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第1話 竜好き令嬢ルシル
「竜好きの変わり者な令嬢なんて僕には我慢できない、ルシルとの婚約は破棄させてもらおう!」
婚約者でありこの国の王太子であるクラウス様が、私にそう告げました。
突然呼び出されたと思ったら、まさかの婚約破棄。
いきなりすぎて意味がわかりません。
「殿下、お待ちください!」
「待つものか。三度の飯より竜研究。暇があれば山にフィールドワーク。あまつさえパーティーには白衣で現れる」
「あれは白衣ではなく、ドレスなんですって何度も説明したではありませんか! まあ中古の安物ではありますが……」
うち、貧乏なんです。
侯爵家なので家柄だけは無駄に高いのに、中身は落ちぶれた貧乏貴族。
多分だけど、家族全員がなにかしらの研究に没頭してしまっているのが原因の一つな気がしますね。
それでも血筋が良いと、幼い私に婚約を持ち掛けてきたのは殿下のほうからでした。
「男よりも竜が好きなら、竜と結婚すればいいではないか」
「私、研究は仕事でやってるんですよ?」
在学中に竜研究が認められて、私は今では国で唯一の竜の研究者なのです。
たしかに竜が好きで研究をしているのは事実ですが、これも我が国のためなのですから。
陛下がお元気のころは、私の研究を応援してくれました。
ですが陛下は病で倒れられ、代わりに王太子のクラウス様が実権を握った。
私が陛下に贔屓されていたのが面白くなかったのでしょうね。
それからずっと、研究を辞めるよう嫌がらせを受けてきました。
研究室へのいたずらに始まり、研究費が削減されただけでなく、今では私個人への誹謗中傷なんて日常茶飯事です。
酷いものでは、フィールドワーク中に強盗を装った襲撃なんてのもありましたが、助手の力添えのおかげで難を逃れたこともありました。
この状況をなんとかしようとは思ったけど、証拠がないと言われ罪を明らかにすることはできなかったのです。
何度妨害行為を受けても、私は折れずに研究を続けました。
王太子殿下の婚約者であるという矜持もあったけど、なにより好きなことを取り上げられるのが我慢できなかったから。
小さい頃に山で竜の爪を拾ったあの日から、ずっと竜が好き。
もっと竜のことが知りたい。
こんなこと言ったら笑われてしまうのだけど、いつか本物の竜に会ってみたいと今だって夢見ているの。
「竜なんて幻想の存在、もうこの世にはいない。無駄な研究だ」
「いいえ殿下、竜はきっと実在します。そもそも我が国は、黒竜様を守護竜として長年祀ってきたではないですか」
世間の認識では、竜は絶滅したと思われている。
その証拠に、この国の守護竜といわれる黒竜も、もう数十年現れていない。
大昔は花形だった竜研究も、今では誰も存在を信じない夢物語のような扱いになっていました。
それでも私は守護竜を蔑ろにしないよう、声を上げ続けた。
竜は人々を災いから防いでくれていると考えられていたから。
事実、守護竜は何百年もの間、災害や戦乱が起きた時に必ず我が国を護ってくれていたのだ。
「存在しないものにすがる時代は終わった。昔と違い、今では魔法があれば怖いものはない。災害が起きても、我が国の優秀な魔法使いたちがいれば問題ないだろう」
時代を重ねるごとに、文明も進歩しました。
中でも魔法の分野の成長は著しくて、いまでは軍隊に魔法兵団が創設されています。
彼らがいれば、敵国の脅威や災害にも対処できると、みんなは信じて疑わない。
「お前のような無駄に研究バカで地味な女はいらない。これからはこのカテリーナのようにエリートで華やかな令嬢を婚約者にするつもりだ」
クラウス様は、カテリーナという子爵令嬢の腰に手を回します。
金髪の巻き髪がとても似合っている可憐なご令嬢です。
真っ黒でボサボサな髪の私とは大違い。
殿下は私を見下ろしながら彼女を抱き寄せると、頬にキスをしました。
私には一度も触れてくれなかった、その唇で。
「カテリーナは代々優秀な魔法使いの一族だ。きっと国の役にも立ってくれることだろう」
高級そうなドレスを身に包む彼女は、魔法だけでなく金持ちでも有名な貴族の令嬢です。
たしか実家は、魔法の特許を何個も持っていたはず。
金回りが良いのでしょうね。派手なアクセサリーを私に見せびらかして、嘲笑しながら私を蔑んできます。
「ふふっ、あんたのようなトカゲを専攻している貧乏貴族、王族にはふさわしくないのですって」
