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彼女の今世
episode21
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「貴方はこっちを」
「あっリーティアお嬢様動かないでください」
「ごっごめんなさい」
「やっぱりこっちの服の方がリティちゃんには合うわね。アナベル」
「分かりました。リーティアお嬢様こちらの服を」
どうもこんにちはこんばんはリーティアです。ただ今私はお母様と侍女達の着せ替え人形になっております。
事の発端は皇宮で開かれるお茶会。
前世と同じドレスがあったので、今世もそれでいいやと構えていたら何故かこの状態になっております。
お母様が「リティちゃんにはもっともっと似合うドレスがある! 私の自慢の娘だからもっと着飾るわよ。ね? アナベル」と意気揚揚に一人では抱えきれないほどのドレスを抱え、私の部屋に入ってきた時は唖然としました。
あっちなみにアナベルというのは私付きの侍女です。前世では存在しなかった侍女を紹介された時、最初キョトンとしてしまいましたが、言葉の意味を理解できると恥ずかしながら年相応の子供のように飛び跳ねました。
おっと思考を飛ばし過ぎていたようです。現実逃避などせずに現実に目を向けようと思います。
現実逃避から戻り、高く積まれているドレスに目を向ける。この量を着たのか……私、よく耐えている。とても偉い。
心の中で自分自身に拍手を送り、何度目かになる質問をお母様に尋ねる。
「……まだやるのですか? お母様」
「何を言っているの? まだまだ着てもらうドレス沢山あるのよ! 次はこっち」
「お母様……私疲れました」
「もうちょっと。もうちょっとだからね? リティちゃん頑張って」
ダメだ。目が爛々と輝いているお母様は止まらない。うんざりしながらも納得のいくまで付き合うことにした。
ようやく解放されたと思ったら日は傾き、夜の帳が降りようとしていた。ヘトヘトになった私は着替えもせずに寝台に突っ伏しそのまま昏睡するように眠りにつく。
夢と現実の狭間で、私は考える。
明日は皇宮でのお茶会。今世では初めてアルバート殿下と対面する。
(上手く…………やれるかしら?)
◇◇◇
前世では曇り空だったが、今世では快晴だ。
窓から差し込む光が眩しくて目を細めてしまうほどの良い天気。
今日も今日とてお母様は昨日選んだドレスを侍女に持ってこさせず、お母様自身で運んで来た。
「さあリティちゃん、これに着替えてね」
「分かりましたお母様」
お母様の後ろに控えていたアナベルに手伝ってもらいながらドレスに手を通し、髪を梳いてもらって綺麗に整えたら身支度は終わり。
今日の髪型はツインテールらしい。緩くウェーブのかかった髪は赤いリボンで結ばれ、ふわっとしている。
「リティちゃん可愛いわ! 天使!」
「お母様言い過ぎです」
満面の笑みで褒めるお母様、少し恥ずかしい。
それに薄々気が付いていたが、今世の両親は少し……私に甘い気がする。前世の時とは比べものにもならないほどで、たまに褒められすぎて萎縮してしまう。まあとっても嬉しいのだけど。
「さあ行きましょう。旦那様が待ってるわ」
そう言って差し出された手に自分の手を乗せると、付けている陽光が反射して光り輝くブレスレットが目に付く。
(……ノルン様私、頑張りますね。お茶会では目立たず、殿下には近づかず、ひっそりとします!)
心の中でノルン様に伝えると、もう片方の手でブレスレットを触った。そしてお茶会に向けてエントランスで合流したお父様と共に馬車に乗り込んだ。
「リティ」
「はいなんですか?」
ぼーっと窓から外の景色を眺めていたら、何か後ろめたそうなお父様に声をかけられた。
「そのだな……他の令嬢はするかもしれんが、リティはしなくていいからな?」
はて? 何のことだろう。他の令嬢がすること?
「何をするのです? お父様、はっきり仰って下さらないと私には分からないです」
「だからっそのっ」
本当に何を言いたいのか分からず、小首を傾げる。
「あーもうっ私が言うわ。リティちゃん、旦那様は他の令嬢みたいに殿下に媚を売りに行かなくていいんだよって言おうとしてるのよ」
──媚び? 誰に? えっ! 殿下に!? 誰が!? 私が???
「媚びですか?」
「そうよ。今日のお茶会は婚約者候補を絞るための物であって、殿下に兄弟はいらっしゃらないから……もし婚約者になれば未来の皇后よ。権力を欲している貴族からしたら喉から手が出るほど座りたい席よね」
全く頭になかったことを言われ、固まる。
「あ~リティが固まってるじゃないか。何でそんなにズバッと……」
「だって貴方がうだうだしてるから……それに私はリティちゃんがそれで悩んでるのかと思って」
硬直から戻った私は聞き捨てならない言葉を聞いた。私がどうやって媚を売ろうかで悩んでる? いや、まさか。そう言えば最近他の令嬢が、殿下が~とか言っていたような気がする……。
(私も同じだと思われたの?)
