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第31話 ヴァンパイア・シスター
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死んだと思っていた私の妹が、そこにいる。
妹のトロメアが、生きていた!
本来であれば、両手を上げて喜ぶことです。
でも、内心では喜んでも、それを表情に出すことはできませんでした。
なぜなら妹を捕えていたのは、あの白衣の転生者イツキなのだから。
「このヴァンパイアはね、僕がヴァンパイア狩りをした時の唯一の生き残りなんだ。王族のヴァンパイアのせいでなかなか死なないから、『魂吸創剣』に封印していたんだよ」
イツキの聖剣には、見覚えのある『封印石』が埋め込まれていました。
私を封印した規格外の神器。
いや、あれの上位互換ね。
「なにかに使えると思って奴隷にしてたんだけど、ついに使う時が来た。このヴァンパイア・クイーンはね、ゲームでは一作目の妻だった女なんだ!」
イツキはトロメアの髪を、無造作に引っ張る。
「設定通りなら、この女は前作の魔王であるフェルムイジュルクとの間に子供を産んでるはずなんだ。その子供が二作目の裏ボスになるはずだったのに、なにかおかしいんだよねよ」
イツキは妹のお腹を、ポンポンと叩く。
不良品を触る時のように、雑な手つきで。
「この女、どういうわけか魔王フェルムイジュルクとの子供を産んでいないんだ。だから裏ボスが出現しないせいで、ゲームが進行しないみたいんだよ、困ったよね」
イツキの『魂吸創剣』から小さな光の魂が飛び出てきます。
「でも、もう大丈夫。裏ボスは僕が創るから!」
あの魔力の気配は、さっきイツキが倒した魔王フェルムイジュルクのもの。
剣に取り込んだ魔王の魂を、外に取り出したのだ。
「この魔王フェルムイジュルクの魂と、そこのヴァンパイア・クイーンの魂を、『魂吸創剣』で配合する。そうすれば、裏ボスとなる真の魔王が誕生するはずだ!」
「イツキ、何を言っているか、わかっているの?」
この男は、新しい魔王を生み出すと言ったのだ。
しかも、私の妹を生贄して。
「仕方ないじゃん、魔王が生まれないと、ゲームが始まらないんだ。でも、安心して。世界は一度滅ぶけど、僕とテレネシアが荒廃したその世界を救うんだ!」
「自分で生み出した魔王を、自分で倒すなんて、どうかしてるわ」
その間に何千、何万の人間が死ぬはずです。
イツキがやろうとしているのは、世界を滅ぼすのと変わらない。
変な男だとは思っていたけど、イカれてる!
イツキに対して敵意を抱いたところで、鎖に繋がれていた妹が顔を上げました。
「あ、姉上様……生きておられた、のですね…………」
「トロメア!」
妹の体を抱きかかえます。
トロメアは魔力がないのか、傷だらけのままでした。
いたるところに、切り傷の跡がある。
いや、それだけじゃない。
拷問を受けたような、見るに堪えない傷もたくさんあった。
「イツキ、答えなさい。この子になにをしたの?」
「なにをしたって、なにもしてないよ? NPCには何をしても、何かしたことにはならないからね」
イツキは常軌を逸している。
人を人とは思っていないどころか、物のように消費しようとしている。
それなのに悪意がないから、ある意味魔王よりもたちが悪い。
「そんなことよりもテレネシア、なんでそのヴァンパイアと知り合いなの?」
疑いの目が、私に注がれます。
イツキが、私を見定めようとしているのだ。
「聖女とヴァンパイア・クイーンが知り合いだなんて設定、あったっけ? というか君たち、顔が似すぎだよね。並んでるからよくわかるよ」
シャーロットとハートが並んでいるのを見た時、二人が姉妹だということが目に見えてわかりました。
つまり、イツキも気づいてしまったのです。
「テレネシアとヴァンパイア・クイーンが、姉妹? じゃあテレネシアは、人間じゃないの……?」
イツキから、殺気が漏れ出します。
いまにも襲い掛かってきそうな雰囲気でした。
「まさかテレネシアの裏設定があったのか? 実は人間じゃなくてヴァンパイアだったとか…………でもそんなこと、ゲームには一度も出てこなかったぞ!」
「そのゲームとやらが、間違っているんじゃないのかしら?」
「そんなわけないだろう! 『セイクリッドクエスト2』は神ゲーなんだ。ここはそのゲームの中の世界なんだ!」
