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第10話:エリアナの潜入捜査
2.
しおりを挟む「ありがとう、ケイティ。でも、ここではお嬢様ではなくて、オフィーリアと呼んでちょうだい」
「はい、オフィーリア」
「そういえば、ケイティは名前を変えなくて良かったの? あと、クリス様があなたを見たら気づくんじゃないかしら。公爵家でお会いしたことあるでしょう?」
「何度かお見かけしたことはありますが……あのクリス様が私のことを覚えていると思いますか?」
「うーん、それは確かに怪しいわね」
王太子の周りには沢山の侍従・侍女や護衛騎士がいるし、一介の、しかも公爵家の侍女まで覚えるのは流石に難しい気がする。
少しでも変装しておけば、クリス様対策は大丈夫な気がしてきた。
こうして二人で雑用をこなしていたが、そこで侍女長に声をかけられた。
「オフィーリア、ケイティ、王太子殿下への配膳を手伝ってちょうだい」
「「はい、かしこまりました」」
「……ケイティ、王太子一団に近づくチャンスね!」
「はい、それにしてもオフィーリア、とても楽しそうですね」
「潜入捜査だもの、わくわくしちゃうわ!」
「……くれぐれもバレないよう、気をつけて参りましょう」
クリス様達の食事を配膳するため、カートを押しながら歩いていく。蓋があって食事の中身は見えないが、良い匂いが漂っていた。
「あぁ、ケイティ。やっぱり王家の人々はとても美味しいものを食べているのね! 国民とは大違いだわ。何が入っているか、とても気になるわね」
「オフィーリア、開けてはいけませんよ」
「大丈夫、今は開けないわ。後でこっそり見るんだから」
二人でテキパキと配膳していくと、王太子一団は今後の作戦について話している最中だった。
「ニール、今回はお前の風魔法でいけそうか?」
「はい、魔石も魔道具も用意してありますし、大丈夫かと思います」
「そうか、なら安心だな。マリアは……早く、本来の力を発揮できると良いのだが」
「クリス様、申し訳ございません……」
聖女マリア様が謝ってから、シーンと静かになる。魔法使いのニール様は「はぁ」と小さくため息をついた。
「私が基本属性の魔法を全て使えるから何とかなっていますが……本来は聖女様お得意の光魔法で鎮めていただきたいですね」
「ニール、そのような言い方はするものでない」
ニール様がクリス様に諌められているが、騎士団長のレオナルド様や神官のアンジェロ様も浮かない顔をしている。
(ゲームのシナリオだと、この時既に聖女マリアに対する好感度が全員高いはずなのに……
クリス様以外は誰一人、マリア様と関係を深められていない? やっぱり、光魔法が使えないことが原因なのかしら……)
あれこれ考えていると、隣にいたケイティから肘で小突かれた。そうだ、私は今王家の侍女として雇われているんだったわ。
それぞれの前に食事を出す。蓋を開けると、この村で収穫した卵、肉、野菜類をふんだんに使った料理が現れた。
特に、卵をたっぷり使ったオムレツや牛肉のコンフィはとても美味しそうだった。
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