前世と今世の幸せ【4/17取り下げ予定】

夕香里

文字の大きさ
21 / 99
彼女の今世

episode21

「貴方はこっちを」

「あっリーティアお嬢様動かないでください」

 「ごっごめんなさい」

「やっぱりこっちの服の方がリティちゃんには合うわね。アナベル」

「分かりました。リーティアお嬢様こちらの服を」

 どうもこんにちはこんばんはリーティアです。ただ今私はお母様と侍女達の着せ替え人形になっております。

 事の発端は皇宮で開かれるお茶会。

 前世と同じドレスがあったので、今世もそれでいいやと構えていたら何故かこの状態になっております。

 お母様が「リティちゃんにはもっともっと似合うドレスがある! 私の自慢の娘だからもっと着飾るわよ。ね? アナベル」と意気揚揚に一人では抱えきれないほどのドレスを抱え、私の部屋に入ってきた時は唖然としました。

 あっちなみにアナベルというのは私付きの侍女です。前世では存在しなかった侍女を紹介された時、最初キョトンとしてしまいましたが、言葉の意味を理解できると恥ずかしながら年相応の子供のように飛び跳ねました。

 おっと思考を飛ばし過ぎていたようです。現実逃避などせずに現実に目を向けようと思います。

 現実逃避から戻り、高く積まれているドレスに目を向ける。この量を着たのか……私、よく耐えている。とても偉い。
 心の中で自分自身に拍手を送り、何度目かになる質問をお母様に尋ねる。

「……まだやるのですか? お母様」

「何を言っているの? まだまだ着てもらうドレス沢山あるのよ! 次はこっち」

「お母様……私疲れました」

「もうちょっと。もうちょっとだからね? リティちゃん頑張って」

 ダメだ。目が爛々と輝いているお母様は止まらない。うんざりしながらも納得のいくまで付き合うことにした。

 ようやく解放されたと思ったら日は傾き、夜の帳が降りようとしていた。ヘトヘトになった私は着替えもせずに寝台に突っ伏しそのまま昏睡するように眠りにつく。

 夢と現実の狭間で、私は考える。

 明日は皇宮でのお茶会。今世では初めてアルバート殿下と対面する。

(上手く…………やれるかしら?)


◇◇◇


 前世では曇り空だったが、今世では快晴だ。
 窓から差し込む光が眩しくて目を細めてしまうほどの良い天気。
 今日も今日とてお母様は昨日選んだドレスを侍女に持ってこさせず、お母様自身で運んで来た。

「さあリティちゃん、これに着替えてね」

「分かりましたお母様」

 お母様の後ろに控えていたアナベルに手伝ってもらいながらドレスに手を通し、髪を梳いてもらって綺麗に整えたら身支度は終わり。
 今日の髪型はツインテールらしい。緩くウェーブのかかった髪は赤いリボンで結ばれ、ふわっとしている。

「リティちゃん可愛いわ! 天使!」

「お母様言い過ぎです」

 満面の笑みで褒めるお母様、少し恥ずかしい。

 それに薄々気が付いていたが、今世の両親は少し……私に甘い気がする。前世の時とは比べものにもならないほどで、たまに褒められすぎて萎縮してしまう。まあとっても嬉しいのだけど。

「さあ行きましょう。旦那様が待ってるわ」

 そう言って差し出された手に自分の手を乗せると、付けている陽光が反射して光り輝くブレスレットが目に付く。

(……ノルン様私、頑張りますね。お茶会では目立たず、殿下には近づかず、ひっそりとします!)

 心の中でノルン様に伝えると、もう片方の手でブレスレットを触った。そしてお茶会に向けてエントランスで合流したお父様と共に馬車に乗り込んだ。

「リティ」

「はいなんですか?」

 ぼーっと窓から外の景色を眺めていたら、何か後ろめたそうなお父様に声をかけられた。

「そのだな……他の令嬢はするかもしれんが、リティはしなくていいからな?」

 はて? 何のことだろう。他の令嬢がすること?

「何をするのです? お父様、はっきり仰って下さらないと私には分からないです」

「だからっそのっ」

 本当に何を言いたいのか分からず、小首を傾げる。

「あーもうっ私が言うわ。リティちゃん、旦那様は他の令嬢みたいに殿下に媚を売りに行かなくていいんだよって言おうとしてるのよ」

──媚び? 誰に? えっ! 殿下に!? 誰が!? 私が???

「媚びですか?」

「そうよ。今日のお茶会は婚約者候補を絞るための物であって、殿下に兄弟はいらっしゃらないから……もし婚約者になれば未来の皇后よ。権力を欲している貴族からしたら喉から手が出るほど座りたい席よね」

 全く頭になかったことを言われ、固まる。

「あ~リティが固まってるじゃないか。何でそんなにズバッと……」

「だって貴方がうだうだしてるから……それに私はリティちゃんがそれで悩んでるのかと思って」

 硬直から戻った私は聞き捨てならない言葉を聞いた。私がどうやって媚を売ろうかで悩んでる? いや、まさか。そう言えば最近他の令嬢が、殿下が~とか言っていたような気がする……。

(私も同じだと思われたの?)

「違いますっ!」

 ブンブンと首を横に振って全身全霊で否定する。

 それに、好きにはならない。だってあの人は私のことが嫌い。前世と同じ道を通りたくもない。
 そう続けようか思ったが、流石に不敬であり、周りは知らないことなので心に留める。

「あら、違うの? ならいいわね。私達はリティちゃんに幸せになってもらいたいから媚なんて売らなくてもいいってことを伝えておこうと思って。あっでも、殿下のこと好きになったら応援するわよ?」

 お母様は私の全身全霊での否定にクスクスと笑い、お父様は何故か安堵した後、再びオドオドしていた。

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

あなたへの愛を捨てた日

柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。 しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。 レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。 「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」 エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と私を嫌う夫に言われましたので、素直に従った結果……

ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」 この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。 選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。 そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。 クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。 しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。 ※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。