「違いますっ!」
ブンブンと首を横に振って全身全霊で否定する。
それに、好きにはならない。だってあの人は私のことが嫌い。前世と同じ道を通りたくもない。
そう続けようか思ったが、流石に不敬であり、周りは知らないことなので心に留める。
「あら、違うの? ならいいわね。私達はリティちゃんに幸せになってもらいたいから媚なんて売らなくてもいいってことを伝えておこうと思って。あっでも、殿下のこと好きになったら応援するわよ?」
お母様は私の全身全霊での否定にクスクスと笑い、お父様は何故か安堵した後、再びオドオドしていた。
「あっリーティアお嬢様動かないでください」
「ごっごめんなさい」
「やっぱりこっちの服の方がリティちゃんには合うわね。アナベル」
「分かりました。リーティアお嬢様こちらの服を」
どうもこんにちはこんばんはリーティアです。ただ今私はお母様と侍女達の着せ替え人形になっております。
事の発端は皇宮で開かれるお茶会。
前世と同じドレスがあったので、今世もそれでいいやと構えていたら何故かこの状態になっております。
お母様が「リティちゃんにはもっともっと似合うドレスがある! 私の自慢の娘だからもっと着飾るわよ。ね? アナベル」と意気揚揚に一人では抱えきれないほどのドレスを抱え、私の部屋に入ってきた時は唖然としました。
あっちなみにアナベルというのは私付きの侍女です。前世では存在しなかった侍女を紹介された時、最初キョトンとしてしまいましたが、言葉の意味を理解できると恥ずかしながら年相応の子供のように飛び跳ねました。
おっと思考を飛ばし過ぎていたようです。現実逃避などせずに現実に目を向けようと思います。
現実逃避から戻り、高く積まれているドレスに目を向ける。この量を着たのか……私、よく耐えている。とても偉い。
心の中で自分自身に拍手を送り、何度目かになる質問をお母様に尋ねる。
「……まだやるのですか? お母様」
「何を言っているの? まだまだ着てもらうドレス沢山あるのよ! 次はこっち」
「お母様……私疲れました」
「もうちょっと。もうちょっとだからね? リティちゃん頑張って」
ダメだ。目が爛々と輝いているお母様は止まらない。うんざりしながらも納得のいくまで付き合うことにした。
ようやく解放されたと思ったら日は傾き、夜の帳が降りようとしていた。ヘトヘトになった私は着替えもせずに寝台に突っ伏しそのまま昏睡するように眠りにつく。
夢と現実の狭間で、私は考える。
明日は皇宮でのお茶会。今世では初めてアルバート殿下と対面する。
(上手く…………やれるかしら?)
◇◇◇
前世では曇り空だったが、今世では快晴だ。
窓から差し込む光が眩しくて目を細めてしまうほどの良い天気。
今日も今日とてお母様は昨日選んだドレスを侍女に持ってこさせず、お母様自身で運んで来た。
「さあリティちゃん、これに着替えてね」
「分かりましたお母様」
お母様の後ろに控えていたアナベルに手伝ってもらいながらドレスに手を通し、髪を梳いてもらって綺麗に整えたら身支度は終わり。
今日の髪型はツインテールらしい。緩くウェーブのかかった髪は赤いリボンで結ばれ、ふわっとしている。
「リティちゃん可愛いわ! 天使!」
「お母様言い過ぎです」
満面の笑みで褒めるお母様、少し恥ずかしい。
それに薄々気が付いていたが、今世の両親は少し……私に甘い気がする。前世の時とは比べものにもならないほどで、たまに褒められすぎて萎縮してしまう。まあとっても嬉しいのだけど。
「さあ行きましょう。旦那様が待ってるわ」
そう言って差し出された手に自分の手を乗せると、付けている陽光が反射して光り輝くブレスレットが目に付く。
(……ノルン様私、頑張りますね。お茶会では目立たず、殿下には近づかず、ひっそりとします!)
心の中でノルン様に伝えると、もう片方の手でブレスレットを触った。そしてお茶会に向けてエントランスで合流したお父様と共に馬車に乗り込んだ。
「リティ」
「はいなんですか?」
ぼーっと窓から外の景色を眺めていたら、何か後ろめたそうなお父様に声をかけられた。
「そのだな……他の令嬢はするかもしれんが、リティはしなくていいからな?」
はて? 何のことだろう。他の令嬢がすること?
「何をするのです? お父様、はっきり仰って下さらないと私には分からないです」
「だからっそのっ」
本当に何を言いたいのか分からず、小首を傾げる。
「あーもうっ私が言うわ。リティちゃん、旦那様は他の令嬢みたいに殿下に媚を売りに行かなくていいんだよって言おうとしてるのよ」
──媚び? 誰に? えっ! 殿下に!? 誰が!? 私が???
「媚びですか?」
「そうよ。今日のお茶会は婚約者候補を絞るための物であって、殿下に兄弟はいらっしゃらないから……もし婚約者になれば未来の皇后よ。権力を欲している貴族からしたら喉から手が出るほど座りたい席よね」
全く頭になかったことを言われ、固まる。
「あ~リティが固まってるじゃないか。何でそんなにズバッと……」
「だって貴方がうだうだしてるから……それに私はリティちゃんがそれで悩んでるのかと思って」
硬直から戻った私は聞き捨てならない言葉を聞いた。私がどうやって媚を売ろうかで悩んでる? いや、まさか。そう言えば最近他の令嬢が、殿下が~とか言っていたような気がする……。
(私も同じだと思われたの?)
「違いますっ!」
ブンブンと首を横に振って全身全霊で否定する。
それに、好きにはならない。だってあの人は私のことが嫌い。前世と同じ道を通りたくもない。
そう続けようか思ったが、流石に不敬であり、周りは知らないことなので心に留める。
「あら、違うの? ならいいわね。私達はリティちゃんに幸せになってもらいたいから媚なんて売らなくてもいいってことを伝えておこうと思って。あっでも、殿下のこと好きになったら応援するわよ?」
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