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第一章 私と殿下
夢からの目覚めと黒髪の青年(2)
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「やっぱり国立図書館は大きいわね。久しぶりに来たら大きくて驚くわ」
視界いっぱいに広がる図書館の建物を見上げながら呟く。
「左様ですね、お嬢様そこに段差がありますのでお気を付けて」
「ルーナは心配症ね、大丈夫よ、キャッ」
「あっお嬢様!」
余所見しながら歩いていたのがダメだったらしい。忠告されていたのに段差につまづいてしまった。このままでは顔面を打ちつけ、転んでしまう。
ギュッと目をつぶって次にくる衝撃に備えたが何も起きない。
「ん……? 痛くない?」
「大丈夫かい?」
恐る恐る目を開けると正面は布だ。慌てて上を見るとフードを被った黒髪の青年が私を抱きとめていた。
「もっ申し訳ございません。庇ってくださりありがとうございます」
「いえ、怪我はないですか?」
「お陰様でありません。是非、お礼を後ほどさせてもらいたいのですがお名前をお伺いしても?」
この方が私を咄嗟に抱きとめて下さったおかげで私は傷一つ作らずに済んだのだ。お礼をするのは当然のことだろう。そう思って名前を尋ねる。
「……いえ、お礼は大丈夫です。それでは」
「えっあのっ!」
そう言って、すぐに青年は人混みに紛れてしまった。
「ルーナ、貴方あの方を見た事ある? 恐らくこの国の貴族では無いような気がするの……」
夜会や舞踏会でも見かけたことの無い顔だった。でも、身なりや仕草から貴族であるのは確実だ。
「私も存じ上げません。きっと隣国の貴族の方なのでしょう。仕草からマナー等はとても洗練されていると見受けられるので」
「……そうかもしれないわね」
少し違和感が残るが、私の記憶には無い方なのでこれ以上は分からない。頭の片隅に置いておくことにして当初の目的を果たすことにしよう。
「さてと、気を取り直してルーナは他のところを見てていいわ。用事が終わったら呼ぶから」
「分かりました。それではお使いを終わらせてきます。お嬢様、何か欲しいものがありましたらそれも買ってきますが」
「無いわ。大丈夫よ」
「それでは失礼します」
ペコリとルーナはお辞儀をして人で賑わう街の中へと消えていった。
(よしよし、一人になれたわ)
私は図書館に入る。ここには何から何まで揃っている。貴重な本も沢山あってそれらは持ち出し不可だが、コピーを取ることは許されているので皆紙に写し取っている。
「んーと。隣国の情報は………」
本棚と本棚の間を行き来しながらお目当ての場所を探す。
「あった! 隣国にある、学校の資料」
パラパラと捲りながら手短な椅子に座る。そして、目当てのページを見つけた。
「アルメリア魔法学校……一人ひとりが完璧に魔法を行使できるようになる指導をする……卒業後は魔術師になる者が大半………ここだわ!」
いきなり大声を上げてしまったため周りの視線が一斉に集まる。
身を縮こませ、アルメリア魔法学校の文字を辿る。どのような学校なのか読み込んだ上で、そのページの上に無地の羊皮紙を置いて手をあてる。
すると書かれている文章が羊皮紙に写される。これは魔力がある人なら誰でも使える生活魔法だ。とても便利で、紙さえあれば写したい書類の上にそれを置いてコピーを取ることができる。
「──私、この学校に留学生として編入して魔法の腕を上げる」
小さい声で宣言する。
何かここまで来るとなぜ留学するのか趣旨が変わっている気がするが、考えないことにした。
「帰ったら早速お父様に相談しなくては」
そのあと私はルンルンで図書館を出てルーナと一緒に公爵家に帰宅した。
視界いっぱいに広がる図書館の建物を見上げながら呟く。
「左様ですね、お嬢様そこに段差がありますのでお気を付けて」
「ルーナは心配症ね、大丈夫よ、キャッ」
「あっお嬢様!」
余所見しながら歩いていたのがダメだったらしい。忠告されていたのに段差につまづいてしまった。このままでは顔面を打ちつけ、転んでしまう。
ギュッと目をつぶって次にくる衝撃に備えたが何も起きない。
「ん……? 痛くない?」
「大丈夫かい?」
恐る恐る目を開けると正面は布だ。慌てて上を見るとフードを被った黒髪の青年が私を抱きとめていた。
「もっ申し訳ございません。庇ってくださりありがとうございます」
「いえ、怪我はないですか?」
「お陰様でありません。是非、お礼を後ほどさせてもらいたいのですがお名前をお伺いしても?」
この方が私を咄嗟に抱きとめて下さったおかげで私は傷一つ作らずに済んだのだ。お礼をするのは当然のことだろう。そう思って名前を尋ねる。
「……いえ、お礼は大丈夫です。それでは」
「えっあのっ!」
そう言って、すぐに青年は人混みに紛れてしまった。
「ルーナ、貴方あの方を見た事ある? 恐らくこの国の貴族では無いような気がするの……」
夜会や舞踏会でも見かけたことの無い顔だった。でも、身なりや仕草から貴族であるのは確実だ。
「私も存じ上げません。きっと隣国の貴族の方なのでしょう。仕草からマナー等はとても洗練されていると見受けられるので」
「……そうかもしれないわね」
少し違和感が残るが、私の記憶には無い方なのでこれ以上は分からない。頭の片隅に置いておくことにして当初の目的を果たすことにしよう。
「さてと、気を取り直してルーナは他のところを見てていいわ。用事が終わったら呼ぶから」
「分かりました。それではお使いを終わらせてきます。お嬢様、何か欲しいものがありましたらそれも買ってきますが」
「無いわ。大丈夫よ」
「それでは失礼します」
ペコリとルーナはお辞儀をして人で賑わう街の中へと消えていった。
(よしよし、一人になれたわ)
私は図書館に入る。ここには何から何まで揃っている。貴重な本も沢山あってそれらは持ち出し不可だが、コピーを取ることは許されているので皆紙に写し取っている。
「んーと。隣国の情報は………」
本棚と本棚の間を行き来しながらお目当ての場所を探す。
「あった! 隣国にある、学校の資料」
パラパラと捲りながら手短な椅子に座る。そして、目当てのページを見つけた。
「アルメリア魔法学校……一人ひとりが完璧に魔法を行使できるようになる指導をする……卒業後は魔術師になる者が大半………ここだわ!」
いきなり大声を上げてしまったため周りの視線が一斉に集まる。
身を縮こませ、アルメリア魔法学校の文字を辿る。どのような学校なのか読み込んだ上で、そのページの上に無地の羊皮紙を置いて手をあてる。
すると書かれている文章が羊皮紙に写される。これは魔力がある人なら誰でも使える生活魔法だ。とても便利で、紙さえあれば写したい書類の上にそれを置いてコピーを取ることができる。
「──私、この学校に留学生として編入して魔法の腕を上げる」
小さい声で宣言する。
何かここまで来るとなぜ留学するのか趣旨が変わっている気がするが、考えないことにした。
「帰ったら早速お父様に相談しなくては」
そのあと私はルンルンで図書館を出てルーナと一緒に公爵家に帰宅した。
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