工藤くん、恋のバグは直せますか? 〜一夜の過ちから、同期の溺愛が始まりました〜

有明波音

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契約関係くらいが、ちょうど良い。

4.

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「婚約者のフリをするなら、一緒に住む方が色々と都合が良いだろ。つか、退去しなかったらあの元カレがいつまでも棲みつくと思うけど」
「う……それは、確かに……」


 別れるとなった途端、伊吹が異常な行動を見せている今。工藤の指摘にはぐうの音も出ない。


「あとはー……そうだな、人前では婚約者らしく親密に見せること。偽装であることは第三者に漏らさないこと。他には何かあるか?」
「え、ちょっと待って、会社ではどうすれば良いの?」
「会社では今まで通りで良いんじゃないか? この関係であることを見せなきゃいけない相手はいないだろ。まぁ、万が一、青山の元カレが会社にまで乗り込んできたら話は別だけど」


 会社に乗り込むなんて、想像しただけでまた寒気がする。流石にそこまではしないだろうと思っているけど……今の伊吹は何をするか、全く想像がつかない。
 それに、会社と外で見せ方を変えるなんて……そんな器用なこと、私にできるのかな? まぁ、工藤は難なくこなすんだろうけど。


「それで、青山の方で思いつくものある?」
「あ、あと……これは、あくまでも偽装だよね。だから……お互い、本気の恋愛はしないってことで」


 反応をちらりと見れば、「まぁ、確かにそうだな」と納得しているようだった。

 工藤は天才エンジニアで、いくつも会社を経営していて、おまけに素顔は驚くような美貌の持ち主だ。気遣いができて、さらにはベッドの上でとことん気持ち良くしてくれるという……。

 とにかく。同い年なのに、平々凡々な私とは生きている世界が違いすぎる。さっきの条件は……本気で好きにならないように、自分に言い聞かせているようなものだ。

 期限付きの、契約関係くらいがちょうど良い――。


「それじゃあ、決まりだな」


 工藤の言葉に、うんと頷く。もし何か不便があれば、その都度話し合おうとなった。


「契約書でも交わす?」
「さすが営業。まぁ念の為、内容まとめたやつを後でチャットアプリに送っとくよ」
「ふふ、まるで会議の議事録だね。でもありがとう、助かる」


 口約束では忘れてしまうかもしれないし、「言った・言わない」になりかねない。その辺りは同じ会社で働いているからか、やっぱり話していてもウマが合うなぁと思う。

 話もまとまりご飯も食べ終えた私たちは、一度工藤のマンションに戻ることにした。

 改めて、部屋の中を案内してもらうことになったからだ。ほとんど使ったことがないという客間があり、そこを私の部屋としてあてがってもらった。


「あ、工藤。当面一緒に住むなら、早めに荷物を取りに行きたいんだけど……今から行ってきても良い?」


 ボストンバッグに貴重品は詰めてきたし、伊吹に何か取られる心配は無い。
 とはいえ、自分が契約しているアパートな訳だから、変な使われ方をしていないか不安になっていた。『荷物を取りに行くついでに、家の状況を確認したい』というのが本音だ。


「んー……まだアイツがいるかもしれないし、明日、一緒に見に行こう。引越しの手配は、俺の方でやっておくよ」
「えっ、そこまでやってもらう訳には……私が伊吹から逃げるための引っ越しだから……」
「いや、一緒に住もうって提案したのは俺だし、こっちも色々巻き込むわけだからお互い様」


 確かに工藤は稼いでいると思うけど、何から何まで頼ってしまっては対等な関係が崩れてしまう気がする……。
 どう返そうかと考えていると、私が悩んでいるのが分かったらしい。工藤はある提案をしてくれた。


「じゃあ、俺が苦手なことで青山が得意なことをお願いしようかな」
「工藤が苦手で私が得意なこと? なんだろう」
「んー……そうだな、例えば、俺片付け苦手なんだよ」
「え? そう? 部屋、すごく綺麗に見えるけど」


 そう伝えると、工藤はリビングのとある扉を開けた。するとばさっと書類の束が落ちてきて、私もすかさず拾いに行く。


「ほら、棚の中にひとまず押し込んでるだけで、中は全然片付いてないし」

「片付けられないというより、忙し過ぎて片付ける時間がないんじゃない?」

「んー経営してる会社の書類はある程度分類してるんだけど……それ以外は後回しというか。その点青山のデスクは、まぁ固定席がないとはいえ……パソコン周りとか資料とか、いつも綺麗に整理整頓してるだろ?」
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