「あなたを転生させた女神が、そう言ったの?」
「そ、それは、言ってなかったけど……」
少しだけ、理解できました。
転生者というのは、異世界のただの少年だったのかもしれません。
ゲームというこの世界に似た何かで、事前に学習をしているだけの、ただの人間。
規格外の神器で身体を強化していなければ、特に脅威にはならない存在だということも。
「やっぱり僕のテレネシアがヴァンパイアだなんて信じられない。ということは、お前は偽者だな!」
今度は偽者扱いです。
私、この国に来てから何度誤解されたのかしらね。
「僕を裏切ったな、テレネシア。ヴァンパイアのくせにヒロインのフリをして、僕を殺そうとしたなんて。僕の純情を汚したんだぞ!」
「そんなわけないじゃない。あなたが勝手に、変に誤解していたのよ」
私はずっと、そんなこと知らないと申したはずです。
だからヒロインだとか意味のわからないことばかり言ってきたあなたが悪いのですよ。
「わかった、もうわかったよ。テレネシア、君を殺そう。そしたら君の魂は『魂吸創剣』に吸収される」
「そうすると、どうなるの?」
「新しい君を生み出すんだよ。純粋で僕だけのことを愛してくれる人間のテレネシアを作る。そう、僕だけのヒロインを!」
目がイッてしまっている。
イツキは、もう戻れないところまで堕ちてしまっているのだ。
「テレネシアを殺したら、魔王を生み出す。まずはこの国を滅ぼそう。そして世界を壊したら、純粋なテレネシアを生み出して僕の幼馴染にするんだ。もちろんヒロインとしてね!」
よくわかってしまいました。
イツキはこの世界を壊し、魔王になるつもりなのだと。
「そんなこと、させないわ」
私は1000年前に、一度魔王を倒した。
そうして死の連鎖を断ち切り、世界を救ったつもりでした。
でも、それだけじゃだめだったんだ。
私が勇者に封印されたのは、この時のためだったんじゃないかとすら思える。
1000年後のこの世界で、異世界からの転生者であるイツキを倒すために、私はここにいるのだ。
「悪いけど、テレネシアには死んでらうよ。邪魔な妹は、元に戻ってもらおうか」
「あ、姉上ーッ!」
イツキの『魂吸創剣』に、トロメアが封印されました。
トロメアを封印した聖剣を奪わないと、妹を取り返すことはできないでしょう。
私と妹のトロメアは、特別仲が良い姉妹というわけではありませんでした。
どちらかといえば、少し壁があった気がする。
自分で言うのもなんだけど、私は優秀だった。
ヴァンパイアの次期女王として期待されるだけの実力をもっていました。
でも、私は人間が好きな変わり者で、一族には馴染めなかった。
対して妹のトロメアは平凡なヴァンパイアです。
それなのに変わり者の姉のせいで、私の代わりに次期女王になれないかと変な期待がかかってしまった。
真面目な性格のトロメアはそれを一心に受けて、いろいろと苦労をかけたと思う。
そのせいで、私とトロメアの間には、大きな壁ができてしまったのだ。
仲良く過ごしたのも、幼少の頃の短い期間だけ。
その後は、姉妹の時間を過ごすことは、二度となかった。
そうして私は封印され、ヴァンパイアの滅亡を知った。
だから妹とは、二度と会うことはできないと思っていたのに、違った。
死んだと思っていた妹と、再会できたのだ!
それなのに、これで終わりだなんて絶対にいや。
私は妹の顔を、もっと見たい。
シャーロットとハートのように、仲の良い姉妹になれるような機会が欲しい。
そして1000年の間に失った姉妹の時間を、また取り戻したい。
そのためだったら、姉として私は何だってする。
「そうだ、いいこと思いついたよ! 国王から『女神陽光珠』を奪ってこよう。どうせこの国は滅ぼすんだから、もう大人しくしなくてもいいからね」
「それを、私がさせるとお思い?」
せっかくドルネディアスを次の王にしたのに、無駄骨になってしまった。
ドルネディアスの呪いも解いてあげたけど、イツキをこのまま放っておいたら、せっかく助けた命も泡となってしまう。
だから、イツキの手に『女神陽光珠』を渡してはならない。
そうしたら最後。
妹のトロメアは殺され、そして私も殺される。
イツキを止められる者はいなくなり、世界は一度滅ぼされる。
新たな魔王、イツキによって。
そうならないためにも、私がここでイツキを止める。
これ以上、一歩も奥へは進ませない。
「私があなたを、倒します」
そして妹を救い、人間たちが暮らすこの世界を守る!
