11 / 38
long run 1
しおりを挟む「ワ、ワシの負けじゃ!
が、お前には永遠の苦しみを与えてやる!」
バサッという音と共に魔神の体を透き通った紺色の大剣で切り裂いた。
「永遠の苦しみを味わえ!! 永遠という名の地獄の中で!
ハハハハハハハハ!」
魔神は死に際に右手の平を向けた。
(何かが来る!!)
と一瞬、身構えたが魔神の手から何かが発せられる様子は無かった。
安心した瞬間、俺の体の中に何かが入った気がした。
が、痛みはおろか体のどこにも何かをされた形跡はなかった。
(何だったんだ!?今のは・・・・・)
が、呪いを受けたことだけは分かった。
ダンジョンの奥で魔神の体がゆっくりと崩れたかと思うと小さな欠片となり弾けるように散っていった。
ハッとして目を醒ます。
「チッ! また、あの夢か!
一体何度目だよ。クソが!
野宿をするとこれだからな! デリケートな俺はふかふかのベッドで寝ないと安眠できないんだよな!」
左腕枕にしながら毛布に包まりながら毒づく。
360度砂が広がり、人の気配などあるはずも無かった。
広大な砂漠に一人やって来た。
体を上に向け空を見上げると満点の星が輝いていた。
側には焚き火が煌々と焚かれている。
毛布の中で左足をくの字に曲げ右足を上に掛け星を見ながらつぶやいた。
「永遠の苦しみか・・・・・・確かにな」
左腕のローブの袖から透き通った黒色のビー玉より二周りほど大きい石を取り出し夜空に透かすようにしながら呟いた。
「30個目か。まだまだ、先は長いな・・・・・・
また、この砂丘か・・・・今度は取り返すのか。因縁だな」
遙か昔の事を思い出していた。
「あの頃の俺はザコザコだったな~
魔神を倒したと言っても俺の力じゃなかったしな・・・・・止めを刺しただけだ」
と遙か昔の事を思い出した。
「・・・・・結局、俺一人の力では極悪勇者・ラインハルトを倒すこと出来なかったな」
そして、比較的近年の事を思い出した。
頭を掻きながら回想する。
この世界は他の世界よりも時間の流れが遅い。
他の世界では1000年ほど経過しているが、この世界は30数年しか経過していなかった。
その時間の流れが遅い世界で今から30数年ほど前に、魔王が現れ人々を恐怖に落としいれた。
そのとき、勇者ラインハルトが現れ魔王を討伐し、この世界に平和をもたらせた。
が、平和は長く続かなかった。
当時の王は魔王を倒した勇者・ラインハルトを恐れ、亡き者にしようと画策した。
が、ことごとくラインハルトは返り討ちにし、ついには嫌がるこの国の第一王女を誘拐し、宝物庫から国璽を奪い、逃亡を企てた。
悪いのは狭量な王であるのは間違いないのだがラインハルトも逃亡の道中で王女や多くの女性にあれやこれや、羨ましいことを・・・・・
いや、違った。如何わしい事をして楽しんでいた。
あのブサイクな顔、オークのような体躯で可愛がられた王女の事を思うと不憫で仕方がない。
町に立てこもり町の住人を皆殺しにしたり、追っ手の王国騎士団を返り討ちにするために人質を獲り、騎士、人質とも・・・・・・
他にも多くの者を手にかけていた。
勇者・ラインハルトの名は地に落ち、罪人となってしまった。
もはや勇者の面影はなく、行く先々で罪を犯す犯罪者に成り下がった。
少々、可哀想な気もするが、今や猛獣が野に放たれた状態だ。
王にとっては討伐の良い名目が出来たわけだ。
王も酷いものだ。
土地なり爵位なり与えて身分を保証さえすれば、このような大事になる事は無かっただろう。
王、いや権力者ははいつも勝手なのだ。
それはいつの時代でも、どの世界でも変わらない。
自分より優秀な者は疎まれ排除されるのが世の常。
まぁ、どちらに正義があるかなんて俺には関係無い。
俺に有るのは雇い主と雇われる側の雇用関係以外に優先するものは無い。
お客様には逆らえないのでね。
そのラインハルトといったい何回、死闘を繰り返したことだろうか・・・・・・
と、格好をつけてはみたものの、正確に言うと死闘では無く一方的な虐殺が正しい。
あるときは得意の雷魔法で黒こげ、あるときは聖剣で一刀両断。
その数は300回は越えていただろ。
罪人になったとはいえ、魔王を倒した勇者。
俺のように止めを刺しただけのインチキ勇者とはスペックが違う。
が、最初は殺したはずの男が翌日には目の前に立っていて驚いていたな~
「貴様は昨日殺したはず!」
と決まった台詞を返してくれた。
砂人形を幾つも作って集団で襲い掛かったときには、
「これがお前の不死身の仕掛けだったのか!」
と大声で怒鳴っていたが、そうじゃないんだな。
お前は確かに俺を何度も殺していたんだよ。
ただ、俺は死ねないだけなんだよ。
俺も伊達に何度も殺されていたわけではない。
弱いなりにラインハルト攻略法を探っていた。
ラインハルトはオークのような巨体を生かした剣技と雷撃魔法を得意としていた。
分類上は魔法剣士系の勇者であり、この世界の人間の魔法は自然と密接に関係している。
雷撃魔法は雲か重要なポイントになっている。
近くに雷雲があるときの威力は雲が無いときに比べ明らかに威力は増す。
強力な雷撃魔法は雲が無くては十分な威力が発揮されないのだ。
砂漠などの空気が乾いている地域では最上位の雷撃魔法の威力が極度に弱まる。
オーク並みの体を使った馬鹿力の剣技も踏ん張りの利かない砂の上なら威力も半減するだろう。
そして、死闘の末、たどり着いたのがこの砂丘だった。
まぁ~俺がラインハルトをこの砂丘に誘導したのだ。
オークのようなガタイのクセに母親の形見のペンダントを大事にしていた。
無数の泥人形君たちを使い撹乱し、一瞬の隙を見て首にぶら下げていたペンダントを奪い取り、追跡させ砂丘まで導いたのだった。
あ~弱いって罪だ。
二人の悪魔、デブーとガーリが居れば楽勝だったのにな・・・・
あのころは二人と一緒に旅をしていなかったからな・・・・
姑息な手段を用いなければ強者に勝てない。
きっと、世間様は卑怯者と罵るだろう。
が、俺には契約がすべてだ。
そして、砂漠といえば、奴がいる!
どの世界でも嫌われ者!
そう! 巨大ワームだ!
全長500mを超える化け物!
この世界の魔王でさえ手を出すことが叶わなかった超巨大ワーム。
魔王が誕生する以前から、この当たり一体の砂漠を住処にしており、この砂漠に栄えた都市を一夜にして瓦礫に変えたと言われていた。
そして、この砂丘がヤツのねぐらと言われている。
そう!自力で倒せないのなら強者の手を借りて倒すまで!
後は時間との戦いだった。
0
あなたにおすすめの小説
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる