迷子の僕の異世界生活

クローナ

文字の大きさ
124 / 333
休暇と告白

124

しおりを挟む



セオの休日   お留守番 ①



「何が違うんでしょうか。」

「何が違うんだろうね。でもなにか違うんだよね。」

今日はトウヤさんがお休みを取って2日目だ。

俺は今、残された昼食のお皿前にしてをノートンさんと2人台所で思案中だった。
トウヤさんの見様見真似でチビ達のおかずを小さく切ったし量も調整した。でも少しずつ残ってしまった。
ディノの皿に至ってはグチャグチャになっただけのような気がしてきた。

昨日の朝、起こしに行った時は俺の姿に大喜びしてくれたけど何時まで経っても姿を現さないトウヤさんをごまかせたのは朝食までだった。


「今日から3日間、トウヤくんにはお休みを取ってもらうことになったよ。君たちに内緒にしてたのは申し訳ないが顔を見たらきっとやめてしまったろうからね。その代わりセオが来てくれた。トウヤくんのいない間何かと不便だろうがみんなも手伝ってくれるかい?」

ノートンさんの話に子供達は「は~い」と返事をしたものの、3日は長いと思うのか声にいつもの元気が無かった。

それは子供達だけでは無かったようで朝食の回収兼昼食を運んできたカイも顔から残念感が否めなかった。

「そうですよね、本来これが当たり前なんですよね。僕らもすっかりトウヤさんに甘えきってましたね。」

子供達と遊びながら2回の洗濯は大変だった。何しろ小さいくせに着てる枚数が多い。肌着の上下に靴下、シャツにズボンにセーター。寝間着にタオルにシーツまで干していたら結構な時間になってしまい、教会から運ばれたトレイとかまで洗っていられなかった。だけどそもそもそれはこっちでやる事ではない。

そして初日はなんとかお昼寝も夕飯もシャワーも寝かしつけも俺という物珍しさからなんとか終わった。



2日目の朝はまず起こしに行ってカーテンを空け騎士団でやってる流れでついでに窓も開け放つ。

でもその時点でサーシャに「寒い」と怒られた。

「朝だぞ~起きろ~。」

その文句を無視して掛布を剥ぎ取っていく。ロイとライはお互いの体温で暖を求め、ディノは掛布にしがみついていた。

「ほら、朝だって。着替えするぞ~。」

パンパンと手を叩いて覚醒を促していると

「こんな寒くて寝間着が脱げるわけ無いだろ?」

とレインとマリーに怒られてしまった。慌てて窓を閉めて部屋の温度が上がるのを待つことになった。


「食事を食べる事まで違ってくるなんで少しトウヤさんに甘え過ぎじゃないんですか?」

やってみて分かったけれど着替えや食事の際のひと手間、昼寝や寝る前の読み聞かせ。半分くらいしかやれていないだろうけれどそれでも随分子供達に手が掛かる。
俺が『桜の庭』にいたのは1年程だったけれどその間何度も変わる働き手はあてにならずそれ故に自分でやれる事がもっとあった。
それに加えて洗濯に生活範囲の掃除。やる事がとにかく多いんだ。

「だけどトウヤくんが『僕の仕事です。』て言うんだよね。」

「それにしたって……」

ここで育つ俺達の様な者は自分で少しはやらなければ……と思ってしまう。

「いや、『甘やかすのが僕の仕事』って。自分でやりたくなるまでは親がやってあげるものでしょうって。思わず自分の古い記憶を探ってしまったらそのとおりだったよ。」

その言葉に自分の記憶を探ってみれば確かに自分で出来てしまうことも時には甘えて母の手を借りた懐かしい景色がよぎった。

「うちの子供達のいい子過ぎる所に甘えていたのは私の方だ。トウヤくんのおかげで最近は実に『子供らしい』んだよ。」


そして昼寝前。

「できた~みてみてとお……や。」

嬉しそうな顔を上げたディノがきょろきょろしてから俺を見てすごく残念そうな顔をした。

同じ顔をすでに全員にされている。そう、レインにまでされてしまった。

「なあトウヤ、袖のボタンが……と、いいか。」

俺と目が合うと、どこかに引っ掛けたであろう取れかけたボタンをハサミで切ってしまうとそれを筆入れの中に放り込んでいた。

「俺もボタンぐらいつけれるけど。」

「ああ、いいよ別に。それくらい俺もできるから。けどトウヤに直してもらったのってなんだかつけやすいんだよな。」

「あ、それわかる。できれば私の服のボタン全部つけ直して欲しいもん。」

「だよな、わざとやると怒るけど。」

相変わらずトウヤさんへの態度が気安い2人だ。この辺りが今までになかった『子供らしさ』を感じる所なのかも知れない。

「トウヤさんが怒るのはお前たちがからかうからだろう。」

「そんな事ないわよ、それに怒ると案外怖いんだから。この前なんかディノがわんわん泣いて謝ってたからね。」

意外な一面に驚いた。俺の知る限り彼の人は大抵のいたずらは笑ってやり過ごしてしまう。そんな人が一体何をそんな風に怒ったのだろうか気になってしまった。


夕食の後のシャワーはマリーとサーシャ、俺とロイ、ライ、ディノとさらにレインが一緒に入る事になった。普段はトウヤさんがチビ達をまとめて面倒見ているらしいが流石に女の子であるサーシャを俺が洗うのは問題がある様に思えた。

このシャワーも初日はちょっと困った事があった。

「レインはひとりでもいいだろう?」

「いや、俺もチビ達洗うの手伝うよ。な。」

「「「なぁ~」」」

確かに手は多いほうがいい。気持ちをありがたく受け取って男ばかりだし遠慮なしに服を脱いだ。

「せお、とおやとぜんぜんちがうね~」

「ちがうねぇ」

俺がディノの頭を洗っているとロイとライの小さな手が肩や胸や太腿をペタペタと触ってくる。
ディノには腹筋を撫で回された。

「当たり前だろ、セオさんは遠征に選ばれるくらい強いんだぞ。」

レインの褒め言葉は未熟な判断で死にかけた俺には耳が痛い。

「俺もなかなかだろ?なんせトウヤより重いからな。」

レインが腕に力を入れてチビ達に見せてやるとそれも小さい手がペタペタと触っていた。
確かに胸板もそこそこ厚くなってきている。

「そうだな、結構鍛えてるのか?」

「まあね」

嬉しそうににへっと笑うと自分の頭の泡を流してロイとライの頭を洗いだした。

「ねえせお。とおやはさわるとくすぐったいってわらうんだよ」

「あのねとおやはむねもおなかもぺったんこだよ」

「それにねぇとうやはまっしろでねぇあったまるとぴんくになるんだよぉ」

「あとねぇとうやのおしりはでぃのみたいに……」

「わぁ、ちょ、ちょっと待った!」

子供達が次々教えてくれるトウヤさんの聞いてはいけない情報に慌てて耳を塞いだ。おかげで泡が耳の中に入ってしまって洗い流すのに苦労する羽目になった。

それから夜は絵本を読むらしいのだけど1冊目の途中からトウヤさんの事を競うように俺に話してくれてその中で安心したのかだんだん寝落ちしていった。

だけど2日目の夜は名前を出すとかえって思い出して淋しく思うのかそれぞれ絵本を読むのを聴きながら掛布を深く被って眠った。



しおりを挟む
感想 235

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

花屋の息子

きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。 森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___? 瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け の、お話です。 不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。 攻めが出てくるまでちょっとかかります。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...