人生で二度目の魔王戦。
それがいま、始まりました。
妹のトロメアが、生きていた!
本来であれば、両手を上げて喜ぶことです。
でも、内心では喜んでも、それを表情に出すことはできませんでした。
なぜなら妹を捕えていたのは、あの白衣の転生者イツキなのだから。
「このヴァンパイアはね、僕がヴァンパイア狩りをした時の唯一の生き残りなんだ。王族のヴァンパイアのせいでなかなか死なないから、『魂吸創剣』に封印していたんだよ」
イツキの聖剣には、見覚えのある『封印石』が埋め込まれていました。
私を封印した規格外の神器。
いや、あれの上位互換ね。
「なにかに使えると思って奴隷にしてたんだけど、ついに使う時が来た。このヴァンパイア・クイーンはね、ゲームでは一作目の妻だった女なんだ!」
イツキはトロメアの髪を、無造作に引っ張る。
「設定通りなら、この女は前作の魔王であるフェルムイジュルクとの間に子供を産んでるはずなんだ。その子供が二作目の裏ボスになるはずだったのに、なにかおかしいんだよねよ」
イツキは妹のお腹を、ポンポンと叩く。
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「この女、どういうわけか魔王フェルムイジュルクとの子供を産んでいないんだ。だから裏ボスが出現しないせいで、ゲームが進行しないみたいんだよ、困ったよね」
イツキの『魂吸創剣』から小さな光の魂が飛び出てきます。
「でも、もう大丈夫。裏ボスは僕が創るから!」
あの魔力の気配は、さっきイツキが倒した魔王フェルムイジュルクのもの。
剣に取り込んだ魔王の魂を、外に取り出したのだ。
「この魔王フェルムイジュルクの魂と、そこのヴァンパイア・クイーンの魂を、『魂吸創剣』で配合する。そうすれば、裏ボスとなる真の魔王が誕生するはずだ!」
「イツキ、何を言っているか、わかっているの?」
この男は、新しい魔王を生み出すと言ったのだ。
しかも、私の妹を生贄して。
「仕方ないじゃん、魔王が生まれないと、ゲームが始まらないんだ。でも、安心して。世界は一度滅ぶけど、僕とテレネシアが荒廃したその世界を救うんだ!」
「自分で生み出した魔王を、自分で倒すなんて、どうかしてるわ」
その間に何千、何万の人間が死ぬはずです。
イツキがやろうとしているのは、世界を滅ぼすのと変わらない。
変な男だとは思っていたけど、イカれてる!
イツキに対して敵意を抱いたところで、鎖に繋がれていた妹が顔を上げました。
「あ、姉上様……生きておられた、のですね…………」
「トロメア!」
妹の体を抱きかかえます。
トロメアは魔力がないのか、傷だらけのままでした。
いたるところに、切り傷の跡がある。
いや、それだけじゃない。
拷問を受けたような、見るに堪えない傷もたくさんあった。
「イツキ、答えなさい。この子になにをしたの?」
「なにをしたって、なにもしてないよ? NPCには何をしても、何かしたことにはならないからね」
イツキは常軌を逸している。
人を人とは思っていないどころか、物のように消費しようとしている。
それなのに悪意がないから、ある意味魔王よりもたちが悪い。
「そんなことよりもテレネシア、なんでそのヴァンパイアと知り合いなの?」
疑いの目が、私に注がれます。
イツキが、私を見定めようとしているのだ。
「聖女とヴァンパイア・クイーンが知り合いだなんて設定、あったっけ? というか君たち、顔が似すぎだよね。並んでるからよくわかるよ」
シャーロットとハートが並んでいるのを見た時、二人が姉妹だということが目に見えてわかりました。
つまり、イツキも気づいてしまったのです。
「テレネシアとヴァンパイア・クイーンが、姉妹? じゃあテレネシアは、人間じゃないの……?」
イツキから、殺気が漏れ出します。
いまにも襲い掛かってきそうな雰囲気でした。
「まさかテレネシアの裏設定があったのか? 実は人間じゃなくてヴァンパイアだったとか…………でもそんなこと、ゲームには一度も出てこなかったぞ!」
「そのゲームとやらが、間違っているんじゃないのかしら?」
「そんなわけないだろう! 『セイクリッドクエスト2』は神ゲーなんだ。ここはそのゲームの中の世界なんだ!」
「あなたを転生させた女神が、そう言ったの?」
「そ、それは、言ってなかったけど……」
少しだけ、理解できました。
転生者というのは、異世界のただの少年だったのかもしれません。
