悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

夕香里

文字の大きさ
11 / 88
第一章 私と殿下

夢からの目覚めと黒髪の青年(1)

しおりを挟む
 チュンチュンと鳴く小鳥のさえずりが、私の意識を浮上させた。

「……朝、ルーナを呼ばなくちゃ」

 まだ寝ていたい衝動に駆られるが、手だけを動かしてサイドテーブルにある鈴を鳴らす。

「さま……おじょう……お嬢様!!!!」

「っ!? 何? 暗殺者!?」

 いきなり大声で叫ばれ、鈴を持ちながら再び夢の中に入っていた私は、微睡みから一気に意識が覚醒すると同時にガバッと身体を起こす。

「……呼んだのに暗殺者呼ばわりは如何なものかと。それと二度寝はおやめください」

「……ルーナか。耳元で叫ばないでよ。てっきり誰か私を殺しに来たのかと思ったじゃない……」

「何を寝ぼけたことを言っているのですか? 普通、殺す場合、耳元で叫ぶはずがございません。寝ている時にグサッと刺す方がいいに決まってますよ」
 
 うぐっそれはそうだけど……的を射た指摘に何も言い返せなくなってしまった。だって、ビックリしてしまったんだもの。

 ベッドの上でうだうだしているとしびれを切らしたルーナが、寝癖がついた私の髪の毛を梳かし始めた。

 私の髪の毛はお母様譲りの黄金色だ。毎日ルーナが梳かしてお手入れをしてくれているおかげでふんわりとして軽くウェーブがかかった髪の毛になっている。
 美しいと言われる髪を保っているのは、毎日ルーナが一生懸命手入れしてくれているおかげだ。
 彼女曰く「お嬢様の髪の毛はとってもとっても美しいのです。これを手入れしないのは宝の持ち腐れです!」だそうだ。

 正直に言うと私は別にそこまで綺麗にしなくてもいいかなって感じであまり乗り気じゃないのが現状。言ったら説教一時間コースなので言わないけど。

「お嬢様、今日は何をなさいますか?」

「んーそうね。図書館に行こうかしら」

「……図書館でございますか? 何か調べ物があるようでしたら私が調べておきますが」

「大丈夫よ。調べ物では無いの……少し新しい本読みたいなって」

「分かりました。馬車をご用意しておきます」

「お願いね。直ぐに出発したいから。あっ! 朝食は馬車の中で食べたいの。だから、片手で食べられるサンドイッチにしてくれると嬉しいわ」

「分かりました。シェフに伝えておきます」

 部屋から退出するルーナを見ながら少し罪悪感に駆られる。

 私は昨日からどうすればこの恋心に蓋をして婚約解消の話を殿下に冷静にお伝えできるのか考えていた。

 多分、このまま殿下の傍にいたらきっと不可能だ。

 一旦殿下から長期間離れないと一週間に一度は妃教育で王宮で彼と会うことになるので、蓋なんて出来やしない。
 案として領地に引っ込むことも考えたが、それでも精々一ヶ月程度しか離れられないだろう。しかも、王都から領地までは一日で着いてしまう。来ようと思えばすぐに来れてしまう距離だ。

 なら、隣国に「留学」という名目でこの国から離れてしまえばいいのでは? と思ったわけだ。これが頭に思い浮かんだ時、神は私に味方したと思った。
 殿下はこの国の王子であり、外交以外で国から出ることなど滅多にできない。
 そうなると私は合法的に彼から離れられる。いや、彼から離れることに合法も違法もないのだけれど。

 それに、今のところ私は次期。見聞を深めるという名目で留学してもおかしなことは無い。周りの貴族も邪魔者の私がいなくなることによって、自分の娘を王子に売り込めるのだから文句は出ないだろう。

──あわよくば私を貶める計画を立てるかもしれないが。

 まあそんなことはどうでもいいのだ。
 貶めたいなら貶めればいい。どちらにせよ、最後には牢獄行きの人生だ。死ぬのが早くなるか婚約破棄という傷ものになるかの違いだけ。

 今の目標は前者にならないこと。

 私を貶めて、修道院に送るなり傷ものになるなりは死ななければ別に喜んで受けよう。家族に影響を与えないのであれば……の話だけど。

 でも私は隣国にどのような学校があるのかを知らない。風の噂によると隣国には魔法を学べる学校などがあるらしい。
 元々、破棄後のために魔法はもう少し使えるようになりたいと思っていたのだからちょうどいい。一石二鳥というやつだ。

 かくして私は隣国に留学という計画を立てた。そのためにはまず情報収集をしないといけない。残念ながら我が家の図書室にはそれ関係の蔵書が少ないので国随一の図書館に行こうと思った訳だ。

「ふふふ。留学したら友達ができるかも。新しい友達、響きがいいわね!」

 完全に留学に行けると思って有頂天になっている私は、そのまま馬車に乗り込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【改稿版】夫が男色になってしまったので、愛人を探しに行ったら溺愛が待っていました

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。 同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。 おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。 幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。 しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。 実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。 それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?

