ではないと認識され、冷血公爵に押し付けられることになった。  私は断じて悪魔じゃありません! 見た目は真っ黒で丸い角もあるけれど、悪魔ではなく…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

公爵さま、私が本物です!

水川サキ
恋愛
将来結婚しよう、と約束したナスカ伯爵家の令嬢フローラとアストリウス公爵家の若き当主セオドア。 しかし、父である伯爵は後妻の娘であるマギーを公爵家に嫁がせたいあまり、フローラと入れ替えさせる。 フローラはマギーとなり、呪術師によって自分の本当の名を口にできなくなる。 マギーとなったフローラは使用人の姿で屋根裏部屋に閉じ込められ、フローラになったマギーは美しいドレス姿で公爵家に嫁ぐ。 フローラは胸中で必死に訴える。 「お願い、気づいて! 公爵さま、私が本物のフローラです!」 ※設定ゆるゆるご都合主義

【完結】醜い豚公爵様と結婚することになりましたが愛してくれるので幸せです

なか
恋愛
自分の事だけが大好きで 極度のナルシストの婚約者のレオナード様に告げた 「婚約破棄してください」と その結果お父様には伯爵家を勘当され 更には他貴族達にも私のあらぬ噂をレオナード様に広めまれた だけど、唯一 私に手を差し伸べてくれたのは 醜い豚公爵と陰で馬鹿にされていたウィリアム様だけだ 彼の元へと嫁ぐ事になり馬鹿にされたが みんなは知らないだけ 彼の魅力にね

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

偽聖女に全てを奪われましたが、メイドから下剋上します。

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
孤児のアカーシャは貧乏ながらも、街の孤児院で幸せに過ごしていた。 しかしのちの聖女となる少女に騙され、家も大好きな母も奪われてしまう。 全てを失い絶望するアカーシャだったが、貴族の家のメイド(ステップガール)となることでどうにか生き延びていた。 マイペースなのに何故か仕事は早いアカーシャはその仕事ぶりを雇い主に認められ、王都のメイド学校へ入学することになる。 これをきっかけに、遂に復讐への一歩を進みだしたアカーシャだったが、王都で出逢ったジークと名乗る騎士を偶然助けたことで、彼女の運命は予想外の展開へと転がり始める。 「私が彼のことが……好き?」 復讐一筋だったアカーシャに、新たな想いが芽生えていく。

処理中です...