ゲームというこの世界に似た何かで、事前に学習をしているだけの、ただの人間。
規格外の神器で身体を強化していなければ、特に脅威にはならない存在だということも。
「やっぱり僕のテレネシアがヴァンパイアだなんて信じられない。ということは、お前は偽者だな!」
今度は偽者扱いです。
私、この国に来てから何度誤解されたのかしらね。
「僕を裏切ったな、テレネシア。ヴァンパイアのくせにヒロインのフリをして、僕を殺そうとしたなんて。僕の純情を汚したんだぞ!」
「そんなわけないじゃない。あなたが勝手に、変に誤解していたのよ」
私はずっと、そんなこと知らないと申したはずです。
だからヒロインだとか意味のわからないことばかり言ってきたあなたが悪いのですよ。
「わかった、もうわかったよ。テレネシア、君を殺そう。そしたら君の魂は『魂吸創剣』に吸収される」
「そうすると、どうなるの?」
「新しい君を生み出すんだよ。純粋で僕だけのことを愛してくれる人間のテレネシアを作る。そう、僕だけのヒロインを!」
目がイッてしまっている。
イツキは、もう戻れないところまで堕ちてしまっているのだ。
「テレネシアを殺したら、魔王を生み出す。まずはこの国を滅ぼそう。そして世界を壊したら、純粋なテレネシアを生み出して僕の幼馴染にするんだ。もちろんヒロインとしてね!」
よくわかってしまいました。
イツキはこの世界を壊し、魔王になるつもりなのだと。
「そんなこと、させないわ」
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そうして死の連鎖を断ち切り、世界を救ったつもりでした。
でも、それだけじゃだめだったんだ。
私が勇者に封印されたのは、この時のためだったんじゃないかとすら思える。
1000年後のこの世界で、異世界からの転生者であるイツキを倒すために、私はここにいるのだ。
「悪いけど、テレネシアには死んでらうよ。邪魔な妹は、元に戻ってもらおうか」
「あ、姉上ーッ!」
イツキの『魂吸創剣』に、トロメアが封印されました。
トロメアを封印した聖剣を奪わないと、妹を取り返すことはできないでしょう。
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どちらかといえば、少し壁があった気がする。
自分で言うのもなんだけど、私は優秀だった。
ヴァンパイアの次期女王として期待されるだけの実力をもっていました。
でも、私は人間が好きな変わり者で、一族には馴染めなかった。
対して妹のトロメアは平凡なヴァンパイアです。
それなのに変わり者の姉のせいで、私の代わりに次期女王になれないかと変な期待がかかってしまった。
真面目な性格のトロメアはそれを一心に受けて、いろいろと苦労をかけたと思う。
そのせいで、私とトロメアの間には、大きな壁ができてしまったのだ。
仲良く過ごしたのも、幼少の頃の短い期間だけ。
その後は、姉妹の時間を過ごすことは、二度となかった。
そうして私は封印され、ヴァンパイアの滅亡を知った。
だから妹とは、二度と会うことはできないと思っていたのに、違った。
死んだと思っていた妹と、再会できたのだ!
それなのに、これで終わりだなんて絶対にいや。
私は妹の顔を、もっと見たい。
シャーロットとハートのように、仲の良い姉妹になれるような機会が欲しい。
そして1000年の間に失った姉妹の時間を、また取り戻したい。
そのためだったら、姉として私は何だってする。
「そうだ、いいこと思いついたよ! 国王から『女神陽光珠』を奪ってこよう。どうせこの国は滅ぼすんだから、もう大人しくしなくてもいいからね」
「それを、私がさせるとお思い?」
せっかくドルネディアスを次の王にしたのに、無駄骨になってしまった。
ドルネディアスの呪いも解いてあげたけど、イツキをこのまま放っておいたら、せっかく助けた命も泡となってしまう。
だから、イツキの手に『女神陽光珠』を渡してはならない。
そうしたら最後。
妹のトロメアは殺され、そして私も殺される。
イツキを止められる者はいなくなり、世界は一度滅ぼされる。
新たな魔王、イツキによって。
そうならないためにも、私がここでイツキを止める。
これ以上、一歩も奥へは進ませない。
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