「……竜はトカゲではないですよ」
「竜なんて前時代の生き物ではなく、女神様を信仰すればいいのに。ねえ、そう思わない?」
守護竜信仰は、ここ100年程で下火になっていいます。
代わりに一大勢力を広げたのが、女神信仰です。
今やこの国の王族だけでなく、国民のほとんどが女神様を信仰している。
そういえばこの子爵令嬢の実家は、女神信仰の大本山の教皇と遠縁の関係があったはず。
だから私の代わりに婚約者として選ばれたのでしょう。
「守護竜信仰なんて、邪教よ。邪教の民は、処刑するのが女神信仰の習わしなのよ」
カテリーナの発言に、クラウス様がうなずきながら肯定します。
「ルシル、お前を邪教信仰の罪で、処刑させてもらおう」
「ええ!? 処刑だなんてあんまりです! 私、仕事で研究していただけなんですけど」
真面目に仕事をしていただけで殺されるなんておかしい。
横暴です。
こんなの許されるわけないですよ。
「これは見せしめだ。いまだに守護竜を信仰する頭の固い臣民に、改宗しなければ次はこうなるのだとわからせるためのな」
「黒竜様はやましい存在ではありませんし、私は邪教を信仰したことなんて一度もありません」
「それはどうかな。昨夜、山崩れがあった。幸い死傷者は出なかったが、貴様には身に覚えがあるはずだ」
竜の山は、私がいつもフィールドワークをしている場所です。
最後に訪れたのは昨日のこと。
「あの辺りは最近何度も地鳴りが起こっていました。それは殿下に昨日もご報告をしたはずですが?」
「黙れ、証拠はあがっている。誰も寄り付かない山奥に密かに訪れて、貴様が山崩れを起こす画策をしたことは調査済みだ」
「いつも通り、ただ竜が住んでいた場所のフィールドワークをしていただけなのですが……」
私の研究では、100年周期で竜の山から地鳴りが起こることがわかりました。
なにか私たちの知らないことが、あの山にはある。
その謎を何とか解き明かしたかったのに、すべて水の泡になってしまった。
「申し開きは牢屋の中で言え。連れていけ!」
衛兵が私を取り囲みました。
どうやら本気で私を処刑するつもりみたい。
誰も、私のことを擁護《ようご》しようとしてくれない。
このままでは、本当に殺されてしまう……!
そんな私を助けようと、一人の男性が衛兵をかき分けながら前へと出ます。
「ルシルお嬢様! お前たち、捕まえるなら俺にしろ。お嬢様には手を出すな!」
婚約者でありこの国の王太子であるクラウス様が、私にそう告げました。
突然呼び出されたと思ったら、まさかの婚約破棄。
いきなりすぎて意味がわかりません。
「殿下、お待ちください!」
「待つものか。三度の飯より竜研究。暇があれば山にフィールドワーク。あまつさえパーティーには白衣で現れる」
「あれは白衣ではなく、ドレスなんですって何度も説明したではありませんか! まあ中古の安物ではありますが……」
うち、貧乏なんです。
侯爵家なので家柄だけは無駄に高いのに、中身は落ちぶれた貧乏貴族。
多分だけど、家族全員がなにかしらの研究に没頭してしまっているのが原因の一つな気がしますね。
それでも血筋が良いと、幼い私に婚約を持ち掛けてきたのは殿下のほうからでした。
「男よりも竜が好きなら、竜と結婚すればいいではないか」
「私、研究は仕事でやってるんですよ?」
在学中に竜研究が認められて、私は今では国で唯一の竜の研究者なのです。
たしかに竜が好きで研究をしているのは事実ですが、これも我が国のためなのですから。
陛下がお元気のころは、私の研究を応援してくれました。
ですが陛下は病で倒れられ、代わりに王太子のクラウス様が実権を握った。
私が陛下に贔屓されていたのが面白くなかったのでしょうね。
それからずっと、研究を辞めるよう嫌がらせを受けてきました。
研究室へのいたずらに始まり、研究費が削減されただけでなく、今では私個人への誹謗中傷なんて日常茶飯事です。
酷いものでは、フィールドワーク中に強盗を装った襲撃なんてのもありましたが、助手の力添えのおかげで難を逃れたこともありました。
この状況をなんとかしようとは思ったけど、証拠がないと言われ罪を明らかにすることはできなかったのです。
何度妨害行為を受けても、私は折れずに研究を続けました。
王太子殿下の婚約者であるという矜持もあったけど、なにより好きなことを取り上げられるのが我慢できなかったから。
小さい頃に山で竜の爪を拾ったあの日から、ずっと竜が好き。
もっと竜のことが知りたい。
