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第10話:エリアナの潜入捜査
1.
しおりを挟むこれまで滞在していたグラニット近くの森を抜けて、草原を渡り、山の麓にあるドルフ村に向かった。
乙女ゲームのシナリオ通りであれば、最初にこの辺りで魔獣が現れるはずだ。先に村に到着していたアンディと合流し、現地の人々から情報収集した内容を教えてもらった。
「エリアナ様の予言通り、数日前から、土属性の魔獣の目撃情報があるようです」
「予言って言われると、変な感じね」
「それと、これはエリアナ様にとって幸か不幸か、何とも言いにくい情報もありまして……」
「あら、なぁに?」
少しだけ躊躇ったアンディが、話を続ける。
「この辺りを管轄している領主の館が近くにあるのですが、本日、そこに王太子殿下一行が来るようです」
「えぇっ! 本当に来るのね! ……あまり会いたくないわね」
「今回の魔獣退治のために皆さんでいらっしゃるようです。聖女マリア様とクリス王太子、騎士団長のレオナルド様、魔法使いのニール様、神官のアンジェロ様の5名と、王家の護衛騎士や侍女達の大所帯のようです」
「まぁ!」
乙女ゲームでは5人で各地を巡る旅だったが、そんなに大所帯だったのだろうか?
この時、「推しとまでは言えないけれど、強いて言うならあの人に会ってみたい」と思っていた人の名前が出て、僅かな反応を示した私をカイ様は見逃していなかった。
この件は後で問い詰められることになるのだがーー。
「ねぇ、アンディ。私良いことを思いついたのだけれど」
「はい、何でしょうか?」
「……お嬢様の考える『良いこと』は、少々怖いのですが。慣れてきている私もいます」
「フフ、ケイティったら。王家の侍女に扮して、潜り込むのはどうかしら! 向こうがどういう戦い方をするのか、聖女は本当に光魔法が扱えないのか、情報収集をするのよ」
「侍女に扮すると言うのは、誰がですか?」
「もちろん私が、よ!!」
「「「えぇ~~~っ!?」」」
「何よ、そんなに驚かなくても……」
カイ様は笑いながら「またエリアナは面白いことを言い出した」と言いながら、私のアイデアに賛成してくれた。
「確かに遠目で見ているより、実際に潜り込んだ方が格段に情報収集が出来るだろうね。
でも、もしバレた場合は危険だ。そうだ、ケイティも一緒に王家の侍女として行けるかい?」
「わ、私もですか……!? もちろんお嬢様を一人では行かせませんが、王家の侍女ほど出来るか不安ですね……」
「ケイティなら大丈夫よ! 公爵家一の仕事のできる侍女だもの!」
「そう言って頂けるなら……」
こうして、私とケイティは王家一行の侍女として潜り込むことにした。
その間、カイ様とアンディは魔獣に関する情報収集を進めるらしい。
今回の魔獣退治行きは突然のことだったらしく、王家は人数を充分に用意できなかったとかで、私たち二人はすんなり潜り込むことができた。何とか理由をつけて、一日限りの侍女として働くことになった。
***
私とケイティは、侍女長の指示のもと、雑用もテキパキとこなした。ケイティが私に耳打ちしてくる。
「お嬢様、貴族令嬢とは思えないくらい無駄のない素晴らしい動きです。掃除洗濯をやっていた成果でしょうか」
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