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11.15年前のこと side暁斗
3.
(なのに……なんで『アイとご飯に行ってきたら』なんて、突き放すようなことを言ったんだ?)
今日はぼーっとして包丁で怪我をしているし……様子が変だなと思うようになったのは、いつからだろうか。ここ最近の麗の様子を思い出しながら、考えを巡らせる。
(社長秘書の宮園がマーケティング部に来た時か? それとも、デートに行って元カレと会った時? ポートレート写真を撮った時も、最後に泣いてたし。なんなら、その後は宣言通り抱き潰したな……。
俺、本当は麗の嫌がることばかりやってたのか?)
大体、今日も知り合いのモデル事務所に電話はしたけれど、まさかアイが出てくるとは思いもしなかった。
アイと付き合ったのは事実だが、向こうから猛アタックしてきて、仕事で出会ったこともあり……止むをえず付き合うことにした。
3ヶ月くらい経ってから『暁斗と付き合っててもつまんない』と言い始め、アイから振ってきたのだ。
その3ヶ月の間も、アイが海外のショーに出たりで数回しか会っていないし……そもそも、俺は自分の部屋に入れたことすら無い。会うとしても、毎回外だった。
彼女にクルールのランジェリーを渡したこともあるが、それは彼女が商品を気に入ってくれたら、いずれ自身のSNSにでもアップしてくれるかもしれないというビジネス的な下心ゆえだった。
そう、最初から、そこまで強い想いがあって付き合った訳ではない。今思えば、雰囲気が少し麗に似ていて、その面影を追っていたのかもしれないとさえ思う。
そういう意味でもアイに対しては、罪悪感を感じていて無碍にもできなかった。
(俺が自分から強く求めるのは、後にも先にも麗だけなんだよな……。とはいえ、俺も麗にちゃんと気持ちを伝えないといけないな。もし、麗がこの関係を終わらせたいと言ったとしても)
ふーっと長い溜息をつく。
15年前の出来事もあって、自分の想いを伝えるのに慎重になっていたと改めて思う。
でも、外堀を囲って麗を閉じ込めても、彼女が幸せにならないのなら……手放さなければならないのかもしれない。
そう決めきれないまま、俺はこの日眠りについた。
***
「あ、宝来。お疲れ」
「あぁ、長谷か」
「何だよ~元気無さそうじゃん。何かあった?」
麗と別々に眠りについた次の日、俺はオフィスの休憩スペースで人事部長の長谷に声をかけられた。
たまたまこの時間には誰もいなかったが、長谷は小声で俺に問いかけた。
「濱本さんと何かあった? 上手くいってないの?」
「あのなぁ……お前、傷を抉るようなこと言うなよ」
「え? 本当に何かあったの? 別れるなら、俺が狙っても良い?」
「殺意沸いた」
「おー怖っ! でも、本当に良いと思うんだよなぁ濱本さん」
俺は長谷をギロッと睨みつけると、「冗談だよ、冗談!」と返された。麗は相変わらずモテるから、本当に気が抜けない。
そんな軽口を叩きながら、長谷にはクルールの代打モデルとしてアイが来たこと、麗とは距離が近付いたと思ったら突き放すような態度を取られることがあるなど……短時間に掻い摘んで話した。
長谷は少し考えるような仕草をしてから、口を開いた。
「これは友人としてのアドバイスな。暁斗、お前、ちゃんと濱本さんに『好き』とか『愛してる』って伝えた?」
「いや……15年前に告白して以来、ちゃんと言えてない」
「ハハッ! めちゃくちゃ拗らせてるじゃん! いやーあの鬼上司・宝来暁斗がね。面白いから、やっぱりアドバイス辞めようかな?」
「こら、面白がるな」
長谷は腹を抱えて、涙を流しながら笑っている。
「ごめん、面白すぎて。でも、それじゃない? 濱本さんを不安にさせてる理由は」
「……でも、麗は『恋愛をすっ飛ばして結婚したい』って最初に言ってたんだぞ? 『俺はずっと好きでした』なんて、本当は下心があったことを伝えたら、引くんじゃないか?」
感想 3
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