婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

有明波音

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第8話:シナリオ通りにいかない世界

2.

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 そう言って、カイ様が魔石を差し出す。小ぶりの魔石だが、透き通った紫がとても綺麗だった。質の良い魔力が流れていることが分かる。

 自分の魔力に余力がある時は、こうした魔石に力を移しておいて、いざという時のために力を温存することもできるのだ。


「有り難くいただきますね」

「もちろんだよ、君が浄化したのだから。ただし!」

「ただし?」

「……あまり危ないことはしないでほしい、私が必ず助けに行くから。エリアナが魔獣と対峙しているのを見ると、私の寿命が縮まりそうだよ……」

「フフッ カイ様、優しいのですね」


 ふと、『これからも、こうやって魔獣が現れるのだろうか。瘴気の問題もあるし……根本的な解決になっていないわ』と不安が襲ってきた。


「エリアナ、どうかした?」

「えぇ、今回魔獣を退治しただけでは、根本的な解決になっていないような気がして……本当は聖女様が各地を浄化して下されば良いのですが」

「そうだな。皆、何か良いアイデアはあるか?」

「他国の聖女様をお呼びするのはいかがでしょうか?」

「効果はあるかもしれないが……各国の交渉に時間がかかるかもしれないな。
 それまでこの状況を抑え込めればいいが……それに呼んだとしても、この国の魔獣や瘴気に効果があるかは保証出来ないな」

「そうですよね……」

 
 解決方法が見出せず、少し暗い雰囲気になっていく。

 既にシナリオ通りの展開にはなっていないものの、私は乙女ゲームで把握しているシナリオをどこまで皆に話して良いのか、迷っていた。


(乙女ゲームなんて言っても絶対分からないだろうし……『何でそんなこと知ってるの?』と聞かれても、信じてもらえるかどうか……。
 でも、これを話してしまったら、もうここでゆっくりスローライフを過ごしていくのは無理かもしれない)


 ああでもない、こうでもないと頭で考えていたが、もうグダグダ考えるのも面倒になってしまった。


「あの……皆さんに信じてもらえるかどうか分からないのだけど……」

「エリアナ、どんなことでも話してほしい」

「寝ている時、夢を見たんです。これからどこに魔獣が現れるのか、聖女様がどこに行って浄化をすべきか……」

「それ、詳しく教えてくれる?」


(本当は夢じゃなくて、前世でプレイしたゲームのシナリオなのだけど……!)


「本当にこれ通りになるかどうかは、分かりません。でも、何もしないよりは、参考になるかもしれません」


 そうして、私はこの先どこの街でどんな属性の魔獣が現れるのか、本来なら聖女が王太子や騎士団長・魔法使い・神官らと共に各地を巡って浄化活動をするはずであることなど、三人に話していった。

 話し終えて皆の反応を伺うと、カイ様がすぐに切り出した。


「それは、あり得るね。これからその街に現れるのかもしれない。私達もそこに向かうことにしようか」

「え!! 良いんですか? もし私が行きたいって言ったら、カイ様は絶対反対するかと思いました」

「うん、危険な目に遭わせたくない、という意味では絶対止めたいんだけど。
 一緒に行こうって先に言っておかないと、エリアナ、一人で飛び出して行っちゃうでしょ?」

「ウッ……」
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