こんなこと言ったら笑われてしまうのだけど、いつか本物の竜に会ってみたいと今だって夢見ているの。
「竜なんて幻想の存在、もうこの世にはいない。無駄な研究だ」
「いいえ殿下、竜はきっと実在します。そもそも我が国は、黒竜様を守護竜として長年祀ってきたではないですか」
世間の認識では、竜は絶滅したと思われている。
その証拠に、この国の守護竜といわれる黒竜も、もう数十年現れていない。
大昔は花形だった竜研究も、今では誰も存在を信じない夢物語のような扱いになっていました。
それでも私は守護竜を蔑ろにしないよう、声を上げ続けた。
竜は人々を災いから防いでくれていると考えられていたから。
事実、守護竜は何百年もの間、災害や戦乱が起きた時に必ず我が国を護ってくれていたのだ。
「存在しないものにすがる時代は終わった。昔と違い、今では魔法があれば怖いものはない。災害が起きても、我が国の優秀な魔法使いたちがいれば問題ないだろう」
時代を重ねるごとに、文明も進歩しました。
中でも魔法の分野の成長は著しくて、いまでは軍隊に魔法兵団が創設されています。
彼らがいれば、敵国の脅威や災害にも対処できると、みんなは信じて疑わない。
「お前のような無駄に研究バカで地味な女はいらない。これからはこのカテリーナのようにエリートで華やかな令嬢を婚約者にするつもりだ」
クラウス様は、カテリーナという子爵令嬢の腰に手を回します。
金髪の巻き髪がとても似合っている可憐なご令嬢です。
真っ黒でボサボサな髪の私とは大違い。
殿下は私を見下ろしながら彼女を抱き寄せると、頬にキスをしました。
私には一度も触れてくれなかった、その唇で。
「カテリーナは代々優秀な魔法使いの一族だ。きっと国の役にも立ってくれることだろう」
高級そうなドレスを身に包む彼女は、魔法だけでなく金持ちでも有名な貴族の令嬢です。
たしか実家は、魔法の特許を何個も持っていたはず。
金回りが良いのでしょうね。派手なアクセサリーを私に見せびらかして、嘲笑しながら私を蔑んできます。
「ふふっ、あんたのようなトカゲを専攻している貧乏貴族、王族にはふさわしくないのですって」
「……竜はトカゲではないですよ」
「竜なんて前時代の生き物ではなく、女神様を信仰すればいいのに。ねえ、そう思わない?」
守護竜信仰は、ここ100年程で下火になっていいます。
代わりに一大勢力を広げたのが、女神信仰です。
今やこの国の王族だけでなく、国民のほとんどが女神様を信仰している。
そういえばこの子爵令嬢の実家は、女神信仰の大本山の教皇と遠縁の関係があったはず。
だから私の代わりに婚約者として選ばれたのでしょう。
「守護竜信仰なんて、邪教よ。邪教の民は、処刑するのが女神信仰の習わしなのよ」
カテリーナの発言に、クラウス様がうなずきながら肯定します。
「ルシル、お前を邪教信仰の罪で、処刑させてもらおう」
「ええ!? 処刑だなんてあんまりです! 私、仕事で研究していただけなんですけど」
真面目に仕事をしていただけで殺されるなんておかしい。
横暴です。
こんなの許されるわけないですよ。
「これは見せしめだ。いまだに守護竜を信仰する頭の固い臣民に、改宗しなければ次はこうなるのだとわからせるためのな」
「黒竜様はやましい存在ではありませんし、私は邪教を信仰したことなんて一度もありません」
「それはどうかな。昨夜、山崩れがあった。幸い死傷者は出なかったが、貴様には身に覚えがあるはずだ」
竜の山は、私がいつもフィールドワークをしている場所です。
最後に訪れたのは昨日のこと。
「あの辺りは最近何度も地鳴りが起こっていました。それは殿下に昨日もご報告をしたはずですが?」
「黙れ、証拠はあがっている。誰も寄り付かない山奥に密かに訪れて、貴様が山崩れを起こす画策をしたことは調査済みだ」
「いつも通り、ただ竜が住んでいた場所のフィールドワークをしていただけなのですが……」
私の研究では、100年周期で竜の山から地鳴りが起こることがわかりました。
なにか私たちの知らないことが、あの山にはある。
その謎を何とか解き明かしたかったのに、すべて水の泡になってしまった。
「申し開きは牢屋の中で言え。連れていけ!」
衛兵が私を取り囲みました。
どうやら本気で私を処刑するつもりみたい。
誰も、私のことを擁護《ようご》しようとしてくれない。
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