副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

有明波音

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澪との出会い ー飛鳥sideー

2.

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別のフロアに行くと、ちょうど結婚式の前撮りをしているカップルがいた。純白のウェディングドレスと黒いタキシードを着た2人の、仲睦まじい姿を垣間見た。


「おひめさま、すてきだねー」

「うん、2人とも素敵だね」

「みおも、おひめさま、なれるかな?」

「うん、いつかなれるよ」

「おひめさまになったら、あーくん、いっしょにあるいてくれる?」

「え!?」

 
驚いてみおの方を見るが、当の本人は何も意識していないようで、ぽや~んとカップルを見ていた。
 
その後もみおと、色んな所を探検した。最初に会った時は泣いていたみおも、それを忘れるくらいケラケラ笑ったり、突然危なっかしい行動を取ったり、色んな意味でとにかく目が離せなかった。

俺は俺で、久しぶりに声を出して笑った気がする。


(もしも僕に妹がいたら、こんな感じだったのかな)


以前母から、「飛鳥には弟か妹が生まれる予定だったのよ。今は天国にいるんだけどね」と教えてもらったことがある。それが流産だったと理解するのは、もう少し後のことだけど。


「みおちゃんのお父さんは、ホテルで何の仕事してるの? フロントかな?」

「ううん、きゃくしつか、っていってたよ! パパね、かっこいいホテルマンなんだ~」

「そうなんだ」

「あーくんのパパも、かっこいい?」

「え!? うん、多分、かっこいいと思う」


忙しくてなかなか家に帰ってこないし、一緒にご飯を食べることも少なくて、正直寂しいと思うことの方が多かった。でも、仕事をする父は、きっとかっこいいんだと思う。みおが誇りに思うようなパパが、社員として働いている会社なんだから。


レストラン周りを2人で歩いていると、突然大人に呼び止められた。


「澪!!探したんだぞ!」

「パパ~~~~っ!」

「あれ、君は、七瀬副社長の……」

「はい、息子の飛鳥です」


ペコっとお辞儀をする。


「こんにちは、客室課の倉田正です。いつも君のお父さんには沢山お世話になっているよ。今日は迷子になった澪の相手をしてくれていたんだね? 本当にありがとう」

「いえ、無事会えてよかったです」

「あーくん、またね~!」

「澪、そんなに仲良くなったのか?? 飛鳥くん、申し訳ない。娘は迷子になったにも関わらず、とても楽しかったようだ。また遊んでやってくれると嬉しい」


優しく微笑む、みおのお父さん。きっと父が言っていた「頼りになる倉田さん」とは、この人のことなのだろう。

みおと離れるのは少し寂しく、胸の辺りがチクッとするような感覚だった。でも、「みおのパパ」がここで働いているんだ。きっとまたすぐに会える。

そう願って、笑顔で手を振って見送った。
今となってはこれが、俺にとって遅めの初恋だったようだ。


***


次に澪と会ったのは、それから3年後だった。
この3年間で俺は声変わりもして、一気に身長も伸びた。どんどん大人に近づいているような、でもまだ子供のような不思議な感覚だった。
 
(自分も父や祖父のように七瀬ホールディングスで働くのか、それとも違う選択をするのか…)
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