恋愛小説2

七海美波

文字の大きさ
11 / 13

10

しおりを挟む
「目下の課題は、歴史クラブの無期限活動停止を解除してもらうことです」
 田井中部長が後藤先生に詰め寄る。
「そのためには、後藤先生もそれなりに動いてもらわないとなりません。まずは生徒会と交渉していただかないと」
「いや、オレは六嶋先生には逆らえない。何しろ、六嶋先生は、社会科主任だし、教育委員会にも顔がきくし、下手したらオレの首が危ない」
 後藤先生はしどろもどろに答えるだけだ。
「後藤先生はそんなに六嶋先生が怖いんですか? いい年した大人なのに、おかしくないですか?」
 あたしは、ずずいと身を乗り出す。後藤先生はジリジリと後ずさる。
「君たちにはわからないだろうがな、大人には大人の事情ってのがあるんだよッ!」
 後藤先生は、今にも泣き出しそうだった。
「そりゃ、人間が永遠に生きられるなら、目先の仕事や金のことも考えますがね、人間の寿命は有限なんですよ。だから、人生は太く短く生きれば良いんじゃないですか?」
 あたしは詰め寄った。
「そうは言っても、オレにだって、守るべき家庭もあるんだッ! 高校生の君らには、わからないだろうがな」
「なるほど。わっかりやした。要するに後藤先生って、自分の進退の問題ばかり気にする、つまんない大人なんですね。ガッカリです。あたしたち子供は、そんなつまんない理由で、反抗するのをあきらめたりしませんよ。納得できなければ、徹底抗戦する覚悟です」
「ウチも高橋も覚悟は同じです。後は後藤先生が覚悟を決めるだけですよ」
「でも、オレが仕事をクビになった日にゃ、嫁に殺される。包丁で八つ裂きにされちゃうよぉ」
 そこで、あたしはスマホを取り出し、後藤先生の奥さんに連絡をとってみた。
『そりゃ、浮気の調査なら、いくらでも協力するけどね、主人の失職がかかってくるとなると、話は別よ。こちらの生活もかかってくるしさ』
「生活のほうは、ご心配なく。後藤先生の田舎のご実家は、かなり広い土地を持ってらっしゃるので、失職したら離婚して慰謝料をふんだくってやればいいんです」
横から後藤先生が、「何を言ってるんだ? 慰謝料なんて払う気ないぞ」と叫んでるが、あたしはお構いなしだ。
『そうね。主人が浮気性なのは、もうバレバレだし、そのぐらいは請求させてもらっても良いわね』
「そんなぁ」
後藤先生は、ヘナヘナと膝から崩れる。それを、田井中部長が肩をつかんで、ズルズルと無理やり生徒会室に引きずっていく。
「さあ、善は急げ、ですよ。早速、ウチらのために働いてもらいまっせ」
後藤先生の抵抗もむなしく、あたしたちは田井中部長に手を貸して、後藤先生を生徒会室にひきずっていった。
「失礼します。歴史クラブです」
田井中部長が、「たのもうッ!」と言わんばかりの勢いで、生徒会室の扉を開けて入室するが、生徒会の面々は、「生徒だけで何しに来たんだ?」と言いたそうに、うさんくさそうにあたしたちを眺める。
「今日は顧問の後藤先生から話があります」
「いや、だから、その後藤先生はどこですか?」
「どこって、ここにいますやろ」
田井中部長が隣の後藤先生のいるはずの空間を指差すが、既に後藤先生の姿はない。忽然と消えていたのだ。
「あのダメ教師~! 土壇場で逃げくさったか~!」
「後藤先生がいらっしゃらないなら、残念ながら話はできませんねぇ。お引取りを」
おかっぱの生徒会役員が、冷たく言い放つ。
「待ってくださいッ! 後藤先生がいなくても、あたしが代わりに話します。それとも、あたしじゃ力不足だとお思いですか?」
「先生は、そうは思わないけどな。でも、生徒会顧問である先生が出てきた以上、歴史クラブも顧問を出すべきだと、先生は思うな」
大柄な太った男が出てくる。これが生徒会顧問、六嶋先生だ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。 その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。 全15話を予定

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)

MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。 しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。 ​母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。  その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。 ​純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。 交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

蝋燭

悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。 それは、祝福の鐘だ。 今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。 カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。 彼女は勇者の恋人だった。 あの日、勇者が記憶を失うまでは……

処理中です...