私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約してました~

marumi
恋愛
大国、セレスティア帝国に生まれた皇女エリシアは、争いも悲しみも知らぬまま、穏やかな日々を送っていた。 しかしある日、帝都を揺るがす暗殺事件が起こる。 紅蓮に染まる夜、失われた家族。 “死んだ皇女”として歴史から名を消した少女は、 身分を隠し、名前を変え、生き延びることを選んだ。 彼女を支えるのは、代々皇族を護る宿命を背負う アルヴェイン公爵家の若き公子、ノアリウス・アルヴェイン。 そして、神を祀る隣国《エルダール》で出会った、 冷たい金の瞳をした神子。 ふたつの光のあいだで揺れながら、 エリシアは“誰かのための存在”ではなく、 “自分として生きる”ことの意味を知っていく。 これは、名前を捨てた少女が、 もう一度「名前」を取り戻すまでの物語。 ※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 完結しました。 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

殿下が婚約破棄してくれたおかげで泥船から脱出できました。さて、私がいなくなったあと、そちらは大丈夫なのでしょうか?

水上
恋愛
「エリーゼ・フォン・アークライト! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄する!」  そう言ってどんどん話を進めてく殿下に、私はとあるものを見せました。  「これは?」 「精算書でございます」 「は?」  私はファイルを丁寧に開き、一番上の書類を殿下の目の前に掲げました。 「こちらが、過去一〇年間にわたり、私が次期王妃教育のために費やした教育費、教師への謝礼金、および公務のために新調した衣装代、装飾品代の総額です。すべて領収書を添付しております」  会場がざわめき始めました。  私はさらにページをめくります。 「次に、こちらが殿下の公務補佐として私が代行した業務の労働対価。王宮の書記官の平均時給をベースに、深夜割増と休日出勤手当を加算しております」 「な、何を言って……」 「そして最後に、こちらが一方的な婚約破棄に対する精神的苦痛への慰謝料。これは判例に基づき、王族間の婚約破棄における最高額を設定させていただきました」  私はニッコリと微笑みました。 「締めて、金貨三億五千万枚。なお、支払いが遅れる場合は、年利一五パーセントの遅延損害金が発生いたします。複利計算で算出しておりますので、お早めのお支払いをお勧めいたしますわ」  大広間が完全なる静寂に包まれました。  三億五千万枚。  それは小国の国家予算にも匹敵する金額です。 「き、貴様……。金の話など、卑しいとは思わんのか!?」  震える声で殿下が叫びました。  私は首を傾げます。 「卑しい? とんでもない。これは、契約の不履行に対する正当な対価請求ですわ。殿下、ご存知ですか? 愛はプライスレスかもしれませんが、結婚は契約、生活はコストなのです」  私は殿下の胸ポケットに、その請求書を優しく差し込みました。  そうして泥舟から脱出できる喜びを感じていましたが、私がいなくなったあと、そちらは大丈夫なのでしょうか?

冤罪で処刑された悪女ですが、死に戻ったらループ前の記憶を持つ王太子殿下が必死に機嫌を取ってきます。もう遅いですが?

六角
恋愛
公爵令嬢ヴィオレッタは、聖女を害したという無実の罪を着せられ、婚約者である王太子アレクサンダーによって断罪された。 「お前のような性悪女、愛したことなど一度もない!」 彼が吐き捨てた言葉と共に、ギロチンが落下し――ヴィオレッタの人生は終わったはずだった。 しかし、目を覚ますとそこは断罪される一年前。 処刑の記憶と痛みを持ったまま、時間が巻き戻っていたのだ。 (またあの苦しみを味わうの? 冗談じゃないわ。今度はさっさと婚約破棄して、王都から逃げ出そう) そう決意して登城したヴィオレッタだったが、事態は思わぬ方向へ。 なんと、再会したアレクサンダーがいきなり涙を流して抱きついてきたのだ。 「すまなかった! 俺が間違っていた、やり直させてくれ!」 どうやら彼も「ヴィオレッタを処刑した後、冤罪だったと知って絶望し、時間を巻き戻した記憶」を持っているらしい。 心を入れ替え、情熱的に愛を囁く王太子。しかし、ヴィオレッタの心は氷点下だった。 (何を必死になっているのかしら? 私の首を落としたその手で、よく触れられるわね) そんなある日、ヴィオレッタは王宮の隅で、周囲から「死神」と忌み嫌われる葬儀卿・シルヴィオ公爵と出会う。 王太子の眩しすぎる愛に疲弊していたヴィオレッタに、シルヴィオは静かに告げた。 「美しい。君の瞳は、まるで極上の遺体のようだ」 これは、かつての愛を取り戻そうと暴走する「太陽」のような王太子と、 傷ついた心を「静寂」で包み込む「夜」のような葬儀卿との間で揺れる……ことは全くなく、 全力で死神公爵との「平穏な余生(スローデス)」を目指す元悪女の、温度差MAXのラブストーリー。

魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。

iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。 クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。 皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。 こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。 私のこと気に入らないとか……ありそう? ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど―― 絆されていたのに。 ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。 ――魅了魔法ですか…。 国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね? いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。 ――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。 第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか? サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。 ✂---------------------------- 不定期更新です。 他サイトさまでも投稿しています。 10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。

【